『ゴリラのアイヴァン』記者会見全文 ─ アンジェリーナ・ジョリーらキャストと監督が語るウラ話

──レコーディングをしている時、特別な衣装を着たのだとか?
ブルックリン・キンバリー・プリンス:そうなんです(笑)。私は、アンジーに2回会ったことがあって、1回目は(アカデミーが主催する)ガバナーズ・アワード、2回目は、放送映画批評家協会賞の授賞式でした。放送映画批評家協会賞で会った時、私はアンジーに、「レコーディングは、ゾウの着ぐるみを着てやりませんか?」と言ったんです。そして家に帰ってママに、「ママ、私とアンジーにゾウの着ぐるみを買って」とお願いしたんです。ママは、「私がアンジーにゾウの着ぐるみを買うの?」と言ってました(笑)。「でも、どのサイズにすればいいのかしら」って。
アンジェリーナ・ジョリー:その日、現場に着いて、興奮しちゃいましたよ。
ブルックリン・キンバリー・プリンス:私はもうゾウの着ぐるみを着て、飛び跳ねていたんです。そして、到着したアンジーに、「いつ一緒に着るの?」って。パパには「暑すぎるんじゃないか」「アンジーはもうそんなこと忘れているんじゃないか」とか言われたんですけどね。そしてアンジーは、「私のも用意してくれたの?」と言って、着てくれたんですよ。そしてふたりでゾウの着ぐるみを着たセルフィーを撮ったんです。暑くなりすぎちゃって、途中からは着ぐるみを腰に巻いてやることになったんですけどね。それに、アンジーは、イースターに、大人のゾウと赤ちゃんのゾウが鼻を寄せあっているぬいぐるみを私にプレゼントしてもくれたんですよ。
アンジェリーナ・ジョリー:本当にゾウの家族みたいになったよね(笑)。とてもキャラクターに入れ込んだから。

──サムへの質問です。コロナウィルスによって、私たちもアイヴァンのように、長い期間、閉じ込められた生活をする羽目になりました。この状況を乗り越える上で、アイヴァンから教わったことはありましたか?
サム・ロックウェル:ああ、本当に、「パピヨン」みたいだよね。いい質問だね。どう答えていいかわからないけど、閉じ込められた生活についてアイヴァンが何か教えてくれることはたしかだろうな。この実話のドキュメンタリーを見たら感動しますよ。本当に胸が痛くなる。これは本当の話なんですよ。だから、アイヴァンは、このことについて何か言いたいはずだと思う。
ダニー・デヴィート:こういうパンデミックの中ではとくに、普段親しくしている友人や家族とつながりたくなるよね。ソーシャルディスタンスをしなきゃいけない人たちとね。それが安全だから。自分は、テレビもよく見たな。
ブライアン・クランストン:今、何がヒットしているか、知り尽くしていたね(笑)。
ダニー・デヴィート:そう、今何がかかっているか、僕らはよく知っていたよね。昔のウエスタンとか。
ブライアン・クランストン:「ローハイド」とかね。

