書籍『アニメーションの女王たち』、ディズニーの世界を変えた女性たちの知られざる物語とは

『白雪姫』(1937)から『アナと雪の女王』(2013)まで、ディズニーの夢のような世界の裏側で忘れ去られた女性たちの歩みを明かす。書籍『アニメーションの女王たち ディズニーの世界を変えた女性たちの知られざる物語』が、2021年2月26日(金)より全国書店、各ネット書店にて発売開始された。
ノンフィクションである本書では、ウォルト・ディズニー・ スタジオに所属していた5人の女性アーティストを中心に、女性やアジア系などマイノリティのアーティストが果たしてきた創造的な役割と、歴史から忘れ去られた彼女たちの多大なる貢献の真実を明らかにする。彼女たちの創造性によってディズニー・ アニメーションが夢の世界へと変わっていくさまが描かれるだけでなく、才能豊かな女性アーティストたちを妬む男性スタッフからの嫌がらせや功績の横取りなど、耳を疑うような創造の裏側が当時を知る人々のインタビュー、文献、ドローイング(アートワーク)などから暴かれていく。
女性というだけで入れる部署が限定され、同じ仕事をしながらも男性と女性では給与が全然違うという不公平 。大きな貢献をしているにもかかわらずクレジットには名前が載らないという不条理。ねぎらいの言葉もなく会社を追い出されるという理不尽。そんなスタジオの中でも女性アーティストたちは友情を育み、優れた作品やアートワークを生み出していく。そして次の世代が、彼女たちが遺した作品やアートワークを継承し、「ディズニー・ プリンセス」を、そしてスタジオ自体を生まれ変わらせていく様子が綴られる。
初の長編カラーアニメーション映画である『白雪姫』 から新しいディズニー・プリンセス像をつくった『 アナと雪の女王』まで、それぞれの制作秘話や女性アーティストの活躍が語られていくだけでなく、コピー機やコンピュータの技術革新が作品に与えた影響なども知ることができる。アニメーションと技術との関係を浮き彫りにするパートは、サイエンスライターでもある著者ナサリア・ ホルトの知識と経験が活きており、また公民権運動や黒人差別など社会の問題と、アニメーション作品との関係についても語られているのだ。
大人から子供まで世代を超えて親しまれる作品を送り出し、数多くの成功を収めてきたウォルト・ディズニー・スタジオ。多くの本や映画が、ウォルト・ ディズニーとそのスタジオの歴史と功績を褒め称えている。しかし、そこで描かれるスタジオの軌跡は男性、特に白人の男性の名前のみによってかたちづくられているものがほとんど。その歴史の裏側がいま、明らかになる。
本書で主に取り上げる5人の女性アーティスト
- ビアンカ・マジョーリー(1935年入社): 女性初のストーリーアーティスト
- グレイス・ハンティントン(1936年入社): ストーリーアーティスト、飛行機操縦士
- レッタ・スコット(1938年入社):『バンビ』 の女性アニメーター
- シルヴィア・ホランド(1938年入社):『ファンタジア』 等のコンセプトアーティスト
- メアリー・ブレア(1940年入社):『シンデレラ』 等のコンセプトアーティスト、ディズニーランド「イッツ・ア・ スモールワールド」のデザイン
本書で特に多く取り上げる作品
- 『白雪姫』(1937年)
- 『ピノキオ』(1940年)
- 『ファンタジア』(1940年)
- 『ダンボ』(1941年)
- 『バンビ』(1942年)
- 『ラテン・アメリカの旅』(1942年)
- 『三人の騎士』(1944年)
- 『南部の唄』(1946年)
- 『シンデレラ』(1950年)
- 『ふしぎの国のアリス』(1951年)
- 『ピーター・パン』(1953年)
- 『眠れる森の美女』(1959年)
- 『101匹わんちゃん』(1961年)
- 『くまのプーさん 完全保存版』(1977年)
- 『リトル・マーメイド』(1989年)
- 『美女と野獣』(1991年)
- 『ライオン・キング』(1994年)
- 『ポカホンタス』(1995年)
- 『ムーラン』(1998年)
- 『アナと雪の女王』(2013年)
目次
- 序文
- 年表
- 若かりし日
- 口笛吹いて働こう
- 星に願いを
- 花のワルツ
- リトル・エイプリル・シャワー
- 私の赤ちゃん
- ブラジルの水彩画
- ユア・イン・ジ・アーミー・ナウ
- ジッパ・ディー・ドゥー・ダー
- これが恋かしら
- 私だけの世界
- きみもとべるよ!
- いつか夢で
- ダルメシアン・プランテーション
- 小さな世界
- おいっちに、おいっちに
- パート・オブ・ユア・ワールド
- 闘志を燃やせ!
- 生まれてはじめて
- エピローグ ハピリー・エバー・アフター
- 謝辞
[著]ナサリア・ホルト
1980年生まれ。ノンフィクション作家。南カリフォルニア大学、テュレーン大学、ハーバード大学で学び、マサチューセッツ総合病院ラゴン研究所、マサチューセッツ工科大学、ハーバード大学などで研究職に就く。サイエンスライターとして『ニューヨーク・タイムズ』、『 ロサンゼルス・タイムズ』、『タイム』等に寄稿。また、カリフォルニア工科大学図書館、ハーバード大学のシュレシンガー図書館などでも執筆活動を行っている。邦訳された著書に『完治』(岩波書店)や『 ロケットガールの誕生』(地人書館)がある。
[訳]石原薫
翻訳家。国内メーカー、米系デザイン会社勤務を経て、書籍の翻訳や企業向けの翻訳に携わる。訳書に『ピクサー流 創造するちから』、『よい製品とは何か』(以上ダイヤモンド社)、『姿勢としてのデザイン』、『HELLO WORLD』、『NYの「食べる」を支える人々』、『 シビックエコノミー』(以上フィルムアート社)、『未来をつくる資本主義』(英治出版)、『Sustainable Design』(ビー・エヌ・エヌ)などがある。
『アニメーションの女王たち ディズニーの世界を変えた女性たちの知られざる物語』は、株式会社フィルムアート社より2021年2月26日(金)発売。四六判・並製 456頁・定価2,600円+税。