【違いの判る男ケヴィン・ファイギ】映画『ブラック・パンサー』に期待できる確かな理由
2016年1月に、MCUフェイズ3ラインナップの中の、2018年2月公開予定『ブラックパンサー』の監督がライアン・クーグラーに正式決定したと発表されました。『誰?』と思った方も多いとは思いますが筆者は、この発表の直前にクーグラー監督の最新作『クリード チャンプを継ぐ男』を鑑賞していて、この新鋭監督の才能に驚いていたところだったので、改めて、MCUの総合プロデューサー、ケヴィン・ファイギのハリウッド全体を俯瞰しているかのような絶妙な人材フックアップの手腕に舌を巻いた次第です。
何しろこのライアン・クーグラーさん、『クリード』の前に長編映画のメガホンをとったのはわずかに『フルートベール駅で』1本のみ。一般的なセオリーから言って、MCUのような超ブロックバスタームービーの監督を任せるのに、フィルモグラフィーが2本だけ、というのは充分な実績があるとは言えないでしょう。そこはマーベルスタジオの社長でありMCUのトップ、ケヴィン・ファイギが人材を選ぶ際に、『量よりも質』を重視している証左といえます。

そもそも、このケヴィン・ファイギさん、若干42歳と若く、元はと言えばマーベルコミックスへの深い知識を買われて2000年『X-MEN』にて製作助手として抜擢され、以降、全てのマーベル原作の映画製作に参加。サム・ライミ版『スパイダーマン』の大ヒットの追い風もあり9年前の33歳の時にマーベル・スタジオの社長に就任、まさに今日のアメコミ映画の隆盛、ひいてはハリウッド全体の潮流を作った若き革命児ってわけです。
製作総指揮を務めている以上、いろんな仕事があるなかで、特にわかりやすいケヴィン・ファイギさんの『キレ者』加減がわかる仕事が、この監督人事です。

http://comicvine.gamespot.com/forums/battles-7/kevin-feige-vs-zack-snyder-1782852/
そもそも、現在フェイズ3にまでなったMCUの、というよりアメコミ映画全体の中興の祖、大ヒット作『アイアンマン』の監督にジョン・ファブローを引っ張ってきた時点で、彼には我々には見えていないものが見えているとしか言い様がありません。今でこそ『アイアンマン』や『シェフ 三ツ星フードトラックはじめました』、日本公開はまだですが『ジャングル・ブック』などのヒット作が引きも切らないジョン・ファブローですが、『アイアンマン』の前作は『ザスーラ』。筆者でなくても不安になると思いますが、いったいどうやってスポンサーを説得したのでしょう。
とにかくそんな世間の心配など、どこ吹く風の人材フックアップの手腕には特筆すべきものがあると思います。
他にも、皆さんも記憶に新しい『シビルウォー:キャプテンアメリカ』『キャプテンアメリカ:ウィンターソルジャー』のルッソ兄弟も、テレビドラマのキャリアは長いですが、『ウィンターソルジャー』の前の長編フィルモグラフィーはやはり2本のみと、慣例や実績という枠に囚われない人材抜擢が、これでもか、というくらいにバッチリはまるのはもはや痛快ですらあります。(『アントマン』の監督人事が当初『ショーン・オブ・ザ・デッド』『ホットファズ』のエドガー・ライトだった、ってことも忘れてはいけませんね。)
『ブラックパンサー』の監督に正式決定したライアン・クーグラー監督。『フルートベール駅』では実際に起こった黒人差別問題に起因する血も凍るような恐ろしい事件を、声高に犯人を糾弾することなく、淡々と描くことによりテーマを浸透させるという新人離れした手腕で、世界各国の映画賞を総なめにし、また誰もが「まだやんのかよ」と突っ込んだ『ロッキー』シリーズ新章『クリード』では、誰もが想像しなかったシリーズの主人公を黒人青年に変えてのリブートに成功。その才能に疑う由はもはやないと言い切れます。
MUの誇るアフリカンヒーロー『ブラックパンサー』と、クーグラー監督の相性は、もう抜群に非常に良いと、決まったも同然なわけです。楽しみですね!