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ジェイソン・ステイサムが最強の新人『キャッシュトラック』ガイ・リッチーとの黄金タッグ復活、クライム・アクションの新たな傑作

キャッシュトラック
©2021 MIRAMAX DISTRIBUTION SERVICES, LLC ALL RIGHTS RESERVED.

逆に、ジェイソン・ステイサム主演のアクション映画で満腹になれなかった作品があっただろうか?ノンストップ・アクションの手本作『トランスポーター』や『アドレナリン』シリーズ、巨大ザメとタイマン張った『MEG ザ・モンスター』(2018)、さらには『ワイルド・スピード』シリーズまで。ステイサムが出演しているということは、それはその作品がタフなアクション映画になるという最強の保証だ。

そのステイサムが、盟友ガイ・リッチー監督と再びタッグを組んだ新たなるクライム・アクション映画『キャッシュトラック』が、2021年10月8日より日本公開となる。この2人といえば、『ロック、ストック&トゥー・スモーキン・バレルズ』(1998)で共に名を知られるようになり、『スナッチ』(2000)で評判を確立。少々意外に思えるが、その後のタッグは2005年の『リボルバー』のみだったので、本作では16年ぶりの再会作ということになる。

この16年の間、2人は互いに人気と実力を不動のものとした。ステイサムは『エクスペンダブルズ』シリーズでハリウッド最強のアクションスターたちと肩を並べ、巨大ザメを討伐し、『ワイスピ』ファミリーにも仲間入り。ガイ・リッチーは『シャーロック・ホームズ』(2009)や『コードネーム U.N.C.L.E.』(2015)でエッジーなアクション・スタイルを洗練させ、ディズニー映画『アラジン』(2019)のリメイクを頼まれるほどの信頼を勝ち得た。言わばキャリア最上期にあるとも言える2人が才能を激突させる『キャッシュトラック』、そのジャンルは容赦なしのクライム・アクションだ。

この新人、なぜかムチャクチャ戦い慣れしてるんですけど

ここのところ、『ジョン・ウィック』シリーズや『Mr.ノーバディ』(2021)のような「ナメてた相手が最強の男だった」という復讐劇が人気だ。アクションがなくたって、例えば日本の仕返しドラマ『半沢直樹』も社会現象になった。ストレスを抱えた現代人は、一見何者でもない主人公が、実はとんでもない実力や闘争心の持ち主であり、調子に乗った相手をギャフンと言わせるという物語に共感を見出している。『キャッシュトラック』も、基本的にはこのフォーマットに分類できるものだ。

ジェイソン・ステイサムが演じる正体不明の主人公“H”は現金輸送専門の警備会社の新人として登場し、マッチョイズムが支配する職場で周囲にからかわれながら現場に赴く。しかし観客は、ステイサムが演じているのだから、このHはとんでもないキレ者なのだろうということはわかっている。映画の序盤、Hは謎の素性を隠して警備会社の面接を受け、わざとギリギリ合格ラインを狙って銃器訓練を受ける。周囲がHをぞんざいに扱う度、思わずクスクス笑いが漏れるはずだ。

キャッシュトラック
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ある時、Hの乗ったトラックが強盗に襲われ、仲間が人質に取られる。突然の緊急事態に、普段はイキっていた同僚も焦りまくってガクブルする傍ら、Hは何でもないかのように落ち着き払っている。するとH、誰も見たことのないような戦闘スキルで悪党を一掃。一躍、職場のヒーローになったHだが、別の日に新たな襲撃事件が発生。しかし今度は、襲撃中の悪党がHの顔をひと目見るやいなや、突然逃げ返すのだった。

一体、Hは何者なのか?彼は伝説の男なのか?なぜウチに入社してきた?周囲が疑心暗鬼に陥る中、全米で最も現金が動く一日「ブラックフライデー」が近づく。その裏で、1億8,000万ドルの大金を狙った緻密かつ壮大な強奪計画が密かに進行されていた。Hの正体が明らかになる時、運命のブラックフライデーはどのような結末を迎えるのか……?

