『DUNE/デューン』巨大生物サンドワームに体現された「知性」とこだわり抜いたデザイン【会見レポ3】

『メッセージ』(2016)『ブレードランナー 2049』(2017)などで知られるドゥニ・ヴィルヌーヴ監督が新たに手がけるスペクタクルSF映画『DUNE/デューン 砂の惑星』が、2021年10月15日(金)に公開される。これに先がけ、日本の媒体のみが参加を許された、ヴィルヌーヴ監督と主演のティモシー・シャラメによる記者会見が開催された。
『DUNE/デューン』は、ヴィルヌーヴ監督が満を持して手がけるSF超大作。フランク・ハーバートによる同名小説に基づき、名家の後継者として砂の惑星デューンを治めていくことになる少年ポール・アトレイデスの成長譚が描かれる。
THE RIVERでは、この会見の模様をテーマ/トピックごとに整理し、計5回の連載でお届けしていく。製作における舞台裏やプライベートな話も含め、2人はバラエティに富んだ内容を語ってくれた。
▼ 『DUNE/デューン』日本向け記者会見の記事
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第3回は、本作において陰の主人公とも言える巨大生物サンドワームについて。ヴィルヌーヴ監督は製作当時を振り返りながら、サンドワームに込められた存在意義を説明している。
「神との遭遇を果たしたかのような」感覚
サンドワーム(砂蟲)とは、フランク・ハーバートによる原作小説でも大きな存在感を放つ巨大生物で、又の名として“砂漠の主”、“永遠の老父”とも呼ばれている。砂漠深奥部では全長400メートルにも及ぶと言い伝えられるサンドワームは、物語の舞台である砂の惑星アラキスに存在する砂の大部分を創造したとされ、そこに住まう自由民族フレメンからは神のように崇められている。
そんなサンドワームは本作でどう描かれるのか。ヴィルヌーヴ監督は「サンドワームの存在が意味しているのは、ひとつに“知性(Intelligence)”です」と語る。「人間とはまた違った形の知性で、生々しく、自然と完全に調和したようなものを象徴しているんです」。
小説では、“サンドワームを手懐けた者こそ覇権を握る”と言わんばかりに、サンドワームの重要性が説かれている。先の発言でヴィルヌーヴ監督は“Intelligence”という単語を用いていた。この単語には知性という意味のほかにも、物事の真理を認識する“叡智”、道理を判断する“知恵”といった多義的な意味が包含されており、まさに過酷な環境でのサバイバルが求められるアラキスで頂点に立つサンドワームの存在を集約するのにぴったりな言葉である。
このある種神格化された生き物を映像化するにあたり、ヴィルヌーヴ監督がこだわったのはリアリティ。「とにかくリアルに感じられるものにしたかった」と語る監督は「(原作者の)ハーバートと同じく、環境との関係性においてフィットするような生き物を造形することを心がけました」と意識の力点を説明する。
「恐ろしくもあり、同時にスピリチュアルな存在でなくてもいけなかったんです。サンドワームと出会った人間が神との遭遇を果たしたかのように感じるような存在に描きたかったんです。同時に、他の時代からきたような、何百万年も前からずっと進化してきたような生き物だと想像しながらデザインに努めました。水が不足している厳しい環境のなかで生存してきた、そういった生き物はどんな存在なのだろうか、と想像したわけです。」
予告編でも、登場人物たちとサンドワームの遭遇の一端が垣間見られる。映し出されるのはわずか数秒だが、畏敬の念を抱かざるを得ないような神秘さを感じることができるはずだ。この不思議な存在感を放つサンドワームのデザインについて、監督は「触覚のようでもあり刃のようでもある鯨ひげのようなものが見られると思うのですが、目のようにも見えるデザインが浮かんだ時には、“これだ”と思いました」と大発見の瞬間を語ってくれた。
サンドワームに馴染みがない方でも、『DUNE』が影響を与えたとされるスタジオジブリ作品『風の谷のナウシカ』(1984)に登場するオーム(王蟲)を想像するとイメージしやすいだろう。同作では、オームをはじめとする生物によって成り立っていた生態系と、破壊することで文明を発達させようとする一部の傲慢な人間の関係性に焦点が当てられ、生態系から人間に下された天罰も描かれた。『DUNE/デューン』でヴィルヌーヴ監督がサンドワームに込めたテーマもやはり、自然と人間の“共生と調和”という根本的な問いであるはずだ。
第4回では、【主演のティモシー・シャラメが語るヒーロー像】をご紹介する。
映画『DUNE/デューン 砂の惑星』は、2021年10月15日(金)全国公開。