ギレルモ・デル・トロ版『フランケンシュタイン』頓挫の陰に「ダーク・ユニバース」か ─ 痩せこけたフランケンの構想とは

『シェイプ・オブ・ウォーター』(2017)『パシフィック・リム』(2013)のギレルモ・デル・トロ監督は、かつて『フランケンシュタイン』(1931)のリメイク企画に着手していた。残念ながら実現には至っていないが、どんな作品になるはずだったのか、そしてなぜ実現されなかったのか。
フランケンシュタイン役に起用される予定だったのは、『シェイプ・オブ・ウォーター』で半魚人役を演じるなど、デル・トロ作品でクリーチャー役を数々こなしてきたダグ・ジョーンズ。このたび米Colliderでは、2009~2010年ごろにメイクテストなどの準備が行われていたことが明かされている。フランケンシュタインのデザインに参加していたのは、DCコミックスの人気キャラクター・スワンプシングを生んだバーニー・ライトソン。フランケンシュタイン作品のアートワークを数々手がけてきた人物だ。
「最初に思ったのは、みなさんが思うような、大柄で骨太の、鈍いフランケンシュタインにはなれないということでした。ただ、ギレルモがバーニー・ライトソンの大ファンであり、友人だったので、僕の見た目に合わせて彼が描いてくれると。やつれて痩せこけた、哀れな見た目の、だけど異様に腕力があり、運動能力も高いフランケンシュタインを。」
実際のところ、ジョーンズ自身がメイクテストに臨んだことはなかったものの、『ヘルボーイ』シリーズでデル・トロと組んだ特殊メイク工房・Spectral Motionはすでに試作を進めていたとのこと。ジョーンズはフランケンシュタインの姿となった自分の胸像を見せてもらった際、「涙が出てきた」と話している。「あれは忘れられないほど美しかった。バーニー・ライトソンのアートに敬意を払い、見慣れたフランケンシュタイン像とは違う見た目になっていて」。
なぜ、デル・トロ版『フランケンシュタイン』が頓挫したのかはわからない。しかしジョーンズは、権利元のユニバーサル・ピクチャーズが当時から構想していた「ダーク・ユニバース」がその原因だと推測する。「ダーク・ユニバース」とは、マーベル・シネマティック・ユニバースのごとく、ひとつの世界観のもとで、クラシックなモンスター映画に基づく物語とキャラクターが展開するという構想。トム・クルーズ主演『ザ・マミー/呪われた砂漠の王女』(2017)でスタートしたが、興行的不振ゆえに一作限りで打ち切られた。
「トム・クルーズの『ザ・マミー』で新たな時代が始まるはずで、(『フランケンシュタイン』は)そこに加わる予定だったのだと思います。ただ、根拠はなく言いますが、ギレルモは独立した映画を作りたがっていたんだと思う。彼なりの芸術作品で、小説やオリジナルの映画に敬意を捧げるものを。その後、まったく話を聞かなくなってしまいました。もしオファーがあれば、何がなんでもやりたいですね。」
ダーク・ユニバースの失敗がデル・トロ版『フランケンシュタイン』の頓挫に繋がったのか、ダーク・ユニバースに『フランケンシュタイン』を加えることをデル・トロが拒んだために企画ごと消滅したのか、あるいはすべてはジョーンズの憶測にすぎないのかはわからない。もっともデル・トロは、2007年にユニバーサルから「モンスターズ・ユニバース」すなわち、のちのダーク・ユニバースの指揮を打診され、これを断っていたことを認めている。デル・トロは「後悔している」と語ったが、もはや『フランケンシュタイン』をめぐる真相は藪の中だ。
現在、デル・トロはアニメ映画版『ピノキオ(原題:Pinocchio)』や、ブラッドリー・クーパー主演『Nightmare Alley(原題)』を進行中。ジョーンズとの再タッグは未定とみられるが、ジョーンズ自身は「ギレルモの仕事ならなんでもやりたいし、僕がなんでも引き受けることは彼も知っています」と話す。「どんな話なのかは後から知るんですよ。どういうオファーであろうと信頼できる監督のひとりです」。
Sources: Collider, New York Times