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マッツ・ミケルセン、『ファンタビ』グリンデルバルドをいかに再創造したか ─ ジョニー・デップの「コピーはしたくなかった」

ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密
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『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』でグリンデルバルド役を新たに演じたのは、“北欧の至宝”マッツ・ミケルセン。2020年11月、前作までのグリンデルバルド役を演じたジョニー・デップが、元妻アンバー・ハードに対する暴力をめぐる名誉毀損裁判に敗訴したことで降板が決定。急遽、後任者として白羽の矢が立ったのである。

ワーナー・ブラザースにもマッツにも、のんびり悩んでいる余裕はなかった。なにしろデップの降板が決まった時点で、すでに本作の撮影は始まっていたのだ。マッツは大急ぎで過去2作を観た後、『ダンブルドアの秘密』の脚本を読み、オファーを受けるかどうかを決断したわけだが、スタジオから与えられた猶予はわずか2日。マッツは脚本の出来栄えを決め手として出演を承諾したが、当時を振り返って「まさにカオスだった」と漏らしている。

デップの跡を継ぐことについて、マッツはとある取材で「すごいプレッシャーだった」と口にした。しかし米The Hollywood Reporterでは、「(デップが)やったことをコピーするのは嫌でした。それは創造的には自殺行為になるから」と強調している。「過去に完璧に演じられた役であっても、自分なりの役柄にしたいし、同時に過去との橋を架けなくてはいけない」。これは2021年5月の時点から、マッツが一貫してこだわってきた“グリンデルバルドの演じ方”だ。

監督のデヴィッド・イェーツら製作陣は、マッツの見た目に合うようグリンデルバルドのルックを大きく変更した。髪型や髪色だけでなく、真っ白だった右眼もほとんど目立たない形で抑えられている。監督のデヴィッド・イェーツは「マッツの演技は非常に幅が広く、恐ろしくも弱くもなれるし、またセクシーでもあります。俳優としての強みを活かしたグリンデルバルドを探っていただきたかった」と語る。「それは必然的に、ジョニーが役柄に取り入れたものから離れていくことでした」。

同時にイェーツ監督らは、グリンデルバルドの変化について劇中で言及しないことも決断した。マッツいわく「(見た目の変化の理由は)世界中の誰もが知っていること。俳優が変わったことに触れてしまうと、イースターエッグのようになりかねないから」。映画はグリンデルバルドとダンブルドアの対面から開幕するが、マッツは「冒頭からみなさんを引き込むことができ、この世界を受け入れてもらえればうれしい」と述べている。

ちなみにグリンデルバルド役を演じるにあたり、マッツは原作・脚本のJ・K・ローリングとは話し合いの場を持っていないとのこと。グリンデルバルドがマグル(人間)を憎んでいる理由を直接聞いてみたかったそうだが、それも叶わなかったという。その代わり、マッツは自分なりに役柄の背景を掘り下げていった。

「(グリンデルバルドを)ただの煽動家にはしたくなかったんです。私が思うに、彼が子どもの頃、家族に何らかの事件が起こり、それから憎しみを抱いて生きているんじゃないか。(ローリングが)夢のような、細やかな、そして複雑な世界を作り上げたわけですから、彼女の意見を聞いてみたいですね。今回だけでなく、もっと演じ続けられることを祈っています。」

以前、マッツは前任者のデップとも「機会があればぜひお話ししたかった」と話していたが、こちらもまだ対面は叶っていない模様。「“どうか話をさせてください”というわけではないですが、連絡が取れるといいですね。たぶん、いずれお会いすることになるでしょう」。

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Source: The Hollywood Reporter

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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