『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』は「科学者たちのヒーロー映画」 ─ トランプ政権時代に科学/科学者を描く重要性とは

あえてこう言わねばならない。ハリウッド版『ゴジラ』シリーズの第2作、『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』は“ヒーロー映画”なのだと。マイケル・ドハティ監督は、前作『GODZILLA ゴジラ』(2014)に続いて登場する特務機関モナークに込めた熱い思いを明かしている。
科学者たちのヒーロー映画
マイケル監督は、『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』のストーリーについて、「前作は主人公が危険をくぐり抜ける物語で、モナークはその背景でした。今回はもっと群像劇に近く、モナークにも焦点が当たっています」と述べている。
この言葉を裏付けるように、本作の登場人物は多くがモナークの関係者だ。少女マディソンの母親である純古生物学者、エマ・ラッセル(ヴェラ・ファーミガ)はモナークの元幹部。その元夫マーク・ラッセル(カイル・チャンドラー)は動物学者。前作から芹沢猪四郎博士(渡辺謙)とヴィヴィアン・グラハム博士(サリー・ホーキンス)も登場するほか、新たに考古人類学者アイリーン・チェン(チャン・ツィイー)も加わる。
マイケル監督はモナークについて、「非道な指針をもった政府の超秘密機関ではなく、人間らしい人々の集まりとして」描きたかったと述べている。
「モナークは怪獣たちの存在や、彼らが意味するものについて非常にポジティブに捉えているんです。科学者たちのヒーローチームなのだという発想もすごく魅力的でした。この作品はマーベル映画ではないので、彼らはメカ・スーツを着ていたり、延々と殴り合えるスーパーパワーを持っているわけではありません。ここでは、きわめて知性的かつ優秀な人々が不可能に挑んでいくんです。」
本作は『GODZILLA ゴジラ』と『キングコング:髑髏島の巨神』(2017)に次ぐ「モンスターバース」の第3弾。マイケル監督は、全作品に登場するモナークという組織について「作品ごとに描き直されている、変化している」と述べつつも、今回は前作を踏まえて「ビジュアル面の決定版を開発したい」と意気込む。そこには、科学者たちをきちんと描くことへのこだわりもあるようだ。
「(モナークの)門戸を開き、カーテンの裏側を少しだけ見せる映画にしたい。だからモナークの司令部や水中基地を見せるんです。利他的な意志と高潔な理想をもった秘密組織は本当に力強いものだと思います。怪獣が発見されたあと、自分たちの居場所について理解しようと努めているわけですから。この作品は、科学者が個人として深みのある人々であること、また彼らがいかにして互いに協力し、怪獣と関わっているのかを理解できる初めての映画になります。それはカーテンの裏側に隠れているものなんですよ。」
すなわち監督は、『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』を怪獣映画として、同時に科学者たちのヒーロー映画として作り上げようとしているのだ。この発想は日本版『ゴジラ』シリーズにもきちんと通じるものであり、職業こそ異なれど、『シン・ゴジラ』(2016)を思い出す方も多いことだろう。
ちなみにマイケル監督は、あえて「現在の社会情勢において、科学はしょっちゅう疑問を持たれ、攻撃の対象にされています」と付け加えている。だからこそ「科学者がヒーローである映画を作ることが非常に重要だと思った」と。
この発言には、ドナルド・トランプ米大統領の“科学軽視”が問題視されているという背景がある。科学予算の削減、研究発表の制限、根拠に基づかない発言の数々……。本作が撮影されていた2017年当時は、事実や根拠を軽んじ、むしろ感情を優先する“ポスト・トゥルースの時代”がやってきたと盛んに語られていた頃だった。そして2019年現在も、そのような傾向に大きな変化があったわけではない。映画が公開された際には、作品や物語に込められた同時代的なメッセージも含めて、監督の掲げるテーマをじっくりと読み解くことにしよう。
映画『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』は2019年5月31日(金)全国ロードショー。
『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』公式サイト:https://godzilla-movie.jp/
Source: Collider