キャラクターの死はどう扱われるべきか、「ゲーム・オブ・スローンズ」原作者が持論

フィクション作品では、大好きだったキャラクターとの離別に向きわなければいけない時がある。とりわけビジュアルに訴えかける映画やドラマにおいて、より大きなダメージを受けてしまうという方も多いのではないか。
この度、数々の死を描いてきた「ゲーム・オブ・スローンズ」シリーズ原作者のジョージ・R・マーティンが、キャラクターの死の扱い方について英Independentで持論を述べている。マーティンが例示したのは、特に衝撃回として知られる「キャスタミアの雨」が収められたシーズン3。「恐ろしい章です」と話すマーティンは、世間の反応をこう振り返る。
「皆さんを動揺させました。怒らせ、悲しませもしました。壁に本を投げつけ、暖炉に投げ入れた方もいるでしょう。テレビで放送された時は、数百万人とはいかないまでも、多くの人に影響を与えました。僕にとっては、良いことでした。死について語っているのですから。」
原作小説で「釁られた婚儀(=レッド・ウェディング)」として知られる「キャスタミアの雨」では、過酷な戦のさなかで、ロブ・スタークと彼が戦場で出会ったタリサの結婚式が行われた。しかし、突如として悲劇が訪れる。幸せのひとときは、同盟関係にあったボルトン家の裏切りにより崩れ去り、ロブとタリサ、さらにスターク家の母キャトリン・スタークまで惨殺されてしまったのだ。この展開は酷いとしか言い表しようがなく、その後スターク家は更なる苦難に陥ることとなった。

「マーティンはなぜこんなにも残酷な描き方をするのか」と思ったファンもいるだろうが、彼にしてみれば、ファンタジーだからこそのリアリズムに徹した故のこと。人生において避けられない「死」を通して、マーティンには伝えたいことがあったという。
「僕たちはみんな、人生の中で死を経験します。親は死に、友人も死ぬ。時には悲劇的な状況で、子どもや夫を亡くすこともありますよね。そして、これが大きな影響を与える。怒り、悲しむ。
エンターテイメントにおいて、テレビや映画、本は何世紀もかけて進化してきました。その中で、死が軽率に扱われてきたこともあります。誰かが死ぬと、ミステリーとなり、誰がやったのかを探偵は探さなければいけなくなる。でも誰が死んだのか、彼(彼女)の人生がどのようなものだったのか、彼なしの世界はどうなってしまうのかなどが考えられることはない。僕が死を扱う時、それが特に大きなキャラクターの場合は、読者にこうしたことを感じてもらいたいんです。」
かく語るマーティンは、「レッド・ウェディングでは、これを描くのに上手くいったと思います。みんなが、死を感じたのですから」と成功を実感している模様。たしかに、シーズン1に続くスターク家2度目の大虐殺を描いたこのエピソード以降、「何が起きてもおかしくない」という潜在意識がファンの間でより強く芽生えたのではなかろうか。
ちなみに、2022年8月には「ゲーム・オブ・スローンズ」の新シリーズ「ハウス・オブ・ザ・ドラゴン(原題)」が米配信開始となる。本シリーズでは、ターガリエン家滅亡のきっかけとなった内乱に迫る。ファンは「死」と再び向きあうことになるのだ。
▼「ゲーム・オブ・スローンズ」 の記事
Source: Independent