名優クリストファー・プラマーがセバスチャン・スタン主演『ラスト・フル・メジャー』にもたらした厚み ─ 最後の映画出演作、兵士の息子を想う父親役演じる

2021年2月5日、ハリウッドを代表する名優のひとり、クリストファー・プラマーがこの世を去った。91歳だった。
プラマーにとって最後の出演映画となったのが、『アベンジャーズ』『キャプテン・アメリカ』シリーズのセバスチャン・スタン初主演映画『ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実』だ。訃報に先がけては、プラマーの出演シーンの場面写真が一挙に到着していた。
[編注:本記事はプラマーの訃報以前にプレスリリースが到着していたものですが、報道を受けて内容を一部変更しています。]

1966年4月、ベトナム戦争で多くの兵士たちの命を救うために命を捧げた空軍兵がいた。彼の名は、ウィリアム・H・ピッツェンバーガー。英雄として讃えられるはずの彼だったが、なぜか30年にもわたり名誉勲章は却下され続けていた。ペンタゴン空軍省に勤めるエリート官僚スコット・ハフマン(セバスチャン・スタン)は、退役軍人のタリー(ウィリアム・ハート)から依頼を受けたことをきっかけに、ピッツェンバーガーへの名誉勲章授与に関する調査を行うことになる……。
プラマーが演じたのは、“英雄”ウィリアム・H・ピッツェンバーガーの父親であるフランク役。プラマーは『サウンド・オブ・ミュージック』(1965)のトラップ大佐役をはじめ、長年のキャリアで多くの話題作に出演し、『人生はビギナーズ』で82歳にしてアカデミー賞助演男優賞を受賞、『ゲティ家の身代金』(2017)では88歳で同賞候補となった。演技部門の受賞者・候補者として、これらはともにアカデミー賞史上最高齢の記録となっている。
スタン演じるハフマンとの初対面で、フランクは、「なぜ空軍兵の息子が陸軍の戦場で命を奪われなければならなかったのか」と無念の胸中を吐露する。「結婚し、子どもを抱く息子の姿を見たかった」。取り出した箱からは、息子が結婚を約束していた女性からの、届かなかった手紙が大切に保管されていた。母親(ダイアン・ラッド)は「あの日、ふたりの子どもを失った」と婚約者も家を去ったことを告げる。
フランク夫妻と親交を重ねたハフマンは、その後、感謝祭の食事に二人を招待した。そこでフランクは、ハフマンの書斎に張られた無数の調査資料を目にする。その後も調査を続けるハフマンは、やがて機密書類が消されていたことを知るのだった。最愛の息子の名誉のため、残された父の切なる願いは届くのか。
近年もプラマーは、『ゲティ家の身代金』をはじめ、『ディア・グランパ 幸せを拾った日』(2018)や『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』(2019)などに出演し、作品ごとにさまざまな顔を見せてくれていた。遺作となった本作『ラスト・フル・メジャー』では、ハリウッドの重鎮たちが揃った中でも、とりわけ深みのある芝居をじっくりと堪能することができる。
そのほか出演者は、セバスチャン・スタン、ウィリアム・ハート、サミュエル・L・ジャクソン、エド・ハリス、2019年8月に逝去した名優ピーター・フォンダら。『ファンタスティック・ビースト』シリーズのアリソン・スドルも登場するほか、『戦火の馬』(2011)のジェレミー・アーヴァインがピッツェンバーガー役を演じる。脚本・監督は、リドリー・スコット監督作『白い嵐』(1996)を執筆したトッド・ロビンソン。
映画『ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実』は2021年3月5日(金)全国ロードショー。