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【解説】『マトリックス レザレクションズ』予告編を徹底考察 ─ 「復活」の意味、どう展開していく

マトリックス レザレクションズ
©2021 WARNER BROS. ALL RIGHTS RESERVED

2021年の師走は慌ただしい。スティーブン・スピルバーグ監督満を持しての『ウエスト・サイド・ストーリー』やマーベル・スタジオが手がける『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』、『キングスマン』シリーズの前日譚『キングスマン:ザ・ファースト・エージェント』など、大作映画が毎週のようにやってくるのだ。なかでも今、最も熱い視線が注がれている大作がある。約18年ぶりに蘇る『マトリックス レザレクションズ』だ。

2021年9月8日、12月に全世界公開となることが発表されるや、インターネット上は大盛りあがり。3部作で完結したと思われた人間とコンピュータの壮絶な戦いだったが、それはあくまでそう見えていただけ。我々の気づかぬところで、物語はまだ動き続けていたのだ。公開された予告映像には、人類を救い犠牲になったはずのネオ(キアヌ・リーブス)やトリニティ(キャリー=アン・モス)の姿が見られ、さらには若きモーフィアスも登場するなど、まさに謎が謎を呼ぶ物語の一端が垣間見られている。

予告編のネオはなぜジョン・ウィックなのか?と冗談はさておき、どのようにしてネオは復活したのか。コンピュータとの戦いに人類は勝利したのではないのか。そもそも、我々が見ていた世界は“現実”だったのか。既成概念を覆す『マトリックス』の新章に想像を膨らませられる一方である。本記事では、はてなマークでいっぱいの予告編を紐解き、『マトリックス レザレクションズ』で描かれる物語の可能性を模索してみたい。

3部作を重点振り返り

考察に入る前に3部作を重点的に振り返ってみたい。この壮大な物語は、大手ソフトウェアメーカーのプログラマーとして生計を立てる一方で天才ハッカー“ネオ”としての顔も持っていたトーマス・アンダーソン(キアヌ・リーブス)が、突如現れたトリニティとモーフィアスによって今生きている人生は偽物だと告げられるところからスタートした。トーマスが生きていた世界は、人類を絶滅寸前に追い込んだコンピュータによって作り出された仮想空間だったのだ。

本当の現実というのは、ネオが囚われていた仮想世界からおよそ200年後。年号にして2199年頃の終末世界だった。ザイオンという街に人類最後の25万人が生活しており、コンピュータとの最終決戦に備えていたのだ。戦いを勝利に導くのは、救世主と呼ばれる1人の人物。そう信じていたモーフィアスは、マトリックスと戦いながら救世主を探し続けていた。そして、その救世主としてネオが仮想世界から蘇ったのだ。

3部作を通してネオたちの道をふさいだのは、マトリックスの刺客として送られたエージェントたち。なかでも、本心ではマトリックスからの解放を望んでいたエージェント・スミスが大きく立ちはだかった。第1作『マトリックス』では一度はネオを殺すも、愛の力によって復活したネオに敗戦。第2作『マトリックス リローデッド』では、仮想空間の掟を破ってまでもネオに執着し、続く第3作『マトリックス レボリューションズ』では、全てを自分の姿に書き換えて支配したマトリックスでネオとの最終決戦に挑んだ。死闘の末にネオが勝利すると、ザイオンを襲撃した戦闘マシン“センチネル”も退散し、長き戦いは人間に軍配が上がったのだった……と思われた。

マトリックス レザレクションズ
©2021 WARNER BROS. ALL RIGHTS RESERVED

“復活”の意味するところ

それでは『レザレクションズ』に目を向けていこう。本作の鍵となる言葉はタイトル「レザレクションズ」の意味するところでもある“復活”だ。予告編では、3部作からは歳を重ねたネオの姿が見られるが、「夢と思えないような夢を見た」と話しているように彼にはなぜか3部作での記憶がない模様。第1作の冒頭と全く同じ状況だ。ここで公式から出されている情報を参照すると、『レザレクションズ』は「『マトリックス レボリューションズ』の続編ではなく、1作目の続編となる」という。つまり、『レザレクションズ』では多くの人が最初に考えるであろう、死んだはずのネオが“復活”したというのではなく、物語は『リローデッド』『レボリューションズ』前に遡ったものと考えられる。

ということは、考察する上でのヒントは、第1作にありそうだ。第1作でネオは、モーフィアスから真実を知るなら赤いカプセルを、そのまま仮想世界に残るなら青いカプセルを飲め、という究極の選択を迫られた。一方、『レザレクションズ』の予告映像でも、若い姿のモーフィアスから同じような選択を迫られる描写が登場する。したがって、歳を重ねたネオは仮想空間に囚われ続けたネオであり、マトリックスコードの中の虚像の世界にいることに気づいていないものと考えられる。

ここで、第1作でモーフィアスに究極の選択を迫られたネオが赤のカプセルを選ばなかったと仮定すると、『レザレクションズ』の世界を想像しやすい。ネオが真実を知ることを拒み、仮想空間に残ることを選んだ世界だ。その場合、ネオに赤いカプセルを飲んだ後の記憶がないのも説明がつくし、歳を取っているのも納得できる。第1作のネオがプログラマーとしての仮想生活を続けた結果の姿が『レザレクションズ』のネオだとは考えられないだろうか。

前2作は無かったことになるのか?

しかし、引っかかるのはトリニティも仮想世界での生活を送っていることだ。ネオとはまるで初対面かのような振る舞いをするトリニティ。第1作でのカプセル選択で物語が分岐した世界が『レザレクションズ』なのだとしても、現実世界からやってきたトリニティがネオの元に現れるはずだ。ところが映像のトリニティは3部作の様子とはどこか違うようだし、そもそもネオのことすら認識していない。

あろうことか、映像には第1作のトリニティを彷彿とさせる存在が登場している。ジェシカ・ヘンウィックが扮する短髪の女性だ。肩に白ウサギのタトゥーを入れており、その姿は第1作冒頭でネオの自宅に現れた(エイダ・ニコデモが演じた)女性と重なる。そして、華麗でしなやかなアクションを見る限り、ヘンウィックのキャラクターはネオを真実へと誘う白ウサギ兼、3部作のトリニティ並みの役割を担う重要な存在になるのではないだろうか。

ここで改めて浮上する疑問は、『レザレクションズ』は本当に第1作の単なる続編なのか、ということ。なかには『リローデッド』『レボリューションズ』の物語が無かったことになるのかと、懸念するファンもいるはずだ。これと似たような作品の例としては、実はある時点で世界線に分岐が生じていたとして、ストーリーを塗り直してきた『ターミネーター』シリーズが挙げられるだろう。

『ターミネーター』シリーズは、2003年の『ターミネーター3』から『ターミネーター:新起動/ジェニシス』(2015)まで、生みの親であるジェームズ・キャメロン不在で製作され、製作陣も都度一新されてきた。一方、3部作を手掛けたラナ・ウォシャウスキーが監督復帰する『レザレクションズ』で自ら築き上げたレガシーをわざわざ無かったことにするだろうか。『リローデッド』『レボリューションズ』にも『レザレクションズ』を解き明かすようなヒントは散りばめられていないだろうか?

Writer

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SawadyYOSHINORI SAWADA

THE RIVER編集部。宇宙、アウトドア、ダンスと多趣味ですが、一番はやはり映画。 "Old is New"という言葉の表すような新鮮且つ謙虚な姿勢を心構えに物書きをしています。 宜しくお願い致します。ご連絡はsawada@riverch.jpまで。

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