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しくじりヒーロー奮闘記「ドゥーム・パトロール」、奇抜すぎる世界観ながら愛されるワケ ─ トラウマと向き合う者たち、DCドラマの新境地

ドゥーム・パトロール シーズン1
DOOM PATROL and all related pre-existing characters and elements TM and © DC Comics. Doom Patrol series and all related new characters and elements TM and © 2022 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.

ヒーローはカッコいい。でも、コイツらはカッコよくないのに応援したくなる?「しくじり」の過去を持ったはみ出しものたちの、奇妙すぎるドタバタ大冒険。新ドラマ「ドゥーム・パトロール <シーズン1>」は、DCファンはもちろん、クレイジーなアクション作品が好みなら要注目だ。国内では、ダウンロード販売・デジタルレンタル配信、DVD販売・レンタルが2022年4月20日より開始される。アメコミ作品史上、最も異端なこのシリーズ、一体何がヤバいのか?

ドゥーム・パトロール シーズン1
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「ドゥーム・パトロール」は、ブッ飛んだ設定を持つキャラクターたちが、なんやかんや世界を救うための大冒険を繰り広げるドラマ。アメリカではDC Universeで配信されるや批評家もファンも大絶賛、早くもシーズン4の製作も決定するほどの好調シリーズだ。

メンバーはDCドラマ「タイタンズ」にも既に登場。よって言わずもがな、「タイタンズ」の視聴者は必見のシリーズだ。また、「アローバース」の立役者グレッグ・バーランティが製作を行っているので、「アロー」や「フラッシュ」などアローバースのファンにもオススメしたい。

大まかに言えば「ドゥーム・パトロール」は、およそヒーローとは呼べないはみ出しものたちがチームを組んで奔走する……というお話なのだが、そう聞くと『ザ・スーサイド・スクワッド』を思い浮かべる方も多いはず。しかし本シリーズには、『スースク』とはまた違ったクレイジーさやグロテスクさがある。クソッたれヒーローたちがメチャクチャやらかす「ザ・ボーイズ」とも、これまた違うベクトルのおかしさ。とにかく「ドゥーム・パトロール」はアメコミ映像作品史上最もブッ飛んだ作品といって過言ではないだろう。クセになる人はとことんハマるはずだ。

導入となる第1話~第2話だけでも、常軌を逸した展開が連続する。「ドゥーム・パトロール」のメンバーは、脳みそをロボットに移植したロボットマン、負のエネルギーを宿す包帯男のネガティブマン、身体がブヨブヨに変形するエラスティ・ウーマン、64の人格を持つクレイジー・ジェーン(みんな設定のクセが強すぎる?この後じっくり紹介するよ)、そして『ジャスティス・リーグ』でもお馴染みのサイボーグだ。彼らが集まった街に「穴」が開き、あらゆるものが呑み込まれる。喋るゴキブリも飲み込まれる。そこにチームの父親役である「チーフ」も呑まれて行方不明に。残ったメンバーが「穴」の中に入る方法を探ったところ、街にいたロバの喉が「ドア」になっていると判明。リタが身体を溶かしてロバの喉奥に流れ込むと、その体内には悪夢的な異世界が広がっていた……。「なんじゃそりゃ!面白そうだ」と感じたアナタ。本シリーズはその期待のナナメ上をぶっ飛んでいくこと間違いなし。是非、この“沼”にダイブしていただきたい。

本シリーズはエピソードを追うごとに、さながら“エグい『不思議の国のアリス』”な世界観が展開されていく。「一体、どうやったらこんな設定やビジュアルが思いつくんだ」というイカれっぷりは、次第に快感すら覚えるだろう。その一方で、キャラクターたちの人間ドラマが意外としっかりしているからこそ、可笑しくも見応えのあるドラマに仕上がっている。それは、“しくじり”の過去を持つ彼らの、魂の救済と贖罪の物語であるという点だ。それでは、「ドゥーム・パトロール」のイカレたメンバーのご紹介といこう。

