『ゴッドファーザー』コッポラ監督、マーベル映画を批判 ─ スコセッシの「テーマパーク映画」発言に反応、ジェームズ・ガン&セバスチャン・スタンらもコメント

『ゴッドファーザー』3部作や『地獄の黙示録』(1979)などで知られる巨匠フランシス・フォード・コッポラが、『タクシードライバー』(1976)『レイジング・ブル』(1980)などのマーティン・スコセッシによる「マーベル作品は映画じゃない」発言を受けて、スコセッシをしのぐ“マーベル映画批判”を展開したとして、米国メディアで再び話題となっている。
きっかけとなったスコセッシの発言は、英誌のインタビューでマーベル映画について「あれは映画じゃない」と発言したこと。「最も近いのは、良くできたテーマパーク」「人間が他者の感情や心に訴えかけようとする映画ではありません」と述べたことは、主に海外メディアやSNSで広く話題となったが、スコセッシ本人の言葉選びもあいまって、本人の意図するところが非常に伝わりづらい形で広がった感がある。
2019年10月18日(現地時間)、フランス・リヨンでのリュミエール賞授賞式に登場したコッポラは、記者会見にて「マーティン・スコセッシが“マーベル映画は映画(cinema)じゃない”と言ったのは正しい」と発言した。
「我々は映画から何かを学ぶことを期待するからです。何かを得たいと思うし、啓蒙を、知識を、刺激を受けたいと思うから。同じ映画を何度も、繰り返し観ることで、得られるものがあるのかどうかが私には分からない。マーティンが“映画じゃない”と言ったのは親切だったと思いますよ、“浅ましい”とは言わなかったので。私はそのように言いますが。」
きちんと区別しておきたいのは、スコセッシが「マーベル映画は映画じゃない」と述べたことと、コッポラによる今回の発言は、意図するところが大きく異なるところだ。スコセッシの場合、自身の最新作『アイリッシュマン』を大手スタジオが作れなくなったこと、ヒーロー映画の台頭で劇場公開作品の多様性が失われている(と、少なくとも彼自身は理解している)ことに警鐘を鳴らす意図があったとみられ、実際にスコセッシは、のちにマーベル映画の作り手にも一定の敬意を表している。ただしコッポラの場合、今回のコメントの焦点は作品性にあり、スコセッシが「テーマパーク」と形容したものを受け入れない姿勢を示したということになるだろう。
現在隆盛を誇っているマーベル映画に対して、スコセッシやコッポラといった往年の名監督がある種の抵抗感を示すのは、彼らがキャリアを形成してきた、育ってきた時代背景や映画をとりまく状況が大きく異なる以上、ある程度は無理からぬことだろう。米国メディアでは両者の対立構造を強化するような動きもみられ、コッポラの発言にもしばらく話題が集まることは避けられなさそうだ。
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズのジェームズ・ガン監督は、コッポラによる発言に素早く反応し、巨匠監督からマーベル映画への理解が得られない現状にも一定の理解を示している。ガン監督は、スコセッシの「テーマパーク映画」発言にもいち早くコメントを発表していた。
「僕たちの祖父の多くは、ギャング映画はすべて同じだと思っていたし、時には“浅ましい”とも言ったものです。また曽祖父たちは、西部劇にも同じことを思ったでしょうし、ジョン・フォード、サム・ペキンパー、セルジオ・レオーネの映画もすべて同じだと考えたでしょう。僕の大叔父が、『スター・ウォーズ』に猛反対して、“こういうのは『2001年宇宙の旅』で観た、つまらないよ”と言っていたのを覚えています。スーパーヒーローは、簡単に言えば、現代のギャングであり、カウボーイであり、宇宙の冒険者たちなんです。ひどいスーパーヒーロー映画もあれば、素晴らしい作品もあります。西部劇やギャング映画と同じです(それ以前に、映画である以上はそうなのです)。たとえ天才であっても、誰もが正当に評価できるわけではありません。そして、それで良いんです。」
また、米テキサス州ヒューストンで開催されたイベント「Fandemic Tour」にて、バッキー・バーンズ/ウィンター・ソルジャー役のセバスチャン・スタンもコッポラの発言に言及した。セバスチャンは、コッポラを「現代最高のフィルムメーカーであり、永遠の存在」「僕にとってはヒーローのひとり」と称えつつ、キャラクターを演じてきた俳優ならではの目線で応じている。
「彼の意見に耳を傾ける一方で、僕は(ファンの)みなさんとこうやって丸一日過ごしていると、“このキャラクターを演じてくれてありがとう”とか、“この映画にすごく救われた”とか、“映画に刺激を受けて、良い気分になって、私は孤独じゃないと思えた”なんてことを言ってもらえます。だから…こういう映画が人の役に立っていないだなんて、とても言えませんよね。」
なお、『マイティ・ソー』シリーズでジェーン・フォスター役を演じているナタリー・ポートマンもセバスチャンのコメントに呼応するような言葉を口にしている。米The Hollywood Reporterにて「映画にはあらゆる余地があると思います。芸術の生み出し方はひとつじゃない」と語ったナタリーは、「マーベル映画にすごい人気があるのは、現実の生活で、仕事や大変な日常を過ごしたあと、エンターテイメントを求めている人々をしっかりと楽しませているからでしょう」とも述べたのだ。
Sources: France 24, James Gunn, ComicBook.com, THR