スパイク・リー監督、白人警官の黒人殺害事件を受けてショートフィルムを発表「歴史は繰り返されている、今の出来事は新しいものではない」

『マルコムX』(1992)『ブラック・クランズマン』(2018)の鬼才スパイク・リー監督が、白人警官によるジョージ・フロイド氏の死亡事件、米国をはじめ世界で広がる「Black Lives Matter」運動を受けて、ショートフィルム『3 Brothers – Radio Raheem, Eric Garner And George Floyd(原題)』を米CNNの特別番組「CNN SPECIAL REPORT: I CAN’T BREATHE: Black Men Living and Dying in America」にて公開した。
この作品には、実際の事件の様子を収めた映像が使用されています。
3 Brothers-Radio Raheem, Eric Garner And George Floyd. pic.twitter.com/EB0cXQELzE
— Spike Lee (@SpikeLeeJoint) June 1, 2020
2020年5月25日、米ミネソタ州ミネアポリスにて、黒人男性のジョージ・フロイド氏が、白人警官により首を膝で押さえつけられたことで死亡した。これを発端に起こったのが、2020年5月からの「Black Lives Matter」運動だ。もともと「Black Lives Matter」とは、2013年にフロリダ州で黒人の高校生が白人警官に射殺された事件を受けて始まったもの。しかし2014年7月にも、ニューヨークにて、白人警官の過剰な暴力によって黒人男性のエリック・ガーナー氏が窒息死する事件が起きている。
ガーナー氏もフロイド氏も、警官に対して「息ができない(I can’t breathe)」と訴えかけ、しかし聞き入れられずに暴力行為は継続され、そして死に至った。スパイク・リーによる今回のショートフィルムは、ふたつの事件現場を記録した映像に加え、自身の監督作『ドゥ・ザ・ライト・シング』(1989)より、ラジオ・ラヒーム(ビル・ナン)が白人警官によって窒息死させられるシーンを交えたもの。この場面も、1983年、アーティストのマイケル・スチュアートが逮捕時に警官の激しい暴行を受け、のちに死亡した事件を踏まえて作られたとされている。
「歴史は繰り返すことを勝手に止めてくれるのか(Will History Stop Repeating Itself?)」。リー監督の問いかけはストレートだ。これまでも自身の作品で黒人をめぐる歴史や差別の問題を直接的に扱い、時には示唆してきたリー監督だが、この映像では起こったばかりの出来事にそのまま反応している。答えの出ない問いかけを、まずはそのまま世に投げ出したということだ。
番組内のインタビューで、リー監督は「歴史は何度も、何度も、何度も繰り返されています。いま起きていることは決して新しいことではありません」と述べている。
「今までこういうことは何度も見てきたし、そのたびに人々は“どうしてこうなるんだろう?”と同じ質問を繰り返している。その上にこの国は成り立っているんです。1619年に、私たちの祖先が母なるアフリカからヴァージニアへ連れてこられて以来、同じことが続いている。ただし、今ではカメラがありますけどね。黒人の身体への攻撃は、始まりから現在までずっとあったこと。アメリカ合衆国の基盤は、土地を奪い、虐殺し、奴隷にすることで生まれたものです。」
リー監督は、抗議活動のエスカレートについて「こういうことは看過できないけれど、なぜ彼らがこういう行動に出るのかは理解できる」とも語った。そして、すでに現在の運動は多様化しており、黒人のみならず、国に不満を抱えた白人も参加していることを強調したのである。