ディズニー幹部の大幅減給決定、旧フォックス幹部との間で亀裂のおそれ ─ ボブ・アイガー元CEOは無給、現CEOは50%減額を発表

新型コロナウイルス(COVID-19)の影響を受け、ウォルト・ディズニー・カンパニーが、幹部の給与を大幅減額することを決定した。ところが、この決断が、ディズニー傘下に加わった元21世紀フォックス幹部との間で亀裂を生むおそれがあるという。米Deadlineが報じた。
2020年3月30日(米国時間)、元CEOで会長職のボブ・アイガーは給与の全額カットを承諾。現CEOに就任したばかりのボブ・チャペックも、給与の50%削減に応じている。これは新型コロナウイルスの感染拡大を受け、北米の自社テーマパークが無期休業に入る、『ムーラン』『ブラック・ウィドウ』の世界的公開延期を決定するなどの経済的影響が生じたがゆえの決定だ。
米The Hollywood Reporterによれば、業界屈指の“高給取り”であるアイガー氏は、2019年に4,750万ドルの報酬を受け取ったとのこと。この金額には、削減対象となる給与のほか、ボーナスを含む複数の報酬が含まれている。同じく、チャペックCEOも給与は250万ドルだが、そのほか750万ドルのボーナス、定期インセンティブ1,500万ドルを受け取る予定。50%削減の対象となるのは給与の250万ドルで、残りの推定2,250万ドルは削減対象に含まれていない。
今回の決定に際して、ディズニーは幹部職の給与を大幅削減することも発表。バイス・プレジデント(VP)は20%、シニア・バイス・プレジデント(SVP)は25%、エグゼクティブ・バイス・プレジデント(EVP)は30%の減額となり、期限は「業績の回復が見込めるまで」とされている。しかしDeadlineによると、ここに旧20世紀フォックスとの亀裂の“種”が埋まっているというのだ。
ディズニーによる21世紀フォックスの事業買収に伴い、旧フォックスの幹部たちはディズニーという組織に組み込まれている。ところが報道によると、旧フォックス幹部の階級とディズニー幹部の階級は、必ずしもバランスをうまく取れておらず、ある局面では、ディズニーのVPと、階級的には上位にあたるフォックスのEVPが近い扱いを受けるケースもあるとのこと。その状態で、給与削減が階級を基準に行われることがひとつの“種”だ。
もうひとつの懸念として伝えられているのは、事業統合の完了当時、旧フォックスの幹部はディズニー幹部より手厚い報酬を受け取るとされていたが、あくまでも基本給与は低く、それらは十分なボーナスで支えられる見込みだったということだ。ところが、経済的打撃を受けて給与削減をやむなくされた今、2020年にボーナスなどがどれだけ支払われるかは未知数。結果的に旧フォックスの幹部は、事実上ディズニー幹部よりも大幅な報酬カットを受ける可能性があるという。
さらにDeadlineは、VP・SVP・EVPの給与削減額は20%・25%・30%と5%ずつで設定されているが、企業構造の中で、これら3つの階級には給与面にそれほどずば抜けた開きがないと指摘する。かたや、EVP・プレジデント・会長職は一律で30%カットとされているが、それぞれの給与額には数百万ドルの開きさえあるとのこと。すなわち、階級で削減額を決定したことから、方々で不平等が起こりかねないという見立てなのである。
記者のネリー・アンドレーヴァ氏は、ディズニーとフォックスの事業統合により、両社は、まったく異なる文化の巨大企業がひとつになることの困難に臨んできたと伝えている。しかしアメリカという国が健康的・経済的な危機に立たされている今、両社の間にある“さまざまな溝”が深まる可能性があるという。ディズニーというハリウッド屈指の大企業にとって、これは大きな試練となりうるものだ。
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Sources: The Hollywood Reporter, Deadline