【ネタバレ解説】「ボバ・フェット」チャプター2、『デューン 砂の惑星』とタトゥイーンの関連性を探る

この記事には、「ボバ・フェット/The Book of Boba Fett」チャプター2のネタバレが含まれています。

1970年代に始まった『スター・ウォーズ』に先がけ、小説『デューン 砂の惑星』は1960年代に誕生していた。実のところ、ジョージ・ルーカスは『スター・ウォーズ』を構築するにあたり、砂の惑星を舞台にユニークな生態系が事細かく綴られた『デューン』に多大な影響を受けたことでも知られている。
両方の作品では、貴重なものとしてトレードされているスパイスといった大きな共通点も見いだせるが、『スター・ウォーズ』から『デューン』への直接的な言及として登場する設定がある。惑星タトゥイーンの広大な砂漠一帯を差す“デューン・シー(Dune Sea)”だ。全ての始まりである『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』(1977)をはじめ、「スター・ウォーズ/クローン・ウォーズ」(2008-2020)や「Star Wars バトルフロント」(2015)など、映画やアニメ、ゲームを横断して登場してきたデューン・シーは、シリーズ最新作「ボバ・フェット」のチャプター2でも言及されている。
上述の通り、2021年に映画が公開されたこともあり、チャプター2では『デューン』を想起した方も多いはず。ジョージ・ルーカスが、どこまで『デューン』にヒントを得たのかは定かでないが、デューン・シーを活動領域に含めるタトゥイーンの種族タスケン・レイダーは『デューン』との興味深い類似性を持っている。
サンド・ピープルとも呼ばれるタスケンたちは、砂漠での過酷な生活を切り抜けるため、独自のサバイバル術を身につけてきた。水分の補給源としてブラック・メロンという果物を採取したり、独自の武器を精製したり。一方『デューン』でも、砂の惑星アラキスに住まう“フレメン”という名の先住民族が存在。フレメン達も、体内から排出される水分をリサイクルする特製スーツや、アラキスの固有種サンドワームの牙から作られたクリスナイフという短剣を活用しながら、砂漠を生き抜いているのだ。

「ボバ・フェット」チャプター2と『デューン』に共通して重要なテーマとなっているのが、「外部との関係性」である。チャプター2で、タスケン・レイダーはボバを助け、砂漠で生きる術、戦う術を伝授していく。その見返りとして、ボバもタスケン達にスピーダーの乗り方などを教え、両者は相補的な関係を構築。それは『デューン』における、フレメンと砂漠に放り投げられた主人公ポール・アトレイデスが作り上げていく関係そのものではないか。
しかし、全てが共通しているというわけではなく、「ボバ・フェット」にはオリジナリティを見出すこともできる。本シリーズは『スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還』(1983)で死亡したと思われていたボバの生還劇を描く後日譚。“現在”のタイムラインでのボバは、大名としてタトゥイーンを治めようとしているが、ドラマは瀕死のボバがいかにして生き延びれたのかということにも焦点を当てている。そのため、『デューン』では外部の者(=ポール)が先住民(=フレメン)に戦闘術を伝授するという構図が、「ボバ・フェット」では先住民(=タスケン・レイダー)から外部の者(=ボバ・フェット)というように逆転していることは、物語が生み出す違いの一例と言えよう。
ちなみに、「ボバ・フェット」のクリエイターたちが制作段階で『デューン』を意識したのかは定かでないが、映画『DUNE/デューン 砂の惑星』を監督したドゥニ・ヴィルヌーヴは、『スター・ウォーズ』からアイデアを借用することを禁止していたのだという。映画の主要撮影地であった中東ヨルダンの砂漠地帯ワディ・ラムが『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』(2019)の撮影地でもあることを知ったヴィルヌーヴ監督は、登場スポットが重なってしまわないように『スター・ウォーズ』チームとの面会をしていたことも明かされている。
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