『LOGAN/ローガン』監督、スコセッシは「マーベル映画を観ていない」 ─ ただし「主張はすべて正しい」

巨匠マーティン・スコセッシ監督が、マーベル映画を指して「あれは映画(cinema)じゃない」「最も近いのはテーマパーク」と述べたことについて、映画関係者の反応が続いている。このたび発言したのは、マーベル・シネマティック・ユニバース作品ではないものの、ヒュー・ジャックマン演じるウルヴァリンの最終作『LOGAN/ローガン』(2017)を手がけたジェームズ・マンゴールド監督だ。
米UPROXXのインタビューにて、マンゴールド監督は「彼は明らかに(マーベル映画を)ほぼ観ていないし、それが唯一残念なところ」とコメント。スコセッシの、マーベル映画が「リスクを負っていない」とする見解については、自身の考えをこのように述べている。
「彼(スコセッシ)の言っている現実の問題は、すべて正しいでしょう。ただし、ある決まった種類の映画だけがそうなのだと言う必要はありません。あらゆる映画にまたがっていることだからです。型にはまった、つまらないコメディや恋愛映画、冒険映画はいくつもあります。そういう作品も、チェックを受けて、撮り直しをされて、別のエンディングが足されたり、余計なコーティングやオマケが付けられたりしているんです。コミック映画だけの話じゃない。大企業の映画製作はすべてそうなんです。だから彼のような人たちは――僕もある程度はそうですが――どういうジャンルであれ、戦わなければいけないんですよ。」
改めてスコセッシの持論を振り返っておきたい。「映画じゃない」発言が物議を醸したのち、スコセッシが米The New York Timesに発表した文章には、「特定の需要を満たすべく、限られたテーマのバリエーションで作られている」との言葉とともに、このような内容が綴られていたのだ。
「言葉上は“続編”と言っているけれども、その精神はリメイクだ。作品のすべてはあらかじめ認められたものであり、それ以外の形はありえないからだ。それが現代の映画シリーズの本質なのである。市場をリサーチし、観客のテストを受け、(作品を)審査し、修正し、また審査し、そしてまた修正する。消費される用意が整うまでそれが続く。」
マンゴールド監督が指摘しているように、そしてスコセッシ自身でさえ「現代の映画シリーズ」と対象を広げているように、これはマーベル映画やコミック映画に限った話ではない。しかしスコセッシは、観客に“消費”されることを前提とした映画を「映画(cinema)」とは認められないのだろう。一方でスコセッシは、ポール・トーマス・アンダーソンやクレール・ドゥニ、スパイク・リー、アリ・アスター、キャスリン・ビグロー、ウェス・アンダーソンの名前を挙げて、「彼らの映画はそうではない」と評価しているのである。
一方で、マンゴールド監督は「問題は原作がコミックかどうかではなく、むしろ、どのようなクリエイティブの範疇であっても、フィルムメーカーに自由があるかどうか」だと述べた。「僕は『LOGAN/ローガン』を100%自由に作ることができましたから。まさしく自分たちが作りたい映画になったと思います」。
なお、スコセッシが直接的に名指した「マーベル映画」の筆頭者であるマーベル・スタジオのケヴィン・ファイギ社長は、スコセッシのコメントに「人それぞれに映画(cinema)の定義は違います。アートの定義も違いますし、リスクの定義も違う」「次にどんなことが起こるのかを楽しみにしていますよ。だけどその間にも、僕たちは映画(movies)を作り続けていきます」と応答している。
Sources: UPROXX, The New York Times