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ディズニーの20世紀フォックス買収、コムキャスト社が高額の再提案を準備中 ― 現実化すると今後の見通し不明に

ディズニー

2017年12月、米ウォルト・ディズニー・カンパニーは21世紀フォックス社の事業買収を正式に発表した。その対象となったのは、映画事業を担う20世紀フォックスやテレビ事業を担うFOXネットワークス・グループなど。事業買収額は524億ドル(約5.74兆円 ※1ドル約109円換算)と報じられている。
超巨大企業が超巨大企業を買収するという、いわば映画・テレビ業界の地殻変動となるこの買収劇において、ディズニーのライバルとして名前が挙がっていたのが、米国の大手ケーブルテレビ局であるコムキャスト社だった。

ディズニーによるフォックスの事業買収が水面下で進められている中、コムキャストがこの買収劇に再参入するという見方が強まっている。複数のメディアによって、コムキャストがディズニーを上回る買収額の提示を準備していることが正式に報じられたのだ。

今回の報道によれば、コムキャストは、ディズニーとフォックスの合意した買収に「提案」を行う準備を進めていることを認めている。ディズニーが株式交換形式で524億ドルでの買収を進めているのに対し、コムキャストは全額現金で600億ドル(約6.5兆円)を用意することになるようだ(正確な金額は不明)。現時点でコムキャストは「最終的な決定は済んでいない」としているが、米Variety誌は、2018年夏のあいだにもコムキャストの計画が正式に発表されるとみている。

なおディズニーとフォックスが事業買収に合意した際、両社は、規制当局のかかわらない何らかの理由で買収が中止された場合、違約金として15億2,000万ドル(約1,666億円)が支払うという合意を結んでいる。コムキャストが用意しているとされる600億ドルは、この違約金をあらかじめ十分に考慮した金額といっていい。

コムキャストが買収劇に再び参入する場合、ディズニーによるフォックスの事業買収は今後の見通しが非常に不透明となる。フォックス側がコムキャストの提案を退ける、あるいはディズニー側が新たな動きを見せることもありうるが、「2019年夏までに事業買収は完了する」とされていたスケジュールに変化が生じることもやむを得ないだろう。

なお、ディズニーに代わってコムキャストがフォックスの事業買収に至った場合、ディズニー側の大きな狙いとされていた「スター・ウォーズ」やマーベル・キャラクターの権利統合、および2019年に開始される自社ストリーミング・サービスの戦力増強は叶わないことになる。アベンジャーズとX-MEN、ファンタスティック・フォーのクロスオーバーが実現しなくなることは、ディズニーにとってはもちろんのこと、世界中のマーベル・ファンにとっても大きな痛手ではないか。

Sources: Variety, THR, Deadline

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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