『ジョーカー』ホアキン・フェニックス、ロバート・デ・ニーロと衝突していた ─ 脚本の読み合わせ、やりたい派 vs やりたくない派

ホアキン・フェニックス vs ロバート・デ・ニーロ。DC映画『ジョーカー』の製作現場で、映画界を代表する2大俳優がぶつかっていたと聞けば、観客たる私たちも心中穏やかではいられない。米Vanity Fairの取材にて、ホアキンはロバートについて「大好きな俳優」だと語っている。しかし作品を創るにあたっては、ホアキンとロバートが、それぞれの流儀をめぐって衝突する場面があったという。
いったい何があったのか。脚本・監督のトッド・フィリップスは、『ジョーカー』の脚本の読み合わせをめぐる出来事を回想している。ロバートは通常、自身の撮影前に、出演者と揃って脚本を全編読み合わせることを望むタイプなのだそう。今回もホアキンをはじめとする出演者を集めての読み合わせを希望したというが、これにホアキンが同意しなかったのだ。時にホアキンは、あえて脚本の読み合わせをせず、現場で起きることにすべてを委ねたいと考えるタイプなのだという。
「ボブ(ロバート)から電話がかかってきて、“君は俳優だろう、やらなきゃいけないことだと(ホアキンに)伝えてほしい”と言われましたね。“映画全体を聞いておきたいんだ、全員が一つの部屋に揃って、ただ読むだけだよ”と。僕は板挟みでしたよ。だってホアキンは“読み合わせなんて絶対にやらない”って言うんですから。でもボブは“撮影前には読み合わせをやる、それが仕事だ”と。」
とはいえ、ホアキンは読み合わせのため、ニューヨーク・マンハッタンにあるロバートのオフィスを訪れたという。そこでホアキンは脚本をもごもごとした口調で読み上げ、それが終わるや、煙草を吸い始めていたとか。そこでデ・ニーロはオフィスの自室にホアキンを招いたが、それすらホアキンは渋っていたそうで、その様子は監督いわく「ロバートの前で、“できない、家に帰る”と言うんですよ」。その時、ホアキンは終えたばかりの読み合わせを気に入っておらず、気分を害していたという。
しかし、ホアキンは監督に促され、しぶしぶロバートのオフィスに赴いた。そこで小さな話題をいくつか話し合った後、ロバートはホアキンに向き直り、自分の手でホアキンの顔を覆うと、頬にキスをして「かわいい奴だな、大丈夫だよ」と語りかけたという。一部始終を間近で見ていたフィリップス監督は、「とても美しい」様子だったと振り返っている。

もっとも『ジョーカー』の撮影が始まったあと、ホアキンとロバートが言葉を交わすことはほとんどなかった。ホアキンはロバートの演技について「カメラに映っているかどうかにかかわらず、ふるまい方や身ぶり、動きに感銘を受けた」と語り、ロバートもホアキンを「すごい俳優、素晴らしい役者だ」と絶賛しているが、2人はほぼ言葉を交わさずに撮影を終えたという。
これは、ホアキンとロバートが対立していたためではなく、むしろ2人の方法論に重なるところがあったためだった。ホアキンは「演技とはドキュメンタリーのようであるべきだと常々考えている」といい、「自分が感じていることは、どんなことであれそのままにしておくべきだし、その瞬間に自分が感じていることをキャラクターも経験する」のだと話している。ゆえにホアキンは、俳優のロバートとは「話したくなかった。初日に挨拶をしたあとは話したかどうかも分からない」とさえ述べているのである。一方のロバートも、「役柄を考えると、お互いに何か話す必要はなかった。“とにかく仕事をしよう、お互いに役として関わろう”ということですよ」と振り返っている。
映画『ジョーカー』は2019年10月4日(金)より全国公開中。ホアキンとロバートのアプローチがスクリーンにどう表出しているか、その成果はぜひ本編で確かめてほしい。
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Source: Vanity Fair