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すべてのパズルのピースが揃う5時11分に起こる衝撃に備えよ!映画『イレブン・ミニッツ』レビュー

1991年の『30ドア 鍵』以来、17年ぶりの監督復帰作となった2008年の『アンナと過ごした4日間』で東京国際映画祭審査員特別賞を受賞し、続く2010年の『エッセンシャル・キリング』でベネチア国際映画祭審査員特別賞、ヴィンセント・ギャロが主演男優賞を受賞したポーランドの巨匠イエジ-・スコリモフスキ監督。

彼が製作、脚本を手掛けて5年の歳月を経て完成させた最新作がリアルタイムサスペンス『イレブン・ミニッツ』だ。

物語は5時から5時11分までと限られた時間の中で、リチャード・ドーマー演じる映画監督を始めとする、大都会に暮らすいわくありげな人々の姿が、監督初の群像劇として描かれていく。同じ場面でもキャラクターそれぞれの別視点から描いたりするなど、スコモリフスキ監督はまるでバラバラに散らばったパズルのピースをひとつひとつ合わせていくように展開させていく。

監視カメラやWebカメラ、カメラ付き携帯、CGなど、さまざまなメディアのテクニックや、ローアングル、俯瞰、スローモーションなどの映像、バイクの疾走音やジェット旅客機の爆音など、都市空間ならではの音を駆使し、昨今のわかりやすい映画とは一線を画すような独特の世界が繰り広げられる。
一見、まるで関係ない人々がある種の力によって吸い寄せられ、5時11分に待ち受けているであろう出来事に集約されていく。これぞまさに群像劇としての面白さ。そして最高の不条理劇として観る者の心に何かを残すことは間違いない。その衝撃は映画を実際に観てもらって体験していただくのが一番いいだろう。

上映時間81分という短さながら、まるで大作を観終わったような感覚になるはずだ。 今年で御年78歳のスコモリフスキ監督。観客の感性に切り込んでくるその挑発的な作風はまだまだ衰えを知らないようだ。カンヌ、ベネチア、ベルリンという三大国際映画祭の主要賞を制覇したポーランドの巨匠が次に何をやってくれるのか。映画ファンならずとも次作を期待せずにはいられない。

Writer

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masashiobara小原 雅志

小学館のテレビ雑誌『テレパル』の映画担当を経て映画・海外ドラマライターに。小さなころから映画好き。素晴らしい映画との出会いを求めて、マスコミ試写に足しげく通い、海外ドラマ(アメリカ、韓国ほか)も主にCSやBS放送で数多くチェックしています。

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