『ファンタビ』監督、ジェイコブとクイニーは「シリーズの魂」 ─ 日本・記者会見レポ後編

『ハリー・ポッター』魔法シリーズ最新作『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』が、2022年4月8日より日本公開となる。
3月28日には都内で「ライトアップ・ファンナイト」が開催され、ニュート役のエディ・レッドメイン、ダンブルドア先生役のジュード・ロウらがオンラインでファンの前に登場していたが、このイベントの直後、キャスト陣一同とのバーチャル記者会見が開催されていた。
ジュード・ロウ(ダンブルドア役)、マッツ・ミケルセン(グリンデルバルド役)、エディ・レッドメイン(ニュート役)、ジェシカ・ウィリアムズ(ユーラリー役)が登場した前編に続いて、ダン・フォグラー(ジェイコブ役)、アリソン・スドル(クイニー役)、デイビッド・イエーツ(監督)の3名グループで行われた会見の様子をお届けする。
『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』記者会見
ダン・フォグラー、アリソン・スドル、デイビッド・イエーツ監督
──ダンブルドアとグリンデルバルドという、かつて恋愛関係にあった二人の対峙をどのように演出しようとしたのですか?劇中で、彼らのシーンは二人だけの世界になるのが印象的でした。
デヴィッド・イェーツ監督:僕たちはカノン(正典)の問題に対処しようとしていたんです。ダンブルドアとグリンデルバルドの全体的な関係は、ジョー(J・K・ローリング)のハリー・ポッター全体のストーリーのタイムラインでは、二人の最終的な出会い、特に最後の大決闘は、正典の中では本作の後に出てくる。なので、ジョーに「この二人の出会い、また決闘の一部をごく簡単に今作に出したい」とお願いしたんです。彼女のストーリー上では最後に起こる大きな決闘、おそらくこのシリーズの最後の方で起こるだろうと僕は想像していますが、それを盗むということではなく、観客にこの二人の関係をより理解してもらうために、二人を一緒に登場させたかったんです。それを成し遂げるために、映像言語を作り上げたんです。二人が登場するシーンは、周りが消えて、二人だけの世界になる、ということを暗示をするために。
実際のカノン(正典)上では、もっと後に起こるアイディアを尊重するために、ジョーを安心させようと、周りが消えて、二人独自の世界で他の人が見えないところで二人が出会っている、としました。正典上では、この二人の出会いとその関係性や対立は、もっと後に時間をかけて起こります。今作の中での二人の出会いは、本当はもっと後で起こるので、今作では二人だけの世界の中で起こっていることとして描くことにしたんです。

──今回はジェイコブとクイニーの関係に新たな展開が見られます。脚本を読んだ時、どう感じましたか?
アリソン・スドル:二人の関係の展開を見てとても嬉しかったです。リアルに感じられたんです。修復するのは簡単じゃない事ですね。何が起こったか言えませんけど。
ダン・フォグラー:映画は観たの?
アリソン:観ましたよ。でもネタバレできないし……。誰かを愛するって、複雑ですよね。この二人は心の中ではとても愛し合っているんだけど、だからといって人生は物事を容易くしてはくれない。二人よりもっと大きなもの、つまり「偏見」や、魔法使いとそうでない人は一緒になってはいけないという「偏狭さ」に立ち向かっているんです。そこを探るのはいいことだと思います。だって今の世の中での、多くの人がとる愛へのアプローチの隠喩になっているから。それを修復するのはスムーズな道のりではありません。二人の人がそれぞれの道のりにあって、お互いへの愛がまだ存在している、というのはとても力強いことです。
ダン:僕もとても嬉しかったです。第2作目の最後で、彼はとても傷心状態で、彼女が戻ってくることをすごく望んでいた。地平線を見つめて、自分の人生に彼女が戻ってくるチャンスを願っていたんです。
今作のジェイコブには、彼女を取り戻すためという大きな動機があって、冒険に乗り出すのを読んで、とても嬉しかったんです。

──魔法動物の活躍を楽しみにしているファンに、コメントをいただけますか?
監督:ああ、もう色々ありますよ。新しい魔法動物がたくさん登場するしね。今まで、怖い動物は出てこなかったけれど、アークスタークという奇妙に暗くて危険な場所で、マンティコアという生き物と出くわすシーンがあるんです。小さい赤ちゃんマンティコアは可愛くて、おかしくて、危険だけど、でも大きな親マンティコアは危険なんです。
アリソン:すごく怖い(笑)。
監督:そう。今作では初めて、魅力的で可愛いモンスターでなくて、怖いモンスターが登場したんです。モンスターというかビーストだね。今作では、今までよりももっとたくさんビーストが登場するところが気に入っています。

