ダニエル・クレイグ、『007 スペクター』撮影後の去就めぐる発言を後悔 ─ 今語られる真相とは

『007』シリーズ最新作『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』の公開を控えるジェームズ・ボンド役のダニエル・クレイグが、6年前の後悔を語った。ダニエルは、前作『007 スペクター』の撮影終了後にプロモーションの一環として応じた取材で、「ジェームズ・ボンドを再演するか?」という質問に無愛想な返事をしたとして、ネット上で物議をかもしていたのだ。
“無愛想な返事”として、ダニエルが用いたのが「(再演するより)目の前にあるグラスを割って、手首を切ってしまったほうがマシだ( I’d rather break this glass and slash my wrists)」という表現。米Time Outによる取材でのこの発言は世界各国で見出しを飾った。発言直後に出された海外メディアを掘り起こしてみると、ほとんどの記事のタイトルには「slash my wrists」という言葉が含まれている。もっとも、物議を醸した要因がダニエルにあるのかというと一概にはそうは言えない。メディア側の“切り取った”伝え方や当時のダニエルが置かれていた状況を考慮に入れなかった、伝え手と受け手側にも非はあったはずだ。
結果的に続投を決めたダニエルは、当時から長い月日が流れ、卒業を控えた今、当時の発言を米Radio Timesとの取材で振り返っている。「すごく正直に言えば、“自分にはもう1作できるか分からない”というのが本音だったんです」とダニエル。「足を骨折した状態で、撮影を終えたわけですから」と語る。
ダニエルが言うように、『スペクター』の製作は一筋縄ではいかなかった。撮影開始前となる2014年にはハッキング事件が発生し、脚本が流出。幸先の悪いなかで開始された撮影では、過酷なスタントをこなしていたダニエルが重度の捻挫をしてしまい、一時中断も経た。結果的に撮影期間は1年以上にも及び、終了した時のダニエルは相当に疲弊していたはずだ。物議を醸した直後、同作で共演したマネーペニー役のナオミ・ハリスは「完全に歪んだ方法で炎上してしまった」とダニエルを擁護するコメントを出している。「ダニエルは128日ずっと撮影に体当たりして、一生懸命やってきたんです」と。
とはいえ、「手首を切ったほうがマシ」という表現は、ダニエルも良くなかったと感じているようだ。「答え方へのもう少し気の利いたスキルがあったら、本当は良かったんですね」と当時を省みている。「ジョークのつもりだったんですが、恩知らずだと思われてしまいました」。
反省するのはダニエルだけではないようだ。取材に同席したプロデューサーを務めるバーバラ・ブロッコリも「自分たちのせいでした」と話しているのである。「撮影も長く、ダニエルも怪我をしていました。なのに私たちは“撮影が終わった後に1週間の取材をお願いしても良い?”って言ってしまったんですから」。世界がダニエルの去就に注目していた当時は明かされなかった真相がついに語られた。
なお、この件については、『ノー・タイム・トゥ・ダイ』公開記念として製作されたドキュメンタリー、『ジェームズ・ボンドとして』でも当時の映像とともに触れられている。Apple TV+で配信されているほか、本日2021年9月26日にはCS映画専門チャンネル「ムービープラス」にてテレビ放送も行われる(10月5日に再放送)。ダニエル版ジェームズ・ボンドを見納める前に、同作でこれまでの15年間を振り返ってみては。
Source: Time Out, The Independent,Standard