『リメンバー・ミー』あの死者を演じたディズニー&ピクサー伝説のカメオ俳優って?

ディズニー&ピクサーでは、同スタジオの一部フィルムメーカーたちから「幸運のお守り」と呼ばれている人物がいる。1995年に公開された『トイ・ストーリー』から2020年公開の『ソウルフル・ワールド』まで、全ピクサー・アニメーション・スタジオ長編作品に出演してきたジョン・ラッツェンバーガーという名の声優・俳優だ。ピクサー初となる“音楽”をテーマにした映画『リメンバー・ミー』(2018)でも、ジョン・ラッツェンバーガーは姿を変えて顔を覗かせている。

大工の仕事に就きながら演技の道を志し、70年代にはコメディデュオを結成してイギリス中を行脚したラッツェンバーガーが、ピクサーとの出会いを果たしたのは1995年。『トイ・ストーリー』のハム役に抜擢された。同作出演後、ラッツェンバーガーは『バグズ・ライフ』(1998)をはじめ、『Mr.インクレディブル』(2004)のアンダーマイナー役、『カールじいさんの空飛ぶ家』(2009) 建設作業員のトム役、『カーズ』シリーズのマック役、『モンスターズ・ユニバーシティ』(2013) イエティ役など、絶妙な脇役で参加してきた。ちなみに、『ファインディング・ニモ』(2003)の魚の群れ役や『メリダとおそろしの森』(2012)番人のような無名キャラクターの役で参加する時もある。
そしてこのたび、2020年以来2度目の地上波放送を迎えた『リメンバー・ミー』でも、ラッツェンバーガーはマイクの前に立ち、声優を務めている。演じたのは、フアン・ハノキョーセーというキャラクター。名前を言われてもピンと来ない方が大部分だろう。本編では、この世を去った先祖が家族に会いに訪れる「死者の日」当日、ガイコツ姿の死者たちが祭壇場所を照合する受付カウンターでのシーンにフアンは登場している。骨太な体格に大きめのスーツを羽織り、表情カチコチで写真撮影に臨んでいた男性を憶えていないだろうか。ちょっぴり滑舌悪めに「グラシアス」と陽気に返事していた人物だ。登場時間、わずか6秒である。
ピクサーとは25年以上もの時を歩んできたラッツェンバーガーは、数多のディズニー/ピクサー作品を世に送り出してきた巨匠ジョン・ラセターや、『インサイド・ヘッド』(2015)『トイ・ストーリー4』(2019)のプロデューサーなどで知られるジョナス・リベラからは、「幸運のお守り」と呼ばれている。まさにピクサーの成功を叶えるお守りよろしく、劇中から見守ってきたラッツェンバーガーは、『リメンバー・ミー』以降も『2分の1の魔法』(2020)や『ソウルフル・ワールド』に出演した。
もっとも、ラッツェンバーガーは『ソウルフル・ワールド』の次回作として製作された『あの夏のルカ』(2021)には出演しておらず、連続出演記録もストップ。出演が叶わなかった明確な理由については定かでないものの、これについては監督を務めたエンリコ・カサローサがファンからの問いかけに「新しい伝統を始めたかったのです。ピーター・ソーンの声を全映画に登場させることです」と答えていた。ちなみにピーター・ソーンとは、『アーロと少年』(2015)の監督として知られ、『カールじいさんの空飛ぶ家』に登場するボーイスカウトの少年ラッセルのモデルとなった人物だ。ほか『モンスターズ・ユニバーシティ』では声優としても参加している。
『あの夏のルカ』への出演は叶わなかったラッツェンバーガーだが、2021年のアニメシリーズ「モンスターズ・ワーク」では再び声優を務めており、決してピクサーとの縁が途切れたわけではない。今後も、ディズニー&ピクサー作品としては『私ときどきレッサーパンダ』と『バズ・ライトイヤー』が控えているが、もしかするとラッツェンバーガーの声を発見できるかもしれない。
『リメンバー・ミー』はディズニープラスで配信中。
※ディズニープラスは、ディズニーがグローバルで展開する定額制公式動画配信サービスです。
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