【本当は恐いズートピア】ダークすぎて公開できなかった、もう一つのズートピアとは

さりげなく埋め込まれたブラックなメタファーで、むしろ大人たちのほうがその考察に躍起になり、結果として今年最大級のヒット作となったディズニー映画『ズートピア』。
この映画で描かれているのは、マイノリティや偏見など 社会的なものである事はこれまでの記事でも何度か解説してきた通りだが、作品全体としてはそこまでの重苦しさやシニカルさを感じさせない、さすがディズニーと言うべきポップな仕上がりとなっていた。
だが、この未公開シーンをご覧いただけば、ディズニーが当初ズートピアをいかに「ダークに」描こうとしていたかがわかるだろう。
未公開シーン解説
このシーンでジュディとニックは白くまの“taming party”に紛れ込む。“tame”には野生の動物を、従順にさせる「飼い慣らす」という意味があり、”taming cat”で「飼い猫」を意味する。
はじめのうちは、『成人式』のように祝福ムードで式が進行する。
パパ白クマ「今日、この子は…」
子白クマ「大きなクマになるんだ!」
パパ「その通りだよ。大きな、…大きなクマにね…。」
子白クマの前で箱を開けるパパ白クマ。中には装置のようなものが付いた首輪が入っていて、子はそれを見て喜ぶ。
パパ「この首輪と共に、ズートピアは君を歓迎する。
この首輪と共に、ズートピアは君を祝福する。
この首輪と共に、ズートピアは君を認める。」
そう言って我が子に首輪を装着しようとするも、ためらった様子をみせる。子供は「これで僕も一人前のクマだ」と言わんばかりに誇らしげな表情だが、その時パパの首元に装着された首輪がピコっと光る。
子「どうしたの、パパ?」
パパ「なんでもないさ。パパは…うれしいよ。」
首輪が装着されると、装置が起動し緑色のランプが点灯する。子供は幸せいっぱいそうにパパに抱きつくが、パパは複雑な表情を浮かべる。
すると、天井からたくさんの風船が降りてきて、子は楽しそうにはしゃぐ。その時、子グマに付けられた首輪がオレンジ色に光り、微弱な電流が発せられる。
子グマはそこで、この首輪の正体を理解するのだ。それは、肉食動物に取り付けられる電流首輪で、興奮を見せると電気が流れる仕組み。肉食動物の暴走を未然に防ぐ制御装置だったのである。
これが”Taming Party”…つまり『飼いならされ記念会』とでも言うべきセレモニーだったのだ。この日白クマに取り付けられた首輪の名前は、”Tame Collar”。(Collarは首輪の意)
それを影で観ていたジュディ。ふとニックに目をやると、彼の首輪も黄色く光っていた…というわけである。
ズートピアは他にも、「差別」をテーマにした様々な設定があったが、ダークすぎたためカットされている。これらの解説については以下のブログに詳しい。
『ズートピア』の制作史、および『ズートピア』のテーマは「差別」であるのか? – 名馬であれば馬のうち
このような未公開シーンが本編に採用されていたら、ズートピアはどんな作品になっていただろう?ダーク版ズートピア、あなたは観てみたい?