スコセッシが見せた『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』でのこだわり ─ オセージ語はなぜ重要だったのか

マーティン・スコセッシには、監督最新作『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』で徹底したこだわりがあった。それは、舞台となるオセージの文化や言語を忠実に描くことだ。

本作は、デイヴィッド・グランによる同名小説を原作とする、真実の愛と残酷な裏切りが交錯するサスペンス。1920年代のオクラホマ州、石油の発掘によって一夜にして世界でも有数の富を手にしたアメリカ先住民族・オセージ族。すぐにその財産に目をつけたのが白人たちだ。すでに町に入り込んでいた彼らはオセージ族を巧みに操り、脅し、奪える限りの財産を強奪し、やがて殺人に手を染めていく。実際に起きた残酷な連続殺人事件を、アーネスト・バークハート(レオナルド・ディカプリオ)とオセージ族のモリー・カイル(リリー・グラッドストーン)の夫婦の愛を通して描かれる。

オクラホマ州のオセージ郡で撮影された本作だが、ロケ地だけでなくキャスティングにおいても、オセージ族の人々を演じるのはオセージ族の俳優。それが叶わない場合には、オセージ族ではないがアメリカ先住民の俳優を起用することを徹底したという。
スコセッシ監督は、文化を描くうえで切っても切り離せないほどに重要な「言語」についてもこだわった。ディカプリオによれば、「できるだけリアルに、英語とオセージ語を使っている。2つの文化の融合だ」。

ディカプリオが演じるアーネストは、オセージ族のモリーと結婚したことで、英語とオセージ語の両方を日常で話すようになっていく。アーネストの叔父ヘイル役のデ・ニーロも、手振りや発音を毎日練習したという。
スコセッシ監督は「あえて字幕を入れていないシーンもある」とも話す。実際の映像ではディカプリオやデ・ニーロがオセージ語で話すシーンが多く見られるが、字幕はあえてつけられておらず、役者たちのやりとりや表情をじっくりと堪能できるようになっている。
映画『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』は、2023年10月20日(金)劇場公開。
▼ 『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』の記事
『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』一部映画館が途中休憩を独自導入、配給側「規約違反」と上映取りやめを要請 編集者も「違反行為」と断言 【ネタバレ】『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』ラストの演出、実はスコセッシのアイデアではなかった ─ 共演者も思わず涙の裏話が判明 そうだったのか…… 「最近は無駄に長い映画が多すぎる」「『ゴッドファーザー PART II』や『七人の侍』のようなタイトな3時間半であるべき」 ─ 『ダウンサイズ』監督が持論 『キラーズ・オブ〜』を意識? 【ネタバレ】『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』ラスト解説 ─ エンディングの驚くべき演出、浮き彫りになるアメリカの闇 実際には何が アドリブ連発のディカプリオにデ・ニーロ&スコセッシがイライラ?『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』撮影中に「顔を見合わせた」 ちょっと多すぎたか