「ドゥーム・パトロール」しくじりメンバーたち

クリフ・スティール/ロボットマン

ドゥーム・パトロール シーズン1
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元人間のロボット。レース界のスターだったクリフは、妻を裏切って家政婦と不貞しまくっていた。ある日事故で瀕死状態となり、唯一残った「脳みそ」だけをロボットに移植されて誕生した哀しきブリキ男である。自分がロクデナシだったせいでこんな身体になってしまったことを後悔するクリフ。家族を失ってしまったことを悔やみ、人生をやり直したいと願うも、ロボットの身体では涙を流すこともできない……。戦闘になるとパワースタイルで大暴れ。相手の身体を引き裂いたり、壁に叩きつけたりと容赦ない。

演じているのは、なんと『ハムナプトラ』シリーズのブレンダン・フレイザー。近年は出演作も多くなかったから非常に貴重だ。劇中では主にロボット姿だが、フラッシュバックのシーンなどで素顔の登場も意外と多いので、ファンもご安心を。

ラリー・トレイナー/ネガティブマン

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米空軍の元花形パイロットで、あのマーキュリー計画の最終選抜候補にも残った英才だ。宇宙空間を飛行中、謎のエネルギー体に遭遇し、“何か”が身体に宿って気絶。制御を失った機体は地上に墜落して大事故に。ラリーの全身は焼きただれたが、“何か”の神秘によって一命は取り留めた。以来ラリーは、全身火傷を包帯で隠した、ミイラのような男“ネガティブマン”となる。

ラリーには妻と子供もいたが、パイロット仲間の男と肉体関係を持っていた。劇中ではラリーの体内に宿る別人格と主導権の取り合いになることもあり、マーベル「ムーンナイト」のような描写も。

演じるのは、これまた人気俳優のマット・ボマー。ドラマ「ホワイトカラー」(2009-2014)で海ドラファンにはお馴染みだろう。ボマーもブレンダン・フレイザー同様に覆面キャラだが、ドラマティックな素顔の場面も多く登場する。

リタ・ファー/エラスティ・ウーマン

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1950年代に映画女優として活躍したリタは、批評家たちもお気に入りのニューカマーだった(ゴールデン・グローブ賞にもノミネートされたらしい)。ただし傲慢な性格で、現場のクルーは手を焼いていたようだ。ある時アフリカでのロケ撮影中、リタは奇妙なガスを吸い込んでしまう。以来、身体がスライムのようにドロドロに溶けてしまう不気味な体質に。精神が乱れると体がブヨブヨになってしまうリタは、メンタルコントロールの術を身に付けなければならなくなる。映画女優としての美貌と栄光を失ったリタは表社会から姿を消し、自らと同じように落ちぶれた者たちの中に居場所を見出すように……。レトロキュートな魅力が華やかなリタ。しかし、意志に反して身体の一部が溶け出してしまう姿はおぞましく強烈だ。

クレイジー・ジェーン

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過去のトラウマから、特殊能力を持つ64の人格を宿らせる少女。ある意味最強だが、人格をコントロールできないので要注意。主人格はジェーンという人の良いキャラクターだが、気性が荒いムカつく性格のハンマーヘッドなど、異なる人格が次々と顔を出す。発した言葉が刃物になったり、テレポート能力があったり、火炎放射能力があったりと、まるでスーパーパワーのガチャガチャだ。時にメンバーの支えになり、時に場を乱すワイルドカード。

サイボーグ/ビクター・ストーン

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映画『ジャスティス・リーグ』でもお馴染みのハイテクヒーロー。映画と同じくビクター・ストーンだが、本シリーズは別ユニバースの物語なので別人だ。研究所で発生した爆発事故で大怪我を負ったビクターは父親にサイボーグの身体に改造されるのだが、そこで記憶を改ざんされたのではないかとの疑念を抱いている。映画でも描かれたように、様々なサーバーシステムにアクセスしたり、体の一部を兵器に変えたりして戦う。本作でのビクターはもっと若く無鉄砲で、ヒーローになるべく奮闘しているような印象だ。

