『ブレードランナー2049』の未来でも女性は性の対象?ラヴ役女優が反論

2019年を描いた前作『ブレードランナー』(1983)より30年後、2049年の未来を描いた『ブレードランナー2049』は前作同様、技術や価値観が進んだ先進的な世界が舞台となっている。
人間と見分けのつかない人造人間レプリカントが台頭する社会において、人間を人間たらしめるものは何なのか…前作より受け継ぐ哲学的テーマを、美しくもダイナミックなディストピア的映像で映し出した『2049』は既に大きな評価を得ているが、一方で「未来でも女性は男性の補佐的な性対象の存在なのか」といった批判の声も挙がっている。たしかに、セクシーなホログラフィーの美女ジョイは主人公Kに献身的に仕え、都市に映される巨大ホログラムでは性的魅力を振りまく存在として登場する。女性レプリカントのラヴもまた、ジャレッド・レト演じるウォレスに仕える。

「未来を想像してください。そこでは女性が”未だに”セックス・オブジェクトとして扱われているんです」──映画ジャーナリストのヘレン・オーハラ氏はThe Poolに寄稿した記事で、『ブレードランナー2049』を映画としては賞賛しながらも、しかし極めて辛辣な意見を述べている。
「(『ブレードランナー2049』は)オリジナル版同様、わざとらしく造られた女性が登場する。オープニングでは、シルヴィア・フークス演じるラヴは創造主であるウォレス(ジャレッド・レト)に従順であると明かされる。マッケンジー・デイヴィス演じるマリエットは性労働者として働いており、新たなタッチとしてホログラフのガールフレンドは『her/世界でひとつの彼女』(2013)のスカーレット・ヨハンソンを彷彿とさせる。」
「最大の女性キャラクターは抽象的な名が与えられたラヴ、ジョイ、そしてマリエッタ(”マリオネット”ってこと?)で、他の人を気まぐれで満たすために造られた存在で、ただ男性の欲望を満たすための奴隷的な女たちだ。こんな未来を気にしないで、今の時点で私たちはこれよりマシじゃない?」
「セックスを商売にする人たちを大きく描くと決めたのだとしたら、フィルムメーカーたちは女性を一体何だと思っているのだろう?なぜそういう女性が一番魅力的に見られるのだろう?売春婦はスクリーンに登場し過ぎていて、女性たちは実生活で汚され、蔑まれている。」
「映画って、『ブレードランナー』でさえこうした不快な価値観が蔓延っている。女性を平等に扱う未来のビジョンを描くより、男性の観客を刺激することの方がよっぽど大事なんでしょう。」
こうした市井の意見は、イギリスの大手新聞ガーディアン紙も注目した。「『ブレードランナー2049』のディストピア的未来描写は、性差別的か、それとも平等か?」とのタイトルで、ソーシャルメディアを中心に噴出した意見を紹介している。同記事は公平な立場から、批判の意見と共に擁護派の声にも触れている。そもそもブレードランナーは倫理観も退廃したディストピア世界を描いているし、ベースとなったのは1968年に出版された小説(『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?)なのだから仕方ない、というものだ。
ラヴ役女優の持論

もともと登場人物がさほど多くない『ブレードランナー2049』において、女性ヴィランとして登場したラヴは、ウォレスの指示通りに動く冷酷かつ力強いレプリカントだ。演じたシルヴィア・フークスは、こうしたジェンダー・バイアス問題について自身の意見を持って反論している。BUSTLEのインタビューにて語った。
「(批判の声に)同意する必要もないですが、議論についてはわかります。特定の未来的な見地からの、特定の考え方ですね。セックス・ワーカーが存在していて…、一方で、ロビン・ライト(Kの上司の警部補ジョシ役)がいて、私のキャラクターもいる。映画では強い女性もたくさん描いている。」
ラヴ役に向けて3ヶ月間、1日3時間のトレーニングを週6回続け、15ポンド(約6.8キロ)も増量して挑んだというシルヴィアは、「(自分の役は)弱い女性でいなくてもいいんだと感じ、急に強くなった気がした」と語っている。
ちなみに、『ブレードランナー2049』への出演を知らされた瞬間は喜びのあまり「月にも響く勢いで絶叫」したというシルヴィアは、ラヴというキャラクターの役作りにはテイラー・スウィフトを参考にしたという。
「(役作りにあたって)テイラー・スウィフトやセレーナ・ゴメスといった、若い女性のセレブ、歌手を参考にしました。彼女たちは影響力があって、自分の人生をしっかりコントロールしなければいけない。あらゆる瞬間を写真に撮られたり、メディアの餌食になったりするのですからね。」
『ブレードランナー2049』をご覧になった皆さんは、男女の描き分けについてどう感じられただろうか?