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トム・ホランド主演、『アベンジャーズ』監督で映画化『チェリー』原作小説が発売 ─ イラク戦争の英雄は、なぜ銀行強盗になったのか

スパイダーマン役でおなじみトム・ホランドが薬物依存の帰還兵を演じることで話題、『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)アンソニー&ジョー・ルッソ監督最新作『Cherry(原題)』の原作小説『チェリー』が2020年2月20日(木)に文藝春秋より発売された。

イラク戦争の英雄となった平凡な男は、なぜアメリカに帰国したのち、銀行強盗になったのか。著者ニコ・ウォーカーは、いくつもの銀行を襲撃した末、2011年に逮捕されて現在も服役中(出所は2020年11月予定)。自らの体験を基に、獄中で本作の執筆を開始した。大学時代の恋人との日々、衝動的に軍隊に入りイラクに派遣されたこと、道路に仕掛けられた即席爆発装置であっさりと死ぬ友人、自分にも迫る死。戦場で地獄を見た青年はPTSDに苦しみ、癒しを求めてドラッグに手を出した――。

「この主人公、バカだろ。あなたはそう思うかもしれない。でもやがて途方もない悲しみが湧きあがり、あなたの心をかき乱す。これはそういう小説です」。本書の帯には、こうした言葉が記されている。リズミカルな文体を稚拙と捉える読者もいるかもしれないが、それゆえに本書からは、破滅に向かっていく青年の心の痛みが生々しく立ちのぼってくるのだ。

New York Timesが2019年の必読書に選出した本作には、米国メディアから絶賛の声が多数寄せられている。Washington Postは「ニコ・ウォーカーは服役中の銀行強盗だ。そして必読の作家でもあることを本書で証明した」、Esquireは20世紀の傑作文学を引き合いに出して「『ジーザス・サン』と(クエンティン・)タランティーノに比すべき一冊」と記したのだ。また、Vultureは「若手アメリカ作家には近頃めずらしい、文学講座の臭いがしない純文学作品」とも評している。

生々しく、荒々しく、そして途方もなく悲しい。そんな青春犯罪文学の新たな金字塔を映画化するのは、『アベンジャーズ/エンドゲーム』が記憶に新しいアンソニー&ジョー・ルッソ監督。主演には、『スパイダーマン』シリーズで一躍トップスターとなったトム・ホランドが過酷な減量とスキンヘッドで挑む。

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ルッソ兄弟といえば、マーベル映画『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016)『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018)そして『アベンジャーズ/エンドゲーム』でダイナミックなドラマを描きながら、キャラクターの人間味を繊細に紡ぎ出して、ファンや批評家から高く評価されたことが記憶に新しい。一方のホランドも、屈託のない魅力をもって、これまでも勢いのままに突っ走る少年のみずみずしさと葛藤、挫折を体現してきた。『チェリー』の映画化にあたっても、両者の実力はいかんなく発揮されるにちがいない。

かねてよりルッソ兄弟は、原作に描かれているドラッグ(オピオイド)依存の問題に大きな関心を抱いていることを明かしてきた。映画の製作は順調に進められており、ジョー・ルッソ監督はホランドに「役柄を見事に演じ切っています。すさまじい仕事です」と賛辞を贈っている。いずれ確実に大きな注目が集まる一作、その完成に先がけて、“原点”といえる小説にぜひ触れてほしい。

『チェリー』発売情報

書名 『チェリー』
著者/訳者 ニコ・ウォーカー 著/黒原敏行 訳
発売日 2019年2月20日
価格 本体1,950円+税
ISBN 978-4-16-391174-8
ページ数 384ページ
判型・造本・装丁 四六判 軽装 並製カバーなし
出版社 文藝春秋

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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