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MCUナンバーワン男気ヒーロー!『ルーク・ケイジ』全13話総括レビュー【NETFLIX】

日本で鑑賞できるMCU作品の中では最新作となる『ルーク・ケイジ』が全13話で9月30日から全話一斉配信中です。『ジェシカ・ジョーンズ』でも登場した謎多きヒーローの活躍とそのオリジンに迫る、ハードボイルドなドラマに仕上がっています。公開からは少し時間が経ってしまいましたが、全13話を通し本作はどのようにルーク・ケイジという男を描いているのか、じっくり考察してみたいと思います。

ネットフリックス×マーベルのシリーズ3作目としての意義

ネットフリックス限定配信のMCUドラマシリーズはすべてニューヨークの街角を舞台にした外伝的作品になっています。今回はルーク・ケイジの住むハーレムが中心地です。『デアデビル』と『ジェシカ・ジョーンズ』はヘルズキッチン、『スパイダーマン:ホームカミング』は(おそらく)クイーンズが舞台ですから、MCUのニューヨークではいたるところでヒーローが活躍しているわけです。

ネットフリックスはこれまでドラマシリーズに登場したヒーローたち(デアデビル、ジェシカ・ジョーンズ、ルーク・ケイジ、それから次作登場のアイアンフィスト)が集結したヒーローユニットの活躍を描く『ディフェンダーズ』の公開を来年に予定しています。ディフェンダーズとはNYを守るヒーローたちの自警団であり、ドラマ版アベンジャーズと言えるでしょう。ということはネットフリックス×マーベルのドラマシリーズ第3作である『ルーク・ケイジ』は映画シリーズでいうところの『マイティ・ソー』的ポジションに当てはまります。いよいよ街の人々にもヒーローの存在が広く認知され、ヒーローたちもお互いの活躍が気になり始める時期というわけです。まずこの作品を見るにあたってこのことを頭に入れておくと、すんなり理解できる部分も多いでしょう。

ハーレムを舞台にしたハードボイルドな西部劇風スリラー

本作は先述の通りNYの一角、ハーレムという地域を舞台にしており、登場人物はほとんど黒人です。おそらく現実のハーレムにこれほどの人種比率の偏りはないかと思いますが、このキャスティングのおかけでどのMCU作品にもなかった特別な雰囲気を創出することに成功しています。後述の劇伴はその雰囲気作りに強く貢献しています。

また、正体を隠し、なるべく目立たぬように暮らそうとするルーク・ケイジが大事件に巻き込まれ、助けを求める人々の声を聞いてヒーローとして活躍する様は、さながら西部劇のカウボーイです。自警団という概念自体、西部劇に出てくるカウボーイと強くリンクした考え方ですが、『ルーク・ケイジ』は特にその色が濃いと言えます。また、ズカズカと敵陣に殴り込んで悪党を蹴散らしていく彼のファイティングスタイルは、痛みに耐えながらギリギリで勝つデアデビルとは対照的ですが、どちらも違ったかっこよさを発揮しているのが楽しいですね。

街の陰謀の真相を追うミスティやスカーフの活躍は刑事モノらしさも感じます。『ルーク・ケイジ』のハードボイルドな空気感をより素晴らしいものに押し上げています。

先の展開が読めない緊張感

今回はヴィランが3人います。ナイトクラブを城として構え、裏のビジネスを仕切るコットマンマウス、彼に協力する悪徳政治家のマライア、すべての出来事に絡んでいるダイヤモンドバック。『デアデビル』のフィスクや『ジェシカ・ジョーンズ』のキルグレイブとは異なり、13話の中でヴィランが交代するトリッキーな構成になっています。コットマンマウスの途中退場に驚いた方も多いのではないでしょうか。ポップやスカーフも序盤で殺されているように、メインキャラでも容赦なく死んでいくのが『ルーク・ケイジ』の気の抜けないところです。主人公が強すぎて並みのマフィア相手だと無双してしまう分だけ、彼を取り巻く人々の生死を予想できないようにしているのでしょうか。おかげで終始独特の緊張感に包まれたストーリーを楽しむことができます。

80年代ポップミュージックが創り出す”ストリート感”

私はブラックカルチャーには明るくないので、詳しい部分の解説は造詣の深い人に任せますが、80年代のポップミュージックが劇伴として多用され、本作全体に漂う”ストリート感”を補強しています。コットマンマウスの部屋に置かれているノトーリアス・B.I.G.の肖像画はこうした演出の象徴と言えます。

近所の気の良いお兄ちゃんが英雄に

http://www.thisisinsider.com/luke-cage-review-2016-9
http://www.thisisinsider.com/luke-cage-review-2016-9

