『ジョーカー』監督、ワーナーに「マーベルには勝てない」と進言していた ─ 「彼らにできないことをやる」新レーベルの計画も提案

DCコミックス屈指のヴィラン、“狂気の犯罪王子”の誕生を描いた映画『ジョーカー』は、第76回ベネチア国際映画祭で金獅子賞(最高賞)を受賞、早くもコミック映画史上初の快挙を達成した。本作は第44回トロント国際映画祭で上映されるや、熱狂と拒否反応が入り乱れる激しい反応で話題をさらっている。大胆なアプローチで前人未到の挑戦をやってのけたのは、『ハングオーバー!』シリーズで知られるトッド・フィリップス監督だ。
実はトッド監督は、『ジョーカー』の企画をワーナー・ブラザースに初めて提案した際、スタジオ幹部に「マーベルには勝てない」と進言していたという。米The New York Timesによると、監督作『ウォー・ドッグス』がプレミア上映を迎えた2016年8月、トッド監督はマーベル映画の看板を見上げ、業界の未来を考えた末、こう話したというのだ。
「マーベルは怪獣です、勝てません。彼らにはできないことをやりましょう。」
監督がワーナーに提案したのは、DCコミックスのキャラクターをきちんと描きつつも、過去の映画には一切干渉しない独立した作品とする、低予算の映画群を製作することだった。「『マクベス』がいろいろ解釈されるように、ただ新しい解釈をやるという意図でした」とトッド監督は語る。
英Empireでは、トッド監督による当時の提案がより詳細に伝えられている。トッド監督は、『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』(2016)や『ワンダーウーマン』(2017)などの「DC映画ユニバース」とは異なる新レーベルの旗揚げを提案。製作費3,000万ドル程度、なるべくCGを使わない作品を連続的に製作する計画を薦めたという。レーベルの名前は「DCブラック(DC Black)」だった。
「『ジョーカー』を皮切りとして、素晴らしいフィルムメーカーたちに加わってもらいましょう、と言いました。すべて脱ぎ捨てれば解放されますと。」
もっともワーナー側は、この新レーベル計画については「まあまあ、落ち着いて」という反応だったそう。代わりにトッド監督の提案した『ジョーカー』にはゴーサインが出され、脚本の執筆には大きな自由が与えられたという。
『ジョーカー』の企画が初めて報じられた2017年当時から、本作がDC映画ユニバースとは世界観を共有しないこと、また新レーベルの第1作となる可能性があることは伝えられていた。一部には新レーベルの名称が「DCダーク(DC Dark)」あるいは「DCブラック」になると噂されていたが、その根拠はトッド監督によるプレゼンにあったのだ。
なおトッド監督は、『ジョーカー』をとことん独立した物語として製作することを意図しており、今回のジョーカーがロバート・パティンソン演じる新たなバットマンと共演する可能性についても「絶対にない」と否定済み。ロバートが主演する『ザ・バットマン(原題:The Batman)』が、既存作品と世界観を共有するかどうかは分からない。『ジョーカー』が映画祭で高く評価されていることが、ワーナーによるDC映画の戦略に影響を与える可能性は十分にあるだろう。
映画『ジョーカー』は2019年10月4日(金)日米同日、全国ロードショー。
Sources: The New York Times, The Los Angeles Times, Empire August 2019