【ネタバレ】『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』キングギドラ、別設定も検討されていた ─ 東宝映画への深すぎる敬意

キングギドラ設定、さらに東宝版に忠実な案があった
『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』のキングギドラは、はるか古代に宇宙からやってきて、南極で氷漬けとなって現代まで眠っていたという設定だ。しかしこれは、もともと検討されていたキングギドラの設定とはやや異なる。「やや」というのは、完成版の設定となる以前にもこうした要素は存在したからだ。マイケル・ドハティ監督が検討していたのは、キングギドラの設定を意図的に曖昧にするというアイデアだった。
「最初はもっと解釈の幅を広げていたんです。はじめに執筆し、撮影したバージョンでは、チェン博士(チャン・ツィイー)が“キングギドラは別の星から来たとも、人類によって作られたのだともいわれています”と話していました。いずれの場合も、彼が自然の秩序にのっとっていないことがポイントだった。そこで、最初は“AもBもありうる”としていたんです。」

しかし前述のように、キングギドラの設定は“宇宙からやってきた”というものに変更された。監督は「シンプルに、一つの筋に絞るほうが理にかなっていた」という。
「ファンの多くが親しみ、愛している(キングギドラの)起源は、“我々の世界の外部にいる巨大生物が、大いなる脅威として現れる”というものだと思います。別の世界にルーツがある、というところが愛されていますよね。」

キングギドラが東宝映画に初めて登場したのは、『三大怪獣 地球最大の決戦』(1964)。この映画において、キングギドラは宇宙から隕石とともに飛来し、ゴジラ・モスラ・ラドンとの戦いを繰り広げた。続く『怪獣大戦争』(1965)『怪獣総進撃』(1968)『地球攻撃命令 ゴジラ対ガイガン』(1972)では、それぞれ異星人に操られる宇宙怪獣として登場している。なお『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』で、キングギドラが「モンスター・ゼロ(Monster Zero)」と呼ばれているのは、『怪獣大戦争』のX星人がキングギドラを「怪獣0(ゼロ)」と呼んでいたことに由来するものだ。
平成に入ってから、キングギドラの設定はさまざまに変更されており、『ゴジラvsキングギドラ』(1991)では放射能実験の影響で生まれた怪獣として、『モスラ3 キングギドラ来襲』(1998)では昭和期と同じく宇宙怪獣として、そして『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』(2001)では日本の守り神「護国聖獣」の一体として登場する。『大怪獣総攻撃』では、モスラ・バラゴン・キングギドラ(ギドラ)が“神話・伝承に登場する怪獣”として登場しており、これは本作におけるドハティ監督の怪獣解釈に非常に近いケースだ。
こうした経緯を考えれば、キングギドラという怪獣に与えられてきた歴史すべてを含みこもうとする初期のアイデアは、東宝映画版に最も忠実なものだったといえるだろう。しかしドハティ監督は、あえてポピュラーな設定に回帰することで、キングギドラを初登場と同じ形でハリウッドデビューさせたわけである。
映画『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』は2019年5月31日(金)より全国東宝系にて公開中。
『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』公式サイト:https://godzilla-movie.jp/
Source: Inverse