『イン・ザ・ハイツ』ブロードウェイの歴史を変えたラップシーン本編映像

『ハミルトン』リン=マニュエル・ミランダによる傑作ブロードウェイ・ミュージカルの映画版『イン・ザ・ハイツ』より、アンソニー・ラモス&コーリー・ホーキンズらが魅せるラップシーンの本編映像が公開された。
ニューヨークの片隅にある一角、ワシントン・ハイツは、道端のラジカセ、アパートの窓、カーラジオなどからいつも音楽が流れる街。祖国を離れた移民たちが暮らすこの街で育ったウスナビ、ヴァネッサ、ニーナ、ベニーは、仕事や進学、恋につまずきながらも自分の夢を追いかけていた。しかしある時、住人たちに大きな危機が訪れる。そして、ある夜に突如起こった大停電。住人たち、そしてウスナビたちの運命が大きく動き出す。
公開されたのは、主人公ウスナビ(アンソニー・ラモス)がコンビニで売った宝くじの中に、9万6,000ドルの当たりくじがあったことが発覚するシーン。慎ましく暮らすワシントンハイツの住民にとっては大金、この噂は街中に広まって大騒ぎになる。ウスナビたちも「もし9万6,000ドルを手にしたら?」と色めき立った。
タクシー会社に勤めるベニー(コーリー・ホーキンズ)は、「ハデに使わずクールにビジネス・スクールへ」と堅実さを見せたかと思えば、「俺はリッチな実業家。タイガー・ウッズが俺のキャディ」と野心むき出しのリリックを披露。ウスナビも「やめな、ホラ吹き男。お前のウソはピノキオ」と応酬し、ペインターのピート(ノア・カターラ)が割って入るも一蹴されて撃沈する。まるでラップバトルのような掛け合いだが、この楽曲「96,000」は6分近い大曲であり、実は今回見られたのはほんの序章。さらなる見どころがこの後に待ち受けている。

サルサやメレンゲ、R&Bやポップ・ミュージックなど様々な音楽で彩られた『イン・ザ・ハイツ』だが、なかでもラップはミュージカル映画の従来のイメージとのギャップもあるだけに新鮮に映るだろう。原作となったミュージカルも、初演当時、クラシックやポップが主流だったブロードウェイに本格的にラップを持ち込んで大きなインパクトをもたらした。
原作・作詞・作曲のリン=マニュエル・ミランダは、「昔からミュージカルが大好きだったけれど、既存のミュージカルには自分の居場所がないと感じていた」と語る。「だから、大好きな『RENT/レント』のジョナサン・ラーソンが友達の話を題材にしたように、『イン・ザ・ハイツ』を独自に書き始めた。僕が舞台にふさわしいと感じた、大好きなラテン音楽やヒップホップを取り込んだ作品をね」。『RENT/レント』が伝統的なブロードウェイミュージカルにロックを融合させて変革を生んだように、『イン・ザ・ハイツ』はラップでブロードウェイの歴史を変えたのである。
本作は全米の有力誌がこぞって「今年最も観たい映画」に挙げ、公開前から批評家の大絶賛を浴び、アリアナ・グランデ、ヒュー・ジャックマン、ドウェイン・ジョンソンらも賛辞を寄せた。米Rotten Tomatoesでは96%フレッシュを記録している。監督は『クレイジー・リッチ!』(2018)のジョン・M・チュウ。
映画『イン・ザ・ハイツ』は2021年7月30日(金) 全国ロードショー。