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『DUNE/デューン』映画化は「適応か死か」の極限状況、ヴィルヌーヴ監督の命がけの覚悟とは【会見レポ5】

DUNE/デューン 砂の惑星
©2020 Legendary and Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.

『メッセージ』(2016)『ブレードランナー 2049』(2017)などで知られるドゥニ・ヴィルヌーヴ監督が新たに手がけるスペクタクルSF映画『DUNE/デューン 砂の惑星』が、2021年10月15日(金)に公開される。これに先がけ、日本の媒体のみが参加を許された、ヴィルヌーヴ監督と主演のティモシー・シャラメによる記者会見が開催された。

『DUNE/デューン』は、ヴィルヌーヴ監督が満を持してのSF超大作。フランク・ハーバートによる同名小説に基づき、名家の後継者として砂の惑星デューンを治めていくことになる少年ポール・アトレイデスの成長譚が描かれる。

THE RIVERでは、この会見の模様をテーマ/トピックごとに整理し、計5回の連載でお届けしていく。製作における舞台裏やプライベートな話も含め、2人はバラエティに富んだ内容を語ってくれた。

連載を締めくくる第5回では、映画における原作小説の存在と、その影響を掘り下げていく。

「適応か死か」、夢を実現するために監督が決めた命がけの覚悟

ヴィルヌーヴ監督がSF作家フランク・ハーバートによる壮大な冒険譚に出会ったのは少年時代。カナダ出身の監督は、隣国アメリカから渡ってきた本書に夢中になり、主人公ポールへの共感を覚えたのだという。「子どもの頃に原作を読んだ時、主人公のポールに自分を重ねました。彼が抱えている憂うつや孤独、彼がアイデンティティーを見つけていくその旅路には特に共感して。自分にとってのホームを、知らない土地で見つけていくという彼の道のりがとても美しく感じたんです」。

ヴィルヌーヴが映画監督としての道を歩んでいく間、遠いハリウッドでは『DUNE/デューン』も注目を浴びるようになり、1984年にはデヴィッド・リンチ監督によって映画化。このほかテレビドラマなども製作されたが、さすがは“映像化が最も困難なSF小説のひとつ”と言われるだけあり、いずれの作品からも前向きな評価は聞こえてこなかった。

一方、ポールが見知らぬ土地アラキスに足を踏み入れたように、ヴィルヌーヴも映画監督として故郷のカナダからアメリカへと進出。『プリズナーズ』(2013)や『ボーダーライン』(2015)などのミステリー/スリラーから、『メッセージ』『ブレードランナー 2049』といったSF超大作までを手がけ、ハリウッドに存在感を示していった。そして遂に、長年の夢であった『DUNE/デューン』と真っ向から向き合うことを決断したのだ。

「原作小説を脚色できたのは夢が叶ったような思いですが、この旅はまだ最初の1ページにすぎません」。こう語るヴィルヌーヴ監督は、「音楽のハンス・ジマーが、“自分がずっと前から持っていた夢を実現させるのは危険なことでもあるんじゃない?”とおっしゃっていたのを覚えているのですが、まさにそのようにも思いました。簡単なことではありませんでした」と苦労を打ち明ける。「すでに存在するものを脚色するのはすごく大変なことで、映画的体験として『DUNE/デューン』をどう映像化すれば良いのかには頭を抱えました。まるで映画学校に戻ったような感覚でした」。

ハーバートが思い描いた世界観を映像で表現することは、ヴィルヌーヴ監督にとってまさに“命がけ”の作業であった。いわく、「脚本の表紙に“適応(=脚色)するか死か(Adapt or Die)”という一文を書いた」というのだ。

『DUNE/デューン』を作るにあたって、僕は間違いなく適応していきました。映画作家としても進化しなければいけませんでしたし、こんなに学んだ映画体験はなかったと思います。生き延びるためには自分の中の境界を多く乗り越えていかなければいけなかったんです。

ヴィルヌーヴ監督は、会見でのコメントに物語をなぞらえてしまうほど、頭の中は『DUNE/デューン』一色のようだが、製作時にはキャストやスタッフへの原作小説の“布教”に努めた。監督は「彼らには最初から、この原作がバイブルになると伝えました」と振り返る。このお達しには、本作の要である主演のティモシー・シャラメも真摯に受け止めた模様。ティモシーは、会見の場で「豊かでディテールに富んだ原作があって、ポールというキャラクターについても事細かく描写されています。ドゥニはバイブルと呼んでいましたが、それくらいの情報が原作には詰まっています」と語っている。

「僕たちのゴールは原作に忠実になるということでした。なのである意味、限界がある中での取り組みになりましたが、役に対して重要視したのはポールの成長です。彼は大人になるまでにほかの人と同じような経験をしていくんですけど、その中で彼は成長していく。そこを意識していきました。」

ヴィルヌーヴ監督が全身全霊を捧げた『DUNE/デューン』。数十年前に思い描いたヴィルヌーヴ少年の夢がいよいよ現実のものとなる。我々ファンの役目は、劇場の大スクリーン上で思う存分に語られるヴィルヌーヴ監督の“原作小説への覚悟”を受け止めることにある。

5回の連載は本記事をもって終了するが、記者会見の場で語られたことはまだまだ盛りだくさん。THE RIVERでは同様の連載を近々予定している。お楽しみに。

映画『DUNE/デューン 砂の惑星』は、2021年10月15日(金)全国公開。

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SawadyYOSHINORI SAWADA

THE RIVER編集部。宇宙、アウトドア、ダンスと多趣味ですが、一番はやはり映画。 "Old is New"という言葉の表すような新鮮且つ謙虚な姿勢を心構えに物書きをしています。 宜しくお願い致します。ご連絡はsawada@riverch.jpまで。

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