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【解説】マーベルドラマ「ロキ」のD.B.クーパーとは何なのか ─ 謎だらけの未解決ハイジャック事件

マーベル・シネマティック・ユニバースの新ドラマ「ロキ」では、都市伝説ファンが唸るようなシーンがあった。実在の未解決事件「D.B.クーパー事件」にまるわるものだ。

この記事には、ドラマ「ロキ」第1話の内容が含まれています。

ロキ
(C)2021 Marvel

D.B.クーパー事件とは、1971年に実際に発生した未解決ハイジャック事件をめぐる逸話のこと。詳細をまとめた記事はインターネット上でいくつも見つけることができるが、概要はこのようなものだ。

1971年11月24日、米オレゴン州ポートランドからワシントン州シアトルへ向かうノースウエスト・オリエント航空のボーイング727が、「ダン・クーパー」と名乗る男性にハイジャックされる事件が発生。黒いスーツ姿のクーパーは、ブリーフケースの中に爆弾が入っていると書かれたメモを客室乗務員に手渡した。客室乗務員はこれをナンパの類だと思い、メモをその場で開こうとしなかったが、クーパーは「今すぐ読んで。僕は爆弾を持っている(Miss, you’d better look at that note. I have a bomb)」と囁いた。「ロキ」で描かれた通りだ。クーパーの要求は、現金20万ドルとパラシュート。客室乗務員がこれを操縦士に伝えに行き、戻ってくると、クーパーは黒いサングラスをかけていたという。

FBIによるD.B.クーパーの似顔絵。

ドラマでは、ロキが現金の詰まったバッグを持って機体後方のエアステアから飛び降りる姿が描かれたが、実際には操縦士による警察とFBIへの通報、身代金の調達、シアトル・タコマ空港への着陸と乗客の解放、要求の物の引き渡しと再離陸を経ている。また、ロキが飛び降りたシーンは夕刻に見えたが、実際の事件でクーパーが機内から消えたのは午後8時ごろ。黒いスーツ姿で夜に紛れたせいか、ハイジャックされた飛行機に接近していた5機の追跡機は、いずれもクーパーが飛行機から飛び降りるところを目撃していないという。

空(そら)の密室からこつ然と姿を消したクーパー。その後の足取りも全くつかめておらず、様々な説が登場するものの、逮捕には至っていない。機体から飛び降りたクーパーがどこに着陸し、どこに潜伏したのか、多額の身代金の大部分はどこに消えたのかも、はっきりしたことは分かっていない。2016年にFBIがこの捜査を打ち切ったことにより、D.B.クーパー事件は商業航空産業史上、唯一の未解決ハイジャック事件となり、現在も語り継がれている。

飛行機から飛び降りた後のクーパーの行方が分からないのも無理はない。実はクーパーの正体は、悪戯の神ロキであり、飛び降りた直後にビフレストによりどこかに飛ばされてしまっていたから……というのが、ドラマ「ロキ」が伝えるユーモアあふれる新説だ。「君がD.B.クーパーだったなんて!」オーウェン・ウィルソン演じるメビウスも唸らされた。日本人にとっては、三億円事件の犯人が実は……といった感覚に近いのかもしれない。

ちなみに劇中では、ロキがバーボンソーダをオーダーしているが、クーパーもバーボンソーダを好んで機内で飲んでいたという。また、客室乗務員の証言によると、クーパーは「冷酷でも不快でもなく、思慮深くて穏やかだった」ということだ。

Source:FBI,NYMag

Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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