レビュー『FIVE PERCENT MAN』は絶妙なすれ違いとイライラ感、疾走感が面白い!【SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2016上映作品】
展開を読ませない感情が入り混じるストーリー
ドキュメンタリー形式で始まる、スタイリッシュな光景。しかしストーリーは、そんなオシャレな雰囲気とは似ても似つかぬチグハグな展開を見せる。
独立し、注目を浴びる岸田と、常識が抜けているがパワフルで、彼にほぼノーギャラに近い条件で仕事を依頼する山口。
連絡が深夜になったり待ち合わせにやってこない、けれど感情をぶつけてくる山口に対して、岸田はその無茶苦茶な要求に次第にイライラをぶつけていく。
そんなストーリー展開からどう話が落ち着くのか、それがなかなか見えてこないのが今作のもどかしく、そして面白いポイントだ。
結局、どちらが正しかったのだろうか

岸田の意見は至極もっともで、異論の余地はない。独立間もなく吹けば飛んでしまうような岸田にとって、ギャラがほぼないのは致命的な問題だ。
しかし、クライマックスにはそんな岸田の思惑とは対照的な展開が待ち構えている。山口の成功には、ひとえに彼女のパワフルさと周りを巻き込む力が大きな影響を与えていた。
岸田と山口という全く別種の2人。今作ではこの2人を通して、単純な「どちらが正しいか」という問いかけでは計れない、人生における選択の難しさを痛感させられた。
撮影途中で岸田を煽るような口調だったインタビュアー。そんな彼が、まるで岸田をかばうかのように山口の作品の披露試写会では出演者や関係者に、皮肉的なインタビューをして食ってかかる。
ある意味傍観者的な彼の口調の変化に、まるで鑑賞者を代弁しているような気分を味わえるだろう。

ドキュメンタリー撮影シーンで顕著だが、岸田は何かあるごとにかっこいい男を演じようとするのだが、山口との一件のせいで一向にかっこつかず、むしろ短気な一面をさらしてしまう。
むしろ、ちょっと情けない雰囲気さえ漂わせてしまうほどだ。
そんな、キザったらしいのにどこか憎めない役回りを、俳優の高岡奏輔が見事に演じきっている。
山口という、電話越しの存在に振り回されている彼の様子は、思わず1人の男として「そうだ言ってやれ!」と応援したくなってしまった。
だからこそ、山口からの電話という、ある意味人生のターニングポイントを逃しているその様子に、思わず苦笑いが溢れる。彼は結局映画制作者として大成するのか。主人公の作品後の人生まで観たいと思った映画は久しぶりだ。
たった20数分という時間で、様々な感情を想起させ、それらをうまく揺さぶってくれる良作だ。
『FIVE PERCENT MAN』 (C)2016 Koto Production Inc.