【解説】『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』なぜハンは復活するのか ─ 監督「決して軽く考えていない」

人気シリーズ『ワイルド・スピード』第9作、『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』の予告編映像が公開となった。映像の最後には、死んだはずの人気キャラクター、ハンがカムバックを果たしており、ファンの間で大きな話題となっている。
一体、なぜハンは復活するのか。『ワイスピ』シリーズにおけるハンの運命を振り返りながら、ハンを演じたサン・カン、『ジェットブレイク』ジャスティン・リン監督の言葉を見てみよう。
『ワイスピ』ハンは死んでいたはず
ハンは、『ワイルドスピード MAX』(2009)、『ワイルド・スピード MEGA MAX』(2011)、『ワイルドスピード EURO MISSION』(2013)で活躍した人気キャラクター。ファミリーのメンバーとしてはシリーズ唯一のアジア系である。天才的なドライビング・テクニックや、常にスナック菓子をつまむ飄々としたキャラクター性が人気を博した。劇中では、ガル・ガドット演じるジゼルと恋に落ちる。

©Universal Pictures
公開年は逆流するが、物語の流れとしては『ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT』(2006)で東京・渋谷のスクランブル交差点付近にて何者かの車に激突され、車体が爆発炎上。車内に取り残されたハンもそのまま死亡したものとして、『ワイルド・スピード SKY MISSION』(2015)ではファミリー一同がハンの葬儀に参列する場面もある。『ワイルドスピード EURO MISSION』では、その犯人がジェイソン・ステイサム演じるデッカード・ショウであることが判明する。
ハンの死は、ファミリーにとって悲劇的な別れとなったはずだが、シリーズはその後少々意外な展開を迎える。ハン殺害の実行犯であるはずのデッカード・ショウが、ファミリーに迎え入れらるのだ。さらに、ショウを主役のひとりとしたスピンオフ映画『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』(2019)まで製作される。こうした姿勢に疑問を覚えたシリーズのファンは、ハッシュタグ「#JusticeForHan」を通じて、「ハンに正義を」と訴えてきた。
ハン、まさかの復活
そのハンが帰ってきたのだ。復帰を伝える公式ティーザーイメージに掲げられた「Justice is Coming」とは、ファンの声「Justice For Han」に応えるものである。
Justice is coming. Get your tickets for #F9 now – in theaters May 22! https://t.co/W9rR5NgTOH pic.twitter.com/xzmRgjdHc9
— #F9 (@TheFastSaga) 2020年1月31日
予告編映像が世界初解禁となった米マイアミ開催のワイルド・スピードのコンサート・イベント「The Road to F9」では、ハン役サン・カンとステージを共にしたドム役ヴィン・ディーゼルが「これがファミリーだ!」と宣言、サン・カンも「帰ってきたよ!」と叫んだ。観客からは「ウェルカム・バック!」のコールが上がる一幕もあり、どこからか「Justice For Han!」という声も響いた。
「感動的ですね。ファミリー再会って感じ。」サンはこのイベントで、米Los Angeles Timesに語っている。「僕の人生の中でも、前回の『ワイスピ』から欠けていた絆のように思います。」
サン自身も、ハンを葬ったデッカード・ショウの仲間入りには疑問を抱いていたという。「ショウが登場して、彼が殺しの犯人だったことが判明したのに、ファミリーの中に招待されていったのを見た時には…、“本当にこのキャラクターへの敬意があるんだろうか?”と思いましたよ。」
奇しくも、ハンの復帰とジャスティン・リン監督の復帰は『ジェットブレイク』で同期することとなった。「僕たちは、ハンが誰で、何者であるかを分かっています」とサンは語っている。「僕たちも年を重ねた。ハンも年を重ねました。自分たちの私生活で学んだようなことが、スクリーンに活かせられていたら嬉しいです。」予告編では、すっかり丸くなった雰囲気のハンに会えるが、その魅力も円熟したということか。
「僕自身、あのキャラクターには個人的な思い入れがあるんです。」『ジェットブレイク』でハンを復帰させたジャスティン・リン監督は、英Entertainment Weeklyに解説する。「正直な所、僕たちがやり始めたころは、『ワイスピ』ファンのコミュニティも今ほどじゃなかった。僕は、観客との繋がりは、どんなものでも守りたいと思っています。たまに、続編があることを当たり前のように思う人もいるでしょう。続編は勝手に作られるものだと。でも僕は、なんとしても続編にこぎつけたいといつも考えています。だって、ハンとの旅を続けたいから……。」

ここではジャスティン監督からも、「Justice For Han」に呼応するような思いが語られている。
「僕が(シリーズを)去った時、これは適切なことだと思いましたし、キャラクターたちを寝かしつけるような感じでした。でも、僕にとってどうしても解せないことが、いくつか起こった。だから、もし自分が戻るなら、どうしてそうなったのかを掘り下げたかったんです。彼を復帰させて、今までのようにテーマを探求する。それは、僕たちにかかっていると思います。」
死んだと思われたハンの復活劇を目の当たりにして、ファンの間では「もう『ワイスピ』は何でもありだ」とする声も聞こえてくる。しかしジャスティン監督は、「この世界では、出来事には理由があるものだ」と語る。「詳しい話はできませんが、僕は彼の復帰を、決して軽く考えてはいません。というか、大変なことでした。ありがたいことに、このユニバースは本当に成熟してくれましたし、だからこそ僕たちも進化することができた。先に進むごとに、自分たちを再定義することができるんです。」
サン・カンからは、ハン復帰の理由について、ほんのりとヒントも明かされている。全てはシリーズのテーマである「ファミリー」に紐付いているというのだ。
ハン復活という衝撃的なサプライズが待っていた『ジェットブレイク』初映像だが、まだまだお楽しみがありそうだ。ジャスティン・リン監督は「あの予告編には入っていないものが、まだまだ沢山ありますよ」と、楽しみな予告も残している。
『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』は2020年5月29日(金)全国超拡大公開。