──友達といえば、ここでオームとうさぎのお友達同士にも話を聞くことにしましょう。フィリッパとロン、あなたたちはどんなふうにこの役の心に入っていったのですか?
フィリッパ・スー:簡単でした。オームはどうするのだろうと考えたんですよ。ギルバート・ゴッドフィールドが『ライオンキング』でやったこと以外でね。それでオームの映像をいくつか見てみた。次に、オームのような声をやってみたんです。家の中で、ほかの人も聞こえるような大きさで。夫に、「これ、オームの声に聞こえる?」と聞いてみたら、「聞こえる、聞こえる!」っていうんで、その声で家中を歩き回ったんですよ。まさに芸術的(笑)。
ロン・ファンチズ:僕はそんなに出番がないし、演技自体も6年くらいしかしていない。どうしてこのZOOM取材に呼ばれたのかもわからないんだけど、この人たちに会えたのは嬉しいです。僕はただ声の演技をやって、時々「ここをもっとこうして」とか言われて、そうしただけ。たまにダニーに「もっと違うふうにやってみたら」と言われることもあったけど、そういう時は、「ダニー、君がしゃべりすぎだから、僕は聞き役になるよ」と言ったんです(笑)。僕に関しては、ただ、そんな感じだったんですよね。でも、今、いろんなテレビや映画に出させてもらっているんで、このまま続いたらいいなと思っています。
──あらためて消防車が好きになりましたか?
ロン・ファンチズ:消防車は昔から好きなんですよ。一番好き。最も力強いし、水も放てるし、好きにならない理由はないよね?自分がウサギだったら、ずっと消防車の中に住んでいたい。マーフィーの気持ちはわかる(笑)。
──レイモンへの質問です。先ほど、監督が、テクノロジーが駆使されたこの映画を作る苦労を語ってくださいましたが、あなたにとってはどうだったのでしょうか?あなたは過去にもスペシャルエフェクトが多用される映画に出ておられますが、この映画では、動物を相手にするシーンは、どのように撮影されたのですか?
レイモン・ロドリゲス:今作は、本当にすばらしい人々に恵まれている。中でも、ブライアン・クランストンは、才能に溢れる、真に優秀な人です。時々、ウォルター・ホワイト(注:『ブレイキング・バッド』で彼が演じたキャラクター)が出てきちゃって怖くなることもあったけど(笑)。
(現場で)アイヴァンを演じるベン・ビショップを見るのも面白かったです。彼は全身をスパンデックスで覆われている。完成作を見た時、僕には、彼が透けて見えるようでした。彼がやった肉体や目の演技が活かされていたからです。ルビーを演じた人は、グリーンのゾウのコスチュームを着て現場を歩き回っていました。しばらくすると、それが赤ちゃんゾウだと信じられるようになるものです。そういうふうに、実際のものがあるのは、ありがたかった。何もないところで、そこにあるかのように演じなきゃいけない経験もしてきたので、何かがあると本当に助かるんですよね。しかも、相手は人間だし。本当の人間が演技をしてくれるんですよ。それは、僕らにとって大きな助けとなる。
ここでこの映画のメッセージについて戻っていいかな。僕らは(コロナで)家の中にこもることを強いられ、アイヴァンに通じる体験をすることになった。そこには、あらためて成長するような要素もあった。そして、この映画で、アイヴァンは、人生の遅いステージになってから自分自身を発見することはあるのだと教えてくれる。僕らはまだこの旅路の途中にある。今は、とても奇妙な時です。パンを焼いたり、料理をしたりという人もいるし、僕はというと、植物の世話をしている。何かを植えたり。そして、自分の内側を見つめたり、この国自体を見つめたり。今はすごく普通でない時。これを乗り越えた後、僕らが少しだけでも成長していることを願います。アイヴァンはまさにそれを経験したと思います。ということで、この話は、今、語るのに、とてもパワフルなものなんです。

