ヘンリー・カヴィル&ミリー・ボビー・ブラウン出演のシャーロック・ホームズ映画、コナン・ドイル財団に訴えられる

「ストレンジャー・シングス」(2016-)のミリー・ボビー・ブラウン主演、ヘンリー・カヴィルがシャーロック・ホームズを演じるNetflix映画『エノーラ・ホームズ(原題:Enola Holmes)』が、小説『シャーロック・ホームズ』シリーズの権利を管理するコナン・ドイル財団に訴えられた。米The Hollywood Reporterなどが報じている。
本作はシャーロックの妹エノーラを主人公とする、作家ナンシー・スプリンガーによる推理小説『エノーラ・ホームズの事件簿』の映画版。才能あふれる若き探偵エノーラが、16歳の誕生日に姿を消した母親を探して難事件と陰謀に迫る物語だ。2020年6月24日(米国時間)、コナン・ドイル財団は米ニューメキシコ州の裁判所に訴状を提出。Netflixや製作のレジェンダリー・ピクチャーズ、原作者ナンシー・スプリンガー、出版社ペンギン・ランダム・ハウスなどを相手取って、本作は著作権と商標の侵害だと主張した。
まずは現在、コナン・ドイル財団が『シャーロック・ホームズ』シリーズの権利をほぼ失っていることを押さえておこう。1887年から1927年にかけて、ドイルはシャーロック・ホームズの短編小説を56本、長編小説を4本執筆している。しかし2014年の裁判にて、1922年までの作品はすべてパブリックドメインであり、すでに財団は権利を持たないという判決が下されているのだ。1923~1927年に執筆された10作品の権利は財団にあるが、こちらも米国での著作権は2023年に消失予定となっている。
今回の訴えにて、財団側は、『エノーラ・ホームズ』でヘンリー・カヴィルが演じているシャーロックの性格が著作権侵害だと主張している。原作者のドイルは第一次世界大戦中に相次いで家族を失っているが、これが、財団が権利を有する10作品のホームズ像に影響を与えたというのだ。「ホームズは合理的で分析的なキャラクターではなく、人間らしくなる必要があった。人間との繋がりや共感が必要になった」とは財団の説明。『エノーラ・ホームズ』に登場する“温和なシャーロック・ホームズ”は10作品のホームズ像と一致する、すなわち財団の所有する権利を侵害している、というのである。
本件の争点は、小説の内容や要素ではなく、登場人物の性格や印象について「著作権の侵害」と呼ぶことができるかどうかであろう。あるいは、『エノーラ・ホームズ』が『シャーロック・ホームズ』にインスパイアされたオリジナル作品と理解されるか、それとも財団が権利を有するドイル作品の派生物として理解されるのかもポイントになるかもしれない。
なおコナン・ドイル財団は、2015年、イアン・マッケラン主演『Mr.ホームズ 名探偵最後の事件』に対しても、ホームズの人物造形が1923~1927年の作品に似ているとして、配給のミラマックス社を相手取った訴訟を起こしている。ただし、当時の訴えは数ヶ月後に退けられた。
Sources: The Hollywood Reporter, Deadline, Variety