『マトリックス』復活の理由は両親の死、「ネオとトリニティがまた生きてくれる」

2021年12月に世界一斉公開となるSF大作『マトリックス レザレクションズ』では、シリーズのアイコニックなキャラクターである主人公ネオとトリニティが蘇る。死んだと思われていた2人が復活することになったのには、ラナ・ウォシャウスキー監督を立て続けに襲った悲しい出来事が関係していたようだ。
このたび、ドイツで開催されたベルリン国際文化祭のトークセッションに登壇したウォシャウスキー監督は、約18年ぶりに『マトリックス』の世界に帰ってきた理由を明かしている。監督によれば、『マトリックス』完結後も米ワーナー・ブラザースから続編製作を毎年のように求められてきたというが、そのたびに首を横に振っていたという。「私たちは続けるというアイデアが好きになれなかったので、ノーと言い続けてきたんです」。
しかし、ウォシャウスキー監督にとって転機が訪れる。両親と親しい友人の死だ。「父が死んで、友人が死んで、そして母が死にました。そういう経験は無かったので、悲しみをどう対処していけばよいかわかりませんでした」と当時の心境を振り返るウォシャウスキー監督。そんな彼女の救世主となった存在こそが、ネオとトリニティだったという。
「両親の命が終わろうとしているんだと思うとすごく辛かったです。ある夜、私は泣いていて眠れませんでした。そしたら頭が(『レザレクションズ』の)ストーリーでいっぱいになったんです。もう私には母も父もいない。でも突然、ネオとトリニティが現れたんです。間違いなく私の人生で最も大切な2人のキャラクターです。このキャラクターが再び生きてくれるんだということは、すぐに私の慰めになりました。
それはすっごくシンプルなことでもあって。ただ“この2人(ネオとトリニティ)は死んだけど問題ない。また復活させれば良いんだから”と言えばよいだけのことだった。それだと気を悪くしなかったのか?と言われれば、気分は良かったですよ。簡単なことですし、それこそが芸術やストーリーの役目です。慰めになってくれるということが。」
『マトリックス』シリーズは、ラナとリリーのウォシャウスキー姉妹2人で築き上げてきたもの。しかし、『マトリックス』に戻ってきたのは姉のラナ・ウォシャウスキーのみだ。『レザレクションズ』を始動するにあたり、監督はリリーにも声をかけたそうだが、リリーは「悲しみを別の方法で乗り越えたかった」という。以前、リリー本人も「両親の死といった人生の激動を乗り越えた後に、また昔に戻って前の道を歩み直すというのは感情的に満たされないことだった」と語っていた。
その後、『マトリックス』再始動を友人や家族に相談したというウォシャウスキー監督。周りからの後押しを受けて、『レザレクションズ』の製作を決意したのだと語った。『レザレクションズ』でのネオとトリニティの復活には理論上疑問が残るものの、単純に言葉で説明しきれない理由もある。それが自分にとって最愛の人の死を乗り越えるためだったのであれば、これ以上の理由は必要だろうか。
映画『マトリックス レザレクションズ』は2021年12月公開予定。
Source: Internationales Literaturfestival Berlin