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『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』ソウル・ストーンのシーン、よりダークな演出が検討されていた

映画『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018)には、観客の目と心を惹きつける印象的な、あるいは衝撃的なシーンが少なくない。とりわけクライマックスはそうした瞬間のつるべ打ちで、初見の観客ならば、きっと眼前に展開する出来事を追いかけるだけで精一杯になってしまうだろう。

本記事でご紹介したいのは、そんなクライマックスにおいて、サノスというキャラクターに大きな意味を与えた“ソウル・ストーンのシーン”にまつわるエピソードだ。制作段階では、この場面を完成版以上にダークな演出で見せるアイデアが検討されていたという。

注意

この記事には、映画『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』の重大なネタバレが含まれています。

アベンジャーズ インフィニティ・ウォー
© 2018 MARVEL

サノスと幼いガモーラの対面

『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』のクライマックスで、サノスは6つのインフィニティ・ストーンを手中に収める。“全宇宙の生命を半分に減らす”という目的を、彼はついに指を鳴らすことで達成するのだ。
指を鳴らした瞬間、サノスはオレンジ色に輝く空間に立っていた。そこでサノスは――ソウルストーンと引き換えに自ら命を奪った――幼い頃のガモーラに「やり遂げたの?」と尋ねられる。サノスが認めると、愛する娘は「何を犠牲にした?」と問いかけるのだった。サノスは「すべてだ」と答える……。

ジョー・ルッソ監督は、このシーンについて「ソウル・ストーンの中」を示唆するものだとしながら、サノスが罪の意識に対峙し、ガモーラの魂と会話する場面なのだと明かしていた(詳細はこちらの記事をご一読いただければ幸いである)。それゆえ先述の通り、サノスとガモーラのいる空間は、ソウル・ストーンを表すオレンジ色に輝いていたのである。

しかしVFXスーパーバイザーのダン・デリーウ氏いわく、このシーンではよりダークなCG表現が検討されていたという。サノスが歩く川の水面は血の色をしていて、それはサノスによって犠牲となった人々の血を表していたというのだ。しかしダン氏は、このアイデアを「ちょっとダークすぎた」として見送り、その後いくつかの選択肢を考案したのちに完成版の表現を選択したという。

サノスが指を鳴らして全生命の半分を消滅させる、まさにその瞬間に、サノスが犠牲者が流した血の川を渡って、幼いガモーラと話をする……。実現していればこれは非常に象徴的な演出であり、シーンの意図はさらに明快になったことだろう。
しかし同時に、この演出が見送られたのも頷ける。なぜなら劇中最大の犠牲はその直後にこそ訪れるのだし、この場面で生々しい表現を先に見せてしまえば、ヒーローたちが次々に消滅する表現をあえてシンプルに見せることとバランスが取れなくなりかねない。また完成版の幻想的な演出によって、サノスとガモーラのやり取りがエモーショナルに強調された効果も大きかったはずだ。

なお、この証言を引き出した米/Filmは、英国のVFX制作会社Digital Domainに潜入取材を行っている。同サイトが公開した映像では、貴重なサノスのテスト映像や『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』のメイキング映像なども見ることができる。ご興味がおありの方は、こちらもぜひお楽しみいただきたい。

映画『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』MovieNEXは2018年9月5日(水)発売

Sources: /Film, ComicBook.com

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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