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【ネタバレ】『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』女王モスラ、怪獣王ゴジラとの関係は ─ デザイン秘話から東宝映画オマージュまで

ゴジラ キング・オブ・モンスターズ
©2019 Legendary and Warner Bros. Pictures. All Rights Reserved.

モスラを新しくデザインするために

『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』でプロダクション・デザイナーを務めたスコット・チャンブリス氏は、「製作過程において、モスラは最もデザイン性の低い怪獣でした」明かしている。デザイナーのダーネル・イソム氏いわく、モスラの初期デザインとして提出されたのは「現代の服装をした双子と、巨大でとてもリアルな見た目の蛾がニューヨークに出現する」というアート。マイケル・ドハティ監督はそのアイデアを気に入らなかったという。

それもそのはず、ドハティ監督は「モスラは第1作目から常に美しかった。それゆえに他の怪獣よりも際立った存在でした」と語っているのだ。「他の怪獣たちが恐怖や恐ろしさを与える一方で、モスラは畏敬の念や驚き、美しさをもたらすんです」。チャンブリス氏も「昔からモスラは女性として描かれていますから、フェミニンな存在感と美しさ、そして強さと激しさを与えたかった」と話した。

したがってモスラのデザインには、他の怪獣たちを上回るほどの試行錯誤が行われた。たとえば毛皮で覆われたような見た目や、まったく毛の生えていないデザイン。アーマーのような、もしくはエイリアンのようなモスラ……。作業を繰り返す中で、モスラの青い目が大きくなり、顔に毛が生えたりと、ゆるやかに完成版のデザインへと近づいていったという。

また本作では、ゴジラやラドン、キングギドラといった怪獣たちが従来よりも巨大になっている。彼らと渡り合うため、モスラも従来より強力な怪獣としてデザインされなくてはならなかった。スタッフは蛾のほか、カマキリやハチといった攻撃的特徴をもつ昆虫もデザインの参考にしたという。今回のモスラが、爪のように鋭い脚を持っているのはそのためだろう。

ただしドハティ監督によると、東宝サイドからは、モスラを描く上である重要な提案がなされていたという。それは“モスラが意図的に誰かを殺すことはない”というルール。「他の怪獣たちが破壊する一方で、モスラは善意の生物。彼女とゴジラは陰と陽、対極の存在なんです」

ゴジラ キング・オブ・モンスターズ
キングギドラさんなんてこうですからね © 2019 Legendary and Warner Bros. Pictures. All Rights Reserved.

怪獣王ゴジラ、女王モスラの関係

“ゴジラとモスラは対極”と語られているように、本作のモスラには、ゴジラとの関係を示唆する要素がしっかりと織り込まれている。女王・女神であるモスラの羽根には、“怪獣王”ゴジラの目を思わせるオレンジの模様が見てとれるのだ。ドハティ監督もTwitterにて、「モスラの模様はゴジラの目を手本にしたもので、これは擬態の一種です。自然界では一般的なこと。モスラはゴジラの旗持ち役で、そして女王なんです」とコメントしている。

では、なぜモスラはゴジラの目に似せた模様を身にまとうことになったのか? これについて監督は「生存のため。それから優しく寄り添うためです」記した

ゴジラ キング・オブ・モンスターズ
©2019 Legendary and Warner Bros. Pictures. All Rights Reserved.

また本作のモスラで重要視されたのは「光を発する」という特徴。ドハティ監督は「母なる自然は多くの生き物に発光する性質を授けています。そこで、モスラがコミュニケーションのために光るのは良いと思ったんです」と述べた。「それが武器になることもあるかもしれませんしね」とも。この特徴もまた、ゴジラとモスラの関係に繋がっているものだ。

映画の終盤、モスラの力を得たゴジラは、『ゴジラvsデストロイア』(1995)の「バーニングゴジラ」を思わせる赤い光を身体から放つ。ゴジラの身体から放射される熱線の形状は、モスラが光をまとって羽根を広げたシルエットを思わせるものだ。ドハティ監督いわく、この状態は一時的なもので、ごく限られた条件が整った時にのみ発動するとのこと。「#共生(#Symbiosis)」というハッシュタグの隣に、モスラを指す絵文字が添えられていることに注目しておきたい。

ゴジラ キング・オブ・モンスターズ
© 2019 Legendary and Warner Bros. Pictures. All Rights Reserved.

東宝映画へのオマージュ

ドハティ監督は、数々の東宝怪獣映画を回想して、「モスラの他の怪獣より魅力的なところは、彼女が輪廻を象徴しているところ」だと語る。

「生きて、死んで、また生まれてくる。あらゆる映画で彼女は自分を犠牲にしているけれども、よくよく考えてみれば、これまで彼女は一度も死んでいませんよね。彼女もそのことを分かっていると思いますよ。」

すなわち本作もまた同じ、ということであろう。カイル・チャンドラー演じるマークは神々しい光をまとったモスラの姿を見ているが、監督によればモスラはあの場面の後、自身の卵を産んでいるのだという。

ちなみにモスラに関連する東宝映画へのオマージュといえば、モスラにまつわる“双子の存在”だ。東宝シリーズに登場する「小美人」の名前こそ直接的には言及されないが、モスラが繭から現れるシーンでは、チャン・ツィイー演じるチェン博士の双子の妹であるリン博士が登場(チャンの一人二役)。また、過去の写真には双子の姉妹がしっかり映っているのである。「小美人は居たし、出ていましたよ。よく見て」とはドハティ監督の言葉だ。

ちなみにモスラに対する小美人の役割は、本作の劇場公開前、エマ博士(ヴェラ・ファーミガ)と娘マディソン(ミリー・ボビー・ブラウン)が役割を担うのではないかと予想されていたが、これは本編であっさりと覆された。ベトナム人の母親をもつドハティ監督は、「オハイオ州で育ったアジア人のハーフとして、双子はアジア人の女優に演じてほしかった」と強調している。「エマとマディソンを現代版の双子ではないかと思う理由はわかりますが、彼女たちの民族性を変える気はなかったんです」

映画『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』は2019年5月31日(金)より全国東宝系にて公開中。

『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』公式サイト:https://godzilla-movie.jp/

キングギドラの頭に個性あり

Sources: EW, NYT

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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