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『マイティ・ソー バトルロイヤル』監督、「ほかのマーベル映画は全部無視した」と告白。そこから見えるマーベルの映画哲学とは?

映画『マイティ・ソー バトルロイヤル』タイカ・ワイティティ監督が、掲示板サイトRedditに登場。ユーザーとの一問一答企画で衝撃の告白をしている。

なんでもワイティティ監督は、本作を撮るうえでマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)作品をすべて無視したというのだ。しかも、直接関係のない作品だけでなく、『マイティ・ソー』シリーズの作品すらも……。

ワイティティ監督、初めての高予算映画

ワイティティ監督は、これまでニュージーランドを拠点にインディペンデント映画の世界で活躍してきた人物だ。ユーモアとドラマ性に溢れた脚本と演出は高く評価されているものの、日本では『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』(原題:What We Do in the Shadows)が公開されただけで、ほかの監督作品はまだ紹介されていない。

そんなワイティティ監督にとって、『マイティ・ソー バトルロイヤル』は初めての高予算映画だ。しかも本作はコミックを原作とした、『マイティ・ソー』シリーズの3作目なのである。さぞかしやりづらい環境ではなかったか……とも想像されるが、ワイティティ監督はどっしり構えて作品づくりに臨んでいたようだ。

あるユーザーから、「『マイティ・ソー バトルロイヤル』をシリーズの過去作品に似せる・似せないという努力はしたんですか? たとえば以前の要素を残すとか、むしろもっと独特にしようとか」と尋ねられて、監督はこう答えている。

「『マイティ・ソー』のほかの作品は無視しようと努めたよ」

また、別のユーザーから「MCUの方向性や今後について知っていますか?」と聞かれると、

「正直、自分がやっていること以外は何も知らない。ほかのユニバース作品は無視して、自分自身の最高の映画を作ろうと思ってるよ」

とも答えていた。普通に考えればありえないような、コミックのファンはギョッとさせられるコメントだが、実はこの発言からはマーベル・スタジオ独特の映画哲学が伺えるのである。

ユニバースはマーベルのもの、作品は監督のもの

マーベル・スタジオ社長のケヴィン・ファイギ氏は以前こう語っていた

「(スタッフの)みんながコミックに詳しくなくてもいいし、監督が大ファンでなくてもかまわない」

ファイギ氏によると、監督はコミックだけでなく他の映画にも縛られなくて良いという。映画『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016)にはティ・チャラ/ブラックパンサーが治めるワカンダ王国が登場したが、同作での描き方について、マーベルは単独映画『ブラックパンサー』を手がけるライアン・クーグラー監督と“約束”を交わしていたようだ。

「クルーガーには(ワカンダを)見せすぎないと約束したんだ。だからラストは霧がすごいんだよ。(『シビル・ウォー』のワカンダに)彼を縛りつけたくなかった。同じユニバースにあるものは、とても簡単に、うまく調和すると思うのさ。観客も受け入れてくれるだろうしね」

すなわちマーベルは、“ユニバースは自分たちでなんとかして、個別の作品は監督に思う存分やってもらう”というスタンスで映画づくりに取り組んでいるのだろう。

実際にワイティティ監督は、マーベルとの仕事で「創作の自由が十分あったことに一番驚いた」とコメントしており、「ストーリーやキャラクター、映画のトーンに大きく関わらせてもらえた。規模が大きい以外はいつものように作ってるみたいだ」と記している。

ちなみに「ほかの作品は無視した」というワイティティ監督だが、もちろんMCU作品はいくつか観ているようだ。なかでもお気に入りの作品は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』で、同作に登場するローマン・デイ(ジョン・C・ライリー)を『マイティ・ソー バトルロイヤル』に登場させたかったという。しかし残念ながら出演は実現しなかったらしい。

映画『マイティ・ソー バトルロイヤル』は2017年11月3日に日米同時公開

sources: https://www.reddit.com/r/IAmA/comments/57oecm/im_taika_waititi_director_of_hunt_for_the/
http://www.ign.com/articles/2016/10/14/kevin-feige-talks-about-the-build-up-to-avengers-infinity-war

Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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