『ファンタスティック・フォー』リブート版監督「いま思えば降板すべきだった」スー・ストーム役に黒人女優の起用却下、脚本から編集までトラブル相次ぐ

2015年製作、『ファンタスティック・フォー』リブート版を手がけたジョシュ・トランク監督が、当初、スー・ストーム/インビジブル・ウーマン役に黒人女優を起用しようとしていたことがわかった。米Geeks of Colorのインタビューにて本人が語っている。
『ファンタスティック・フォー [超能力ユニット]』(2005)『ファンタスティック・フォー:銀河の危機』(2007)からキャスティングを一新した2015年版は、ジョニー・ストーム/ヒューマン・トーチ役として、のちに『クリード』シリーズや『ブラックパンサー』(2018)に出演するマイケル・B・ジョーダンを起用。しかしトランク監督は、もともと「黒人のスー・ストーム、黒人のジョニー・ストーム、黒人のフランクリン・ストームというアイデアに強い興味があった」という。
「舞台裏ではそういう議論がたくさんありましたよ。[中略]だけど大作映画でスタジオと仕事をしていると、どの大スターに演じてもらうかということに誰もが関心を持っている。“マーゴット・ロビーがやってくれるかも、あの人はどうだろう”みたいにね。結局、スーに黒人女優をキャスティングすることには猛反対を受けました。」
結果的にスー・ストームにキャスティングされたのは、『オデッセイ』(2015)などのケイト・マーラだった。もともと監督がファンタスティック・フォーに有色人種の俳優を起用したいと考えたのは、人種的に多様なロサンゼルスにて自身が生まれ育ったため。米Polygonでは「白人のヒーローは見慣れていたけれど、黒人の友達には黒人のヒーローがいるべきだ」と考えていたこと、「自分に力がある時にはシステムを少しくらい変えられるかも」との狙いがあったことが明かされている。その結果がマイケル・B・ジョーダンの抜擢だったのだが、当時はキャスティングに激しい批判も寄せられ、監督は殺害予告さえ受けていた。撮影期間中、監督は枕元に拳銃を置いて眠っていたという。

リブート版『ファンタスティック・フォー』は、公開後、厳しい評価を受け、興行的にも芳しい成績を収めることができなかった。その背景に、監督とスタジオの間に起こった製作トラブルがあったことはよく知られている。そもそもトランク監督は、脚本家のジェレミー・スレイターと最初から意見が合わずに対立していた。脚本が完成せぬまま撮影は開始され、出演者との衝突も伝えられている。20世紀フォックスは作品の仕上がりに納得せず、再撮影・再編集を要求。監督によると、プロデューサーのサイモン・キンバーグらが自身の執筆した追加脚本をもとに再撮影を仕切り、編集者のスティーヴン・リフキンが「事実上の監督」として編集作業を担当。監督は「イエス」と言うだけの仕事になっていたとされる。
現在、トランク監督は「今になって振り返れば、降板すべきだったと思います。あれは自分が大切にしている価値観ではなかったから」と話している。しかし監督にとって最大の後悔は、プロジェクトを離れなかったことではなく、問題をきちんと解決しなかったことだったようだ。
「僕は自分の信じるものを支持するし──たとえそれでキャリアが終わってしまうとしても──いつも話し合うようにしています。だから、問題についてきちんと話し合わなかったことを後悔しているし、それが失敗だったと思う。けれど、あれはおかしな状況だったし、運も悪かったから、他にどうすればよかったのかはわかりません。[中略]だけど、僕はすごく落胆していた。後悔があるとすれば、自分には後悔がないかのように、たくさん話をしてきたことだと思います。」
Source: Geeks of Color, Polygon, ComicBook.com