チーフ/ナイスル・コールダー

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天才科学者で、はみ出しものメンバーたちに居場所を与える父親的存在。物語の序盤で不在となり、一同はチーフを探す旅に出ることとなる。しかし、ストーリーが進むごとにチーフに関する謎が明るみになっていき……。

演じているのは、なんと『007』4代目ジェームズ・ボンドであるイギリスの大御所俳優、ティモシー・ダルトン。ポップでクレイジーな作風の本作をグッと引き締めている。

トラウマに向き合う、はみ出しものたちの必見ドラマ

お気づきの方も多いと思うが、メンバーの多くは「事故」によって身体に異変が起きている。それも、およそ「スーパーパワー」とは呼び難いシロモノが身についてしまったというのも特徴的だ。

マーベル・DC問わず、アメコミ作品では事故がきっかけに物語が始まることが多い。たとえばスパイダーマンやハルク、ファンタスティック・フォーなどは事故がきっかけでスーパーパワーを得ているが、彼らは(いろいろ割愛して言えば)ヒーローとして立派に活躍している。一方で、ノーマン・オズボーン、ジョーカーやトゥーフェイスなど、事故はスーパーヴィランを生み出すこともある。あるいはDr.マンハッタンのような人智を超えた存在だ。

ドゥーム・パトロールの面々も、主に事故によって誕生してしまった、社会に受け入れられないはみ出しものたち。しかし彼らは悪行に走ることなく、互いに励まし合い、自らが起こした騒動を片付けに行く。そこがドゥーム・パトロールの愛おしいところだ。彼らはそれぞれ「こんなはずじゃなかったのに」という念を抱きながら、それでも騒動に決着をつけるために不思議な冒険へ挑んでいく。それぞれに同情や共感の余地があり、視聴者は気付けば親しみを抱くようになるだろう。視聴者からは「まさか泣かされるとは」という声も挙がっているほどだ。

ドゥーム・パトロール シーズン1
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米Colliderは「『ARROW / アロー』『THE FLASH / フラッシュ』ではスーパーヒーローの生活が私生活に与える影響に焦点を当て、MCUではヒーローたちのトラウマを描くようになった今、『ドゥーム・パトロール』はトラウマや哀愁、その核心を描いている」と称賛。同じように、「伝統的なスーパーヒーローグループものというより、トラウマを抱えた家族のような、風変わりなキャラクターの物語だ」と評する米Vultureは、特にネガティブマン/ラリーの描写を絶賛している。自身も同性パートナーと結婚しているマット・ボマーが演じるラリーは、典型的なアメリカン・ヒーローとしての私生活の裏で、同性愛のセクシャリティを隠し、受け入れることができずにいるという複雑なキャラクター。Vultureはこのストーリーラインを「啓示的」と言い表し、「質感と熱量を帯び、政治的にも描かれたクィア・キャラクターの描写を観たのは初めてだ」「私たちの世界に対して意義があり、衝撃的」と絶賛している。

ドゥーム・パトロール シーズン1
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奇妙な世界観の中で、各々の壮絶なトラウマに対峙しながら、擬似家族として支え合うキャラクター描写が評価され、米Rotten Tomatoesでは批評家スコア96%、観客スコア79%という愛されっぷり(本記事時点)。アメコミ作品としてのアクションや小ネタももちろん見どころだ。唯一無二の魅力をタップリ、ドップリお楽しみいただきたい。

ドゥーム・パトロール

「ドゥーム・パトロール <シーズン1>」は2022年4月20日(水)ダウンロード販売・デジタルレンタル・DVD発売・レンタル開始。

DVDコンプリート・ボックス(3枚組)価格:¥12,000 (税込)

発売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
販売元:NBC ユニバーサル・エンターテイメント

参考:Collider,Vulture

Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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