キャッシュトラック
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ガイ・リッチー節全開、徐々に明らかになるHの目的

パズルを解き進めるようなストーリー展開は、ガイ・リッチー監督作の真骨頂だ。本作では、冒頭である事件の一部始終が提示され、観客はこれがHの謎にどう関係するのかと想像する。やがて別の視点から事件の新事実が徐々に明かされていき、観客はアハ体験と共に、Hの怒りの理由を理解できるようになるのだ。全貌が判明してゆくにつれ、Hがいかに“怒らせてはいけない相手”であったかが強調されていく仕組みになっている。

そんなHを相手に、ブラックフライデー強奪計画に挑む悪党チームに注目するのも面白い。悪党のリーダーを演じるのは「バーン・ノーティス 元スパイの逆襲」(2007-2013)で主演を務めたジェフリー・ドノヴァン。さらにスコット・イーストウッドが粗暴な危険分子的ギャングとして加わっており、カミソリのように鋭い睨みをきかせている。彼らは強盗計画を細部まで念入りに企てており、その様子は『スナッチ』のようでもある。しかし、強盗側の暗躍を描くクライム・スリラーと決定的に違う点は、防衛側にジェイソン・ステイサムがいるということだ。

コメディ・センスも持ち合わせるステイサムだが、この作品ではシリアスに徹し、謎に包まれた最強の新人をミステリアスに演じあげている。『シャーロック・ホームズ』や『アラジン』など家族で楽しめる作品が記憶に新しいガイ・リッチー監督は、本作では打って変わってダークな作風を堂々と披露。実際に、ガイ・リッチーは本作について「ひたすら攻撃的にしたかった」「ダークで攻撃的にやるなら、とことんやりたい」と筆者の取材に答えている。前作『ジェントルメン』(2020)でも原点回帰的な趣を見せたガイ・リッチーは、本作では現代クライム・アクションの名手としての本領を遺憾なく発揮し、金と復讐と暴力がうごめく物語を、独自の手法でスリリングに描いている。ステイサムにとってもガイ・リッチーにとっても、最もダークな作品になっていると言えるだろう。

キャッシュトラック
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ナメてはいけない無骨なアクション

本作は2004年のフランス映画『ブルー・レイクエム』のリメイクだが、ガイ・リッチーは「オリジナル版から取り出した核を3分の1とし、3分の2は独自のアイデアで装飾」したと説明。現代風アップデートが施された作品ではあるが、どこかオールドスクールな芯の強さも感じさせる。確かに、本作でのアクション演出には『キング・アーサー』(2017)や、それこそ『ジョン・ウィック』のような奇抜さ、アクションカメラ調の目まぐるしいカメラワークやスロー映像はなく、もっと無骨で堅実。ステイサムも「ガイはリアルに撮りたくて、僕に格好良くて滑らかな動作をさせないようにしました」と証言している。これによって劇中で展開される暴力に重量感が与えられているのだが、ここにはガイ・リッチーが「1970年代のアクション・リベンジ映画に影響を受けた」と言っているところに由来がありそうだ。監督は本作で、2010年代以降のアクション映画のトレンドを追っているのではなく、むしろ「1970年代のジャンル映画にタイムラインが前後する要素をミックスした」と語っている。アクション映画が好みであれば、どの世代でも楽しめるだろう。

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ナメられたジェイソン・ステイサムの覚醒アクション、悪党チームの強盗クライム要素、そして“ガイ・リッチー節”全開のスリリングなストーリー展開。『キャッシュトラック』に期待できる見どころは、どこを切ってもパワフルで魅力的だ。アメリカでは全米初登場1位、当時大ヒット驀進中だった『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』から首位を奪い、「鬼を倒せるのはやはりステイサムしかいなかった」とSNSでも話題になった。この秋、ついに日本公開となるクライム・アクションの新たな傑作。Hとは何者なのか?ヒリヒリするような刺激を、劇場の大画面で味わってほしい。

ジェイソン・ステイサム×ガイ・リッチーのゴールデン・コンビ復活作『キャッシュトラック』は、2021年10月8日(金)公開。

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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