「もうマーベルの仕事は無理」VFX制作者ら悲鳴 ─ 過酷な労働環境への不満が噴出

夢のある物語を絶えず提供するマーベル・スタジオだが、その制作現場からは悲鳴が上がっている。
マーベル作品でVFXの仕事をしているという人物が米ネット掲示板に「マーベルのドラマで仕事するの、ぶっちゃけもう疲れた!」とのスレッドを立てると、同じ境遇のアーティストからの書き込みが多数集まった。これが米メディアにまとめられ、話題となっている。
元のスレッドで“スレ主”は、マーベル・スタジオについて「制作やVFXのマネジメントが、たぶん世界最悪」と不満をぶちまけた。「マーベルで働くアーティストたちは、労働量に見合う対価を得られていない」と書いている。
そこに、続々と同意見が集まる。「『ソー』で、小さなシークエンスの仕事を納期2〜3週間で頼まれたことがある」「自分は、もうマーベルの映画とドラマは断るようにしている。残念ながら彼らはうちのクライアントの中でも最大手だけど、3回も4回も平気で仕様変更してくるし」と、大手クライアントからの無理難題に悩まされる声が次々と寄せられた。
中でも苦々しいのが、「自分は今マーベル作品を3作連続でやってるけど、マジで土曜も朝5時半起き。“もうやりたくない”ってストレス抱えてる」という証言。「今、朝の6時だけど、もう限界だから、マーベル以外の仕事があるところに応募しようと思って、リール作ってる」。
一連の書き込みを米The Gamerが記事にまとめると、Twitterでも“現場の声”があがった。「僕はマーベルドラマの仕事で、VFX業界から離れた。ひどいクライアントだし、過労で倒れる同僚を何人も見てきた。それでも、マーベルは制作費を渋るんだけどさ」。
マーベル・スタジオでは、年に数本の長編映画に加え、現在ではDisney+配信のドラマシリーズもある。毎月・毎週といったペースで新作映画や新エピソードが供給されるラッシュ状態だ。
マーベルなどのハリウッド作品におけるVFX制作現場の労働問題は、以前より指摘されていたもの。2018年には、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』のVFXを手掛けた制作会社の1名が、安価のオファーを提示した者が仕事を引き受けられる“コンペ形式”の弊害を指摘。また、映画並のVFXを多用しながら多数のエピソード納品が求められるドラマ作品における「短納期ながら高品質」の過酷さも語られていた。
マーベルの仕事に疲弊してVFX業界を離れたと証言したドゥルーフ・ゴヴィル氏も、一連の問題は「MCUの初期からあったもので、最近始まったものじゃないし、(ディズニーCEOの)チャペックのせいでもない」と説明。「問題は、マーベルがデカすぎるから、何でもかんでも要求できてしまうところ。有害な関係になっている」。ゴヴィル氏のTwitterプロフィールには、「ソフトウェアエンジニア。元VFXレイアウト+パイプライン・スーパーバイザー。スパイダーマン、ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーなどで仕事をしました」とまとめられている。