『ウィンストン・チャーチル』特殊メイクの裏側 ― 製作期間6ヶ月!チャーチルとゲイリー・オールドマン、その奇跡のバランスとは

映画『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』は、劇場公開以前から大きな話題を呼んだ。第90回アカデミー賞にて、本作で特殊メイクを担当した辻一弘氏らがメイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞したのだ。出演オファーを受けたゲイリー・オールドマンが、2012年に映画界を引退していた辻氏を訪ねて「あなたが引き受けないなら、僕も映画に出ない」と述べたのは有名なエピソードである。
撮影を担当したブリュノ・デルボネル氏は、オールドマンがチャーチルに扮した姿を見て「ゲイリー・オールドマンを探したんですが、彼だとわかるのは目だけでしたね」と振り返った。驚愕の特殊メイクはいかに生まれたのか、米Yahoo! MOVIESとThe Hollywood Reporter誌にて関係者たちが証言している。

製作期間6ヶ月、怒濤の試行錯誤
『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』を手がけたジョー・ライト監督によると、オールドマンの特殊メイクが完成するまでは6ヶ月を要したという。「何回も繰り返しました。最初は(完成版とは)ほど遠かったですよ。ゲイリーが顔にプラスチックをたくさん貼りつけたみたいで。」
オールドマンと辻氏が、シリコンやゴムなどを使いながらウィンストン・チャーチルの特殊メイク製作に臨んだのは2016年の夏だった。初期段階のメイクについて、オールドマンは「ゲイリー・オールドマンとウィンストン・チャーチルの間に子どもが生まれた感じでしたよ。これが可愛くなかったんですよね」と振り返る。
「ゴムマスクをつけた男を見ているようにはしたくなかった。だから、きちんとチャーチルで、きちんとゲイリーだ、というバランスを目指しました。骨格が違うので、(チャーチルのレプリカは)うまくいきませんでしたね。完璧に彼に近づけるのではなく、彼のエッセンスを捉えた、良いハイブリッドを作りました。」
メイクチームが編み出したのは、オールドマンの顔を「特殊メイク」と「非特殊メイク」の半分ずつにするという方法だった。ライト監督はこの完成版を非常に気に入り、出来栄えをこう語っている。
「顔の上半分が完全にゲイリーで、下半分が特殊メイク。カメラの位置を低くするとチャーチルらしくなるし、高くするとゲイリーに見えるんです。カメラの位置はだいたい低めにしていましたが、メイクは本当に良かったと思いますね。(メイクだと)忘れてしまうほどでしたよ。仕上げにCGは一切使っていません。チャーチルに見える俳優が演じている、ただそれだけです。」
劇中でオールドマンの顔、身体を覆っている特殊メイクは約14ポンド(6.4キロ)。チャーチルの激しい動きを見せられるよう、なるべく軽い作りになっていたのである。そのクオリティは、撮影現場を訪れた歴史家が、チャーチルの姿をしたオールドマンの写真を見て、実在のチャーチル本人だと勘違いしたほどだったとか……。

ちなみに撮影中、オールドマンは毎日4時間のメイク作業を必要とした。そんな過酷な撮影を、彼は「スタミナの訓練でした」と回想し、それでも「楽しかったからやり遂げられたんです」と述べている。ライト監督は、撮影期間の3ヶ月、オールドマンが彼自身の姿でいるところを一度も見ていなかったそうだ。
「メイクのために、ゲイリーは4時間早く現場に来なきゃいけなかったんです。数時間後に僕が着いて、その日の準備をしている時には、彼はもうメイクした姿でしたね。これほどの特殊メイクは使ったことがなかったですし、本当に貴重な体験でしたよ。」
映画『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』は2018年3月30日より全国の映画館にて公開中。
『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』公式サイト:http://www.churchill-movie.jp/
Sources: Yahoo!, THR
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