またジェイコブとクイニーの関係が……、この二人はこの映画シリーズの魂だと思っています。観客は、この二人に一番入り込める。ジェイコブはマグルだし、違う種族との愛だから、僕らは二人に勝利し、一緒になってほしいと願うんですね。そこも今作で特に楽しめるポイントだと思います。少なくとも僕にとってはね。
アリソン:この映画にはたくさんのお楽しみがあるんです。クイニー自身が必ずしも楽しんでるわけじゃないけど、映画として楽しめるということで(笑)。危険は大きいけれど、軽快にユーモラスで楽しめて面白い魔法があるし、世界を救うにはあまり適していなさそうな人たちのグループがいてね。
──『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』から数えてシリーズ7本を監督されましたが、当時を振り返って、ここまで続けてこられたお気持ちを教えてください。また監督をされるにあたって心がけてきたことはありますか?
監督:もちろん、シリーズ7作を監督したのは、かなりの旅路でしたね。ジグザクの道のりで。2005年に『不死鳥の騎士団』から始まったんです。とてつもなく尋常でない旅路でしたよ。
この映画シリーズは本当に巨大な製作規模。初めてこのシリーズの撮影セットを経験したのは、『不死鳥の騎士団』が決まった時、『炎のゴブレット』を監督していたマイク・ニューウエルが親切にも撮影現場に招待して案内してくれたんです。プロデューサーのデイビッド・へイマンが「マイクに会いにおいで。彼の現場を見るといい。君はテレビしかやったことがないから、大きな映画のセットで居心地がいいかどうか、みてごらん」と言ってね。リーブスデンの巨大なサウンドステージに足を踏み入れんです。200人くらいの人がいて、マイクが何か指示していて。そこで「なんて巨大なんだ、ワクワクしますね!」と僕が言ったら、誰かに「これはセカンド・ユニットですよ。マイクはちょっと遊びに来ただけ。メイン・ユニットは隣だよ」って言われましたよ(笑)。
それがこの世界への僕の導入でした。このものすごく巨大な映画へのね。でも僕がやろうとしたのは、おそらく僕の前任者たちもやってきたことだと思うけど、なるべくインクルーシブ(包摂的)にすることです。何人かの俳優たちが「これは巨大な映画だけど、そんな感じがしない。インディー映画みたいだ」って言ってくれたことが、僕にはとても誇りです。みんなフレンドリーで、エゴがなくて。やる気に溢れ、すごく慈しみ深く、安心できる環境です。クレイジーに巨大な映画という感じがしない。でも周りと見回すとクレイジーに巨大な映画なんですけどね。
僕はその雰囲気を7作ずっと維持しようと努力してきました。小さい映画とかテレビをやってきたから、そのノリを大きな映画製作現場に持ち込みたかった。だから、いい意味でいつもすごく地に足がついていて、みんな一緒に作り上げて「できるだけ楽しもう!」という感じでした。
それがこれまでの7作の映画を作ってきた旅路の定義になると思います。どの作品も作るのが本当に楽しかったです。

──グリンデルバルドという未来が見える能力を持つ者と戦うため、ニュートたちでさえ全貌を把握しないまま任務に挑みます。観客さえも騙す、混乱させるために意識した演出などがあれば教えてください。
監督:いいですね。この映画には核になるコンセプトがあり、基本的にカウンターサイト(目眩し)と呼ばれています。「目眩し」の原則は、できるだけたくさんの人に、それぞれ個別のプランを渡すというものです。グリンデルバルドは未来が見えるけれど、あまりにも自分の周りでたくさんのことが起こっているので、どの人が本当に危険なのか、少し混乱するんです。それがこの「目眩し」の基本的な考え方です。
ただ、俳優たちには脚本を隠したり、混乱させようとしたりせず、できるだけ明確にしました(笑)。即興したり、遊べるように、全部のストーリーを伝えたんです。つまり「目眩し」はスクリーン上のストーリーの一部であって、スクリーンに映る前のプロセスではない、ということです。
『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』は、2022年4月8日より日本公開。