米マーベル会長、アイザック・パルムッターが解雇 ─ マーベル・スタジオ社長ケヴィン・ファイギと長年対立

マーベル・エンターテインメントのアイザック・パルムッター会長が、親会社のウォルト・ディズニー・カンパニーによって解雇されたことがわかった。米Varietyなどが報じている。
2009年、マーベルをディズニーに売却した張本人であるパルムッター会長は、現在はコミックの出版(年間4,000~6,000万ドルの売上と報じられている)やライセンス事業に取り組んできた。今後、マーベル・エンターテインメントはディズニーの他部門に吸収される予定。「マーベル」の名前がどのような形で残るのかはわかっていない。
パルムッター会長の解雇は、2022年11月にCEOに復帰したボブ・アイガー氏による事業再編計画によるもの。経営状態の悪化やストリーミング部門の不振を受けて、ディズニーは55億ドルものコストを削減する方針を決定し、2023年夏までに7,000人の従業員を段階的にレイオフ(解雇)すると発表していた。事業再編計画は多岐にわたり、映画・ドラマの製作費削減や、メタバース部門の解散もすでに決定されている。
また、ディズニーはパルムッター会長のみならず、マーベル・エンターテインメントの共同社長であるロブ・ステフェンズ氏、主任顧問のジョン・トリツィン氏も解雇した。社長のダン・バックリー氏はディズニーに残留し、今後はマーベル・スタジオ社長であり、マーベル作品のチーフ・クリエイティブ・オフィサーを務めるケヴィン・ファイギのもとで業務にあたる。
今回の解雇について押さえておきたいポイントは、かつてはマーベルの統括役だったパルムッター会長と、映画部門を率いるファイギ社長が長年の確執状態にあったこと、これを受けてパルムッター会長とアイガー氏の関係が悪化していたことだ。パルムッター会長は2015年にファイギ社長を解雇しようとしており、これを重く見たアイガー氏はマーベル・スタジオの独立を決定、ディズニー直属のスタジオとして扱うようになっていた。
それ以前のパルムッター氏は、映画の予算を握り、社内の“クリエイティブ委員会”を率いてはマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)作品への介入を行っていた。しかし、この委員会は「女性や黒人の映画には客が入らない」と主張して『ブラックパンサー』(2018)や『キャプテン・マーベル』(2019)の企画に反対する、『アントマン』(2015)を手がける予定だったエドガー・ライト監督の降板のきっかけを作るなど、現在のマーベル・スタジオとは逆の方針を提案しており、映画界からの評判も非常に悪かったのである。
マーベル・スタジオをディズニー直属にしたことで、アイガー氏とパルムッター会長の関係も悪化した。2023年2月、アイガー氏は「彼(パルムッター)は満足していなかったし、不満は今も残っていると思います」と語っていたのである。なお、ディズニー/マーベルを去るパルムッター氏だが、現在もディズニーの主要な株主のひとりであることは変わらない。
Source: Variety