チャカ・カーン:それは同感です。私が最初にやってきた時、ダニーに「もっと自分らしくやればいいよ。自分ならこう言う、と思う言い方をして」と言われたんです。ヘンリエッタを演じる上で大事だったのは、自分らしくあることでした。つまり、私は自分自身を見つけなければいけなかったんです。
──ヘンリエッタとあなたの間に共通点はたくさんありましたか?
チャカ・カーン:はい、ヘンリエッタと私はとても似ています。本当のことを知りたい時、人は、私に聞きに来る。でも、彼らはみんな、それをファニーな形で聞きたいと期待して来るんです。だから、真実だけを聞きたい人は私に聞くべきじゃない(笑)。
──ブライアンへの質問です。この役にどうアプローチしたのでしょうか?この役は完全な悪者でもなく、完全なヒーローでもありません。
ブライアン・クランストン:そうだね…(と話しかけたところでチャカ・カーンが割り込む)
チャカ・カーン:私は理由があって役者をやっているんじゃない。さっき言ったように、今作で学んだ一番のことは、キャラクターの中に自分を見つけるということ。セリフをどう言えばいいのか、いろいろ考えて、ダニーと一緒に、あれもやって、これもやって、ぐるぐる回って、最終的にあまり考えずにただ言ってみたら、みんなに「それだ!」と言われたんです。「今のにはあなたらしさがあった!」と。
──役者さんは、そうやって、みなさん、自分なりのものをキャラクターに持ち入れるのですよね。ブライアン、あなたはどうでしたか?
ブライアン・クランストン:まずはマイクが書いた脚本から始めた。その脚本に僕はとても共感した。窮地に置かれた動物たちという設定と、彼らのジャーニーという部分はもちろんだけれども、それだけでなく、マックというキャラクターにも思い入れができたんです。撮影前、僕は、監督と何度かミーティングをもち、深い話し合いをしました。マックは欠陥のある人間だが、正しいことをしようという努力をする人でもある。彼にとってアイヴァンはわが子のような存在。わが子を見捨てるようなことを、彼は絶対しません。それで彼は一生懸命考えた。ゴリラと一緒に生きるにはどうすればいいのかと。僕は、マックが心に抱えるものを、ニュアンスをもって表現しようとしました。彼のダメな部分も、恐れずに出そうと。彼がかつらをつけているというアイデアも、監督との話し合いの中で僕が提案したことなんですよ。そのかつらがあるシーンでぶっ飛んで、彼が恥ずかしい思いをする、というのはどうか、とね。それに、太って見えるようにパッドを付けたし、ガードルも履いた。そういうことを通して、観客は、彼という人の、ちょっと弱い部分を理解してくれると思うんです。マックは、他人の前で、本当の自分じゃない人を演じているんです。でも最後に、彼は一周して、本当の自分を受け入れることになる。僕と監督は、そういうことを話し合いました。もう、かつらも必要ない。ありのままの自分でいればいい。そしてアイヴァンが人生の次のチャプターに移ったことも、心から祝福しています。

──あの小さな自転車に乗るのはどうでしたか?あのシーンではかなりCGを使っているのでしょうか?
ブライアン・クランストン:自転車を見た時は、これくらいできるだろうと思いましたけど、やってみると実はかなりハードでした。あそこでCGはまったく使っていません。僕は実際に自分であれに乗っています。難しかったけど、楽しかったですよ。ツルツルしているし、漕いでいると膝が顔に着くような感じだから、何回か転んだけれど。最初にあの自転車を見た時に、「ダニー・デヴィート所有物」と書いてあって、「なるほど」と思った(注:冗談で言っています)。
ダニー・デヴィート:僕はあれに乗って通勤したんだよ。かなり速く漕げるよ。
──マイクへの質問です。脚色の苦労についてお話しいただけますか?脚色する上では、原作にある何かを捨てなければいけなかったりするものですが、それは難しかったのでしょうか?
マイク・ホワイト:僕は、自分はかなり幸運だと思っています。原作本は、子供向けの本にしては、キャラクターは豊かで奥深いし、感情的要素がたっぷりで、ハートが詰まっている。いや、これはヤングアダルト向けの本なのかな?そのカテゴリーは、よくわからないけれども。それでも、脚色をするにあたっては、しっかりした柱を作る必要がありました。もっと話を足していくことも必要でしたよ。本の中では、ここで軸になっているストーリーが必ずしも前面に出ているわけではない。僕がやったのは、アイヴァンとマックの関係を掘り下げること。マックのキャラクターは、原作本にもかなりしっかり書かれていましたが、アイヴァンのキャラクターにも、ディズニーの古典アニメーションで見られるような展開を与えてあげたかった。そこが一番大きかったですね。