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『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』脚本に影響を与えた3本の映画 ― ドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』も

マーベル・シネマティック・ユニバース作品は、まぎれもなくヒーロー映画でありながら、同時に別ジャンルの要素を採り入れた作劇が大きな特徴だ。『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』を手がけるアンソニー&ジョー・ルッソ監督は、『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』(2014)で1970年代のポリティカル・スリラーを、『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016)で名作『セブン』(1995)などのサイコ・スリラーを大胆に参照してみせたのである。

では、10年間に及ぶストーリーを総括する『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』で、二人はどんな映画からの影響を受けたのか? 60名以上に及ぶというキャラクターの登場、そして闇の帝王サノスとの対決を描くストーリーについて、かつて彼らは「1990年代の強盗映画」からインスピレーションを得たと述べていたが……。

2017年夏、撮影現場にて行われたインタビューで、ルッソ監督はより具体的にインスピレーションの根源を明かしている。劇場へ足を運ぶ前に、予習として観ておきたい3本の映画を本記事ではご紹介しよう。

物語の構造、映画のエネルギーに影響を与えた3本

『アイアンマン』『キャプテン・アメリカ』『マイティ・ソー』、さらに『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』『ドクター・ストレンジ』『スパイダーマン』『ブラックパンサー』。それぞれに異なる作風を持つ映画のキャラクターを共演させることは、むろん簡単なことではない。
アンソニー監督は、「こんなふうにシリーズを組み合わせる映画はそう多くありませんし、この規模ではかつてなかったと思いますね」と述べる。その困難を乗り越えるべく、脚本執筆中に参考とされたのが犯罪映画・強盗映画だったのだ。

「(『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』は)アドベンチャー・ムービーだと言えますが、脚本の執筆中、1990年代の犯罪映画に影響を受けました。ショーウインドウをぶっ壊して盗んでいく、そのエネルギーがあるんですよ。」

そしてアンソニー監督は、本作に大きな影響を与えた映画を2本挙げている。ジョン・ハーツフェルド監督作品『2 days トゥー・デイズ』(1996)、そしてスティーヴン・ソダーバーグ監督作品『アウト・オブ・サイト』(1998)だ。
『2 days トゥー・デイズ』は、とある殺人事件をきっかけに、殺し屋や刑事、スキー選手や映画監督といった10人の登場人物が入り乱れる、タイトル通りわずか2日間の出来事を描いた群像劇。また『アウト・オブ・サイト』は、銀行強盗と女性保安官が偶然に出会い、お互いに惹かれながら追跡劇を繰り広げるというストーリーである。

ルッソ監督によると、これらの作品には二人が求めていたエネルギーと物語の構造があったという。もともと独立性の強いキャラクターをひとつの作風のもとに織り上げる助けになったとも述べられているように、数えきれないほどのキャラクターが登場する中、闇の帝王サノスがインフィニティ・ストーンを求めていくという、その発想の源泉となったとみられるのだ。

一方、米/Filmのインタビューにて、本作の脚本を執筆したスティーヴン・マクフィーリー&クリストファー・マルクスはこのようにも語っている。

スティーヴン: 『アベンジャーズ』第1作(2012)があれほど人気で、非常にエキサイティングなのは、4つのシリーズをぶつけ合っているからですよ。今回も同じ種類のマジックですが、僕たちはまるで違うキャラクターを連れてきて、グループ同士でぶつけ合っています。
ひとつの課題は、25人の登場人物をシーンごとに動かすのを、どうやって(観客に)気づかせないかということでした。これはちょっとした冗談ですが、『ナッシュビル』みたいなのはどう作るのかって。そこで4~5つのストーリーを織り合わせて、くっつけたり、離してみたり。ですから(本作には)4~6個くらいのペアやグループが出てきますよ。

ロバート・アルトマン監督作品『ナッシュビル』(1975)は、米国ナッシュビルの音楽業界に関わる人々や政治関係者たちの人間模様を紡ぎ出した一大群像劇。主要キャラクターは24人で、それぞれの5日間を描くストーリーだ。

クリストファー: 今でいえば、『ゲーム・オブ・スローンズ』(2011-)に似ていなくもありませんね。登場人物のいる大きなキャンバスがあって、こっち側に男がいて、あっち側には虐げられている少女がいる。巨大なプレートが動くようにして、人々が近づいていくんですよ。

しかしジョー・ルッソ監督は、これらの作品が物語そのものに直接的な影響を与えたわけではないことを強調している。あくまで重要なのは、“映画をいかに組み立てるのか”という点だ。

ジョー: (影響を受けた)映画について話をすると、どういうふうにその映画を扱っているのか、時々誤解されてきたように思います。物語のイメージについて刺激を受けている、ということなんですよ。
(『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』は)すごく複雑な映画で、(作品の)ピースを揃えたり、まとめたりしなくてはいけません。すべてのキャラクターがきちんとハマる物語の構造があって、ようやくまとまるものなんです。[中略]『2 days トゥー・デイズ』を観た時、求めていた物語の推進力やエネルギーがそこにありました。

なおご留意いただきたいのは、これらの映画が影響を与えたのは、あくまで『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』の「脚本」であることだ。おそらくルッソ監督は、また異なる映画から刺激を受けつつ、別のアプローチで映画を撮っていったに違いないが……その巧みな物語術を探るためにも、ぜひ観ておきたい作品であることは確かだろう。

映画『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』は2018年4月27日より全国ロードショー

『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』公式サイト:https://marvel.disney.co.jp/movie/avengers-iw.html

Sources: SR, /Film

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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