おそらくルーク・ケイジはこれまで登場したMCUヒーローの中で最も”ふつうの人”です。小汚い床屋で掃除をしたり、クラブのキッチンで上司に怒鳴られたり、家賃もなかなか払えず大家さんにこれまた怒られたり…全くもって”ふつう”なのです。そもそも『ジェシカ・ジョーンズ』で持っていたバーを丸ごと吹き飛ばされたり、不運な目にあった結果の貧乏生活ではあるのですが、鋼鉄のスーツを着た社長とか、氷付けにされた戦争の英雄とか、ハンマー振り回す神様に比べると、かなり地味です。

しかし、寡黙で誠実な彼の人柄は周りに人を引き寄せるし、なにより女性にモテます。ジェシカ、ミスティ、クレアとドラマシリーズに出てくる女性キャラの大半は制覇しているやり手です。人の良さは高く評価されていて、近所では評判な気の良いお兄ちゃん的ポジションを獲得しているようです。ただ中盤以降に明かされる凄惨な過去やキルグレイブに妻を殺されたトラウマのせいか、あまり面倒なことには巻き込まれたくないという消極的な態度が見え隠れします。鉄の肌と人外のパワーを持ち、みんなから信頼される誠実さを兼ね備えながらも影に隠れてしまっているのは、かつて心身ともにボロボロに傷つけられてきた経験があるからです。本作はそんな彼がどのようにヒーローとして一皮剥けていくのかがポイントになっていきます。

「フードの男」というシンボル

ルーク・ケイジがヒーローになる大きなキッカケは、彼の苦労を理解し、常に面倒を見てくれたポップがコットンマウスの手下によって殺されてしまったことでしょう。ポップは街の精神的支柱でもあり、言うなれば”おやっさん”でした。彼を失ったショックは非常に大きく、ルーク・ケイジを戦いへと突き動かす原動力になります。そしてこの街を蝕む悪を倒すため、それから自分に向けられた不当な疑いを払拭するため、彼は危険な戦いに身を投じます。

やがてルーク・ケイジのウワサは街でも広がり「フードの男」はハーレムで暴れまわる謎の人物を表すシンボルになります。彼が正義の味方なのか悪党なのか、ハーレムの住民は判断できず混乱するのですが、事実が明らかになっていくにつれ、彼らはルーク・ケイジの味方になり、正義の行いを応援するメッセージを発信し始めます。ハーレムの住民がルーク・ケイジを捕まえようと躍起になる警察を妨害するため、皆でフードを被って捜査をかく乱してみたり、ラジオでルーク・ケイジ応援ラップを流したり…ここはドラマ中でも屈指の燃えるシーンでした。やがて「フードの男」は理不尽な暴力や権力に反抗するレジスタンス、悪に屈しないヒーローのトレードマークになってゆくのです。

クレア=コールソン?

最後に『ディフェンダーズ』へ向けた伏線として読みたいキャラクターの存在を考えます。先ほどドラマシリーズ第3作の『ルーク・ケイジ』は、映画シリーズで言うところの『マイティ・ソー』だと表現しました。アベンジャーズの結成に尽力し、バラバラのヒーローを繋ぐ役割をしたのは『マイティ・ソー』ではじめて本格的な活躍を見せたエージェント・コールソンです。じつは彼と同じ役割をドラマシリーズで果たすのはクレアではないかと思うのです。彼女はルーク・ケイジに対してしきりにマット・マードックを紹介しようとしています。クレアは何度も「知り合いの弁護士は頼れるぞ」と言うわけです。おそらく彼女はデアデビルやパニッシャー、ルーク・ケイジの戦いっぷりをその目で見て、彼らをひとつに繋げる必要性を感じ始めてるのではないでしょうか。またルーク・ケイジの知り合いにはジェシカ・ジョーンズがいるし、クレアは本作中に『アイアンフィスト』との関連を匂わす街中の張り紙に気になっている素振りを見せています。根拠としてはまだ甘いですが、あくまで予想として、クレア・テンプル=エージェント・コールソン説を唱えたいと思います。

 

来年は3月に『アイアンフィスト』の配信が予定されており、その後にはいよいよ『ディフェンダーズ』が待っています。まだまだ目の離せないMCUドラマシリーズ!今後も楽しみです!

Writer

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トガワ イッペー

和洋様々なジャンルの映画を鑑賞しています。とくにMCUやDCEUなどアメコミ映画が大好き。ライター名は「ウルトラQ」のキャラクターからとりました。「ウルトラQ」は万城目君だけじゃないんです。

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