アル・パチーノ、『ゴッドファーザー』が傑作になるといつ気付いたのか? ─「コッポラ監督が赤ん坊のように泣いていた」

公開から半世紀を迎えた映画『ゴッドファーザー』(1972)。フランシス・フォード・コッポラ監督の代表作である本作は、不朽の名作として世界中から愛されつづけているが、アル・パチーノはどのタイミングで、“これは素晴らしい作品になる”と気付いたのだろうか?
裏切りと陰謀がはびこる闇社会を牛耳るマフィア、ヴィトー・コルレオーネ(マーロン・ブランド)というファミリーの台頭と、その一大家を継承するマイケル・コルレオーネ(アル・パチーノ)、その家族が辿る壮大な物語を描いた本作。当時の興行記録を更新するだけでなく、アカデミー賞では作品賞・主演男優賞・脚色賞に輝き、批評面でも高い支持を獲得した。
The New York Timesのインタビューにてパチーノは、“これは素晴らしい作品になる”と気付いた瞬間について訊かれたところ、「マーロンの葬儀の場面について覚えていますか?彼を埋葬する時のことです」と返している。これはマーロンふんするヴィトーがトマト畑で孫と戯れる中で、突然の心臓発作に見舞われ、息を引き取った後に描かれる葬式のシーンのことだ。
「日が暮れてきたので、この日の撮影は終了しました。だから、家に帰って酒を呑めることに喜んでいたんです」とパチーノ。「車に戻っていたところ、フランシス・フォード・コッポラ監督が墓石の上に座って、赤ん坊のように泣いていたんです」と撮影裏での巨匠の姿を明かしている。
「激しく泣いていました。そこで彼のそばに行き、“フランシス、何かあったんですか?”と尋ねたんです。そうすると彼はこう返してきました。“もう一度撮影する機会を与えてくれなくて”と。つまり、(製作側から)撮影の許可が出なかったんです。これを聞いて僕は、“これは良い映画になる”と思いました。彼の情熱を感じることが出来たからです。」
『ゴッドファーザー』1作目の製作当時、コッポラ監督は現在のように知名度が高かったわけではなかった。スタジオのパラマウント・ピクチャーズからも監督としての実力に難色を示されていたようで、解雇される寸前だったのだ。
その当時について監督は過去のインタビューにて、「“あなたにやってほしくない理由は、今週末に新しい監督が入るからです”と告げられた」としながら、その回避方法について、「私を追い出そうとしていた人間を即座に全員解雇した」と説明。一進一退が続いたという撮影は、マフィア仕立ての方法と映画への情熱で乗り越えていったというわけである。
Source: The New York Times