MCUは「本数を減らして良い作品づくりに集中する方針に戻ってほしい」と『キングスマン』マシュー・ヴォーン監督

ドラマシリーズも合流したことで作品数が急増したマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)では、かつての圧倒的なブランド力に陰りが出たと指摘される場面が増している。新フェーズのキックオフ作品だった『アントマン&ワスプ:クアントマニア』は評価や興収面で苦戦を強いられ、スタジオ内部には動揺が広がったと伝えられる。また、ドラマ「シークレット・インベージョン」では舞台裏トラブルもあり品質の追求が疎かになったせいか、米Rotten Tomatoesではマーベル・スタジオ製作のテレビシリーズとして最も低い評価となった。
『キック・アス』『キングスマン』シリーズのマシュー・ヴォーン監督は、“スーパーヒーロー映画疲れ”とも言い表されるこのジャンルの異変を認める一人だ。「思うに、スーパーヒーローがただのスーパーヒーローになってしまっていて、映画のその部分の重要性がなくなってしまったんでしょう」とニューヨーク・コミコンで語っていたヴォーンは、さらにこのようにも続けていた。「スーパーヒーロー映画を作る時というのは、観客に信じてもらわなくてはいけないので、ある意味、もっと頑張らないといけません」。
ヴォーンはマーベル映画『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』(2011)を監督したが、ここでは地に足着いた作品になるよう心がけた。キューバ危機を題材に、「CGに頼ることなく」「共感できる人間の問題を扱った」と振り返っている。CGの多様には懐疑的だ。「全てを台無しにしてしまう。まるでビデオゲームを観ているようになってしまうから」。
CGキャラクターを主体する作品であっても、ジェームズ・ガン監督のマーベル映画『ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシー』は別だとも話す。「グルートと(ロケット・)ラクーンはマジで天才的だと今でも思う。だから興味をそそられるんです」。
マーベル・スタジオのケヴィン・ファイギと直接的に作品を共にしたことはないが、いち観客としてMCUのことは心配に思っているようだ。DC映画はガンとピーター・サフランが率いることで「これから伸びてくれるかも」と期待する一方、MCUについては、「ファイギが作品本数を減らして、良い作品づくりに集中する方針に戻ってくれることを願っています」と私見を述べている。
MCU作品は2021年に開始された「マルチバース・サーガ」フェーズ4以降、ディズニープラスのドラマ作品も製作するようになったことで作品数が急増。2021年、2022年ともに、1年の間に合計9本がリリースされた。
親会社ディズニーのボブ・アイガーCEOは、作品増によって「スタッフには時間と集中力という点でこれまで以上の負担をかけてしまった」と反省の弁を述べており、『スター・ウォーズ』とあわせて今後は数を減らす意向を明らかにしている。
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Source:ScreenRant