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『アイアンマン3』で描かれた「クリスマスの奇跡」とは? シェーン・ブラック監督が解説

アイアンマン3
(c)2013 Marvel

マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)には、一部で“クリスマス映画”として愛されている作品がある。『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー ホリデー・スペシャル』(2022)から遡ること9年前、2013年製作の『アイアンマン3』だ。

『アイアンマン』シリーズの完結編である本作を手がけたのは、脚本作『リーサル・ウェポン』(1987)や『ロング・キス・グッドナイト』(1996)などでクリスマスを描いてきたシェーン・ブラック。もっとも、当初は本作を“クリスマス映画”にするつもりはなかったという。

この記事には、映画『アイアンマン3』のネタバレが含まれています。

Empireにて、ブラックは「クリスマスを単なるギミックや予想できるもの、押し付けがましい“自分らしさ”にしたくなかったんです。最初は楽しかったけれど、(観客に)そう思われると楽しくなくなった」と振り返る。それでも『アイアンマン3』の舞台をクリスマスにしたのは、共同脚本を務めたドリュー・ピアースのこだわりだった。

脚本に『クリスマス・キャロル』の要素があったので受け入れました。トニー(・スターク)は支えをなくし、拠点を失い、アメリカの中部をさまよいます。幽霊が現れることはありませんが、彼は報いを受け、許されることになるのです。そのときには自分自身を省み、何が自分を苦しめるのかを知り、いかに前進するかを考えなくてはなりません。」

この言葉通り、『アイアンマン3』のトニーは『アベンジャーズ』(2012)での戦いを経て、不眠症や精神の不調に悩まされている。マンダリンによるテロと戦うため、トニーは自らの住所を公にし、それゆえ自宅を襲撃されてしまうのだ。トニーはテネシー州の小さな町で、ハーレー・キーナーという少年と出会ったことから再起を図りはじめる。

またブラックは、本作の“クリスマス映画”らしさは結末にこそ表れているとも説明している。「彼はフィアンセ(ペッパー・ポッツ)に贈り物をするし、自分を助けてくれた少年にも贈り物をする。ジョン・ファヴローの役(ハッピー・ホーガン)は昏睡状態から目覚め、クリスマスの奇跡が起こるのです」

もっとも、これは“クリスマス映画”から距離を置こうとしていた監督なりの工夫でもあったらしい。「どんどんダークになり、つらい展開になった矢先、少しばかりのクリスマス要素によって喜びが与えられる」とは本人の談。むろん、この結末がのちに『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)までの物語を支えたことを考えれば──ブラック自身は意図しなかったにせよ──“クリスマスの奇跡”がMCUにとっても重要だったことは明らかだろう。

ちなみに、ブラックは「クリスマスはありとあらゆる方法で描くことができるもの」とその魅力を語っている。「クリスマスの輝きをまとった街の美しさを見せることもできれば、陽気な飾り付けとは相反する闇を見せることもできる。さびれた通りに風が吹けば、幸せな家族がディナーを過ごす中、たったひとり立ちつくす男のように見せることもできますよね」。

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Source: Empire

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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