ジェームズ・キャメロン、『アバター』実現のため20世紀フォックスと戦っていた ─ 「『タイタニック』でビルを建てたんじゃないの?」

巨匠ジェームズ・キャメロン監督が、『アバター』(2009)の製作当時、作品のために20世紀フォックス(現・20世紀スタジオ)と戦っていたエピソードを明かした。米The New York Timesでは、本作の再上映にあたり、キャメロンが当時のエピソードをいくつも語っている。
オリジナル脚本によって独自の世界観とイメージを作り込み、しかも3D映画として公開された『アバター』は、現在のハリウッドほど既存のシリーズ作品や原作ものが重視されていなかった当時の状況を鑑みても野心的な一作だった。「実現のためにスタジオと戦わなければいけなかったことは?」と問われたキャメロンは、「当時はいろんなことで衝突しました」と振り返っている。
「たとえばスタジオ側は、もっと短い映画にするべきだと思っていたし、イクラン──人々がバンシーと呼ぶものです──に乗って飛び回る場面が多すぎると思っていたんです。けれど、我々の調査やデータによると、観客はそこが一番好きだということがわかった。だから私の方から、ここは譲れないという話をしたんです。“あのね、僕は『タイタニック』(1997)を作ったんだよ。いま会議をしているこの建物、5億ドルの新しいビルは『タイタニック』で建てたんじゃないの? だからこれをやらせてもらいますよ”と。」
作品に対するキャメロンの読みは的中し、のちに20世紀フォックス側は監督に感謝したという。キャメロンは「スタジオの投資を守るのも監督の仕事です。時には彼ら自身の判断に背いてでも」と語っているが、こうした取り組みは創作だけでなく、公開戦略にも表れていたようだ。『タイタニック』は1997年12月、『アバター』は2009年12月に公開されたが、これもキャメロンの強い要望があってのことだったという。
「(当時は)大作映画が常にたくさん公開されていたので、居場所には常に苦労しました。だから『タイタニック』をクリスマスまでに公開するようフォックスに薦めたんです。1月や2月には空きが出るとわかっていたから。それは実際に成功したし、『アバター』も同じ戦略でうまくいった。『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』も同じ戦略です。今はそれほど大作が多くないから、さほど居場所には苦労しないんですが。」
キャメロンは自らについて、「最高の仕事をして、そしてお金を儲けるという責任がある」と言い切る。「映画を作る中で、自分がそのことをどう芸術的に置き換えながら判断しているのかはわかりません。だけど、うまくいく時はわかるんですよ」。映画監督とビジネスマン、ふたつの傑出した才能を持つからこそのエピソードである。
映画『アバター:ジェームズ・キャメロン3Dリマスター』は、2022年9月23日(金・祝)から10月6日(木)まで2週間限定で劇場公開中。最新作『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』は12月16日(金)に日米同時公開となる。
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Source: The New York Times