構想40年、巨匠フランシス・フォード・コッポラ監督の最新作が撮影終了 ─ アダム・ドライバー主演、撮影トラブルの噂も乗り越えて

『ゴッドファーザー』3部作や『地獄の黙示録』(1979)などで知られる、巨匠フランシス・フォード・コッポラ監督が40年にわたり温めてきた悲願の一作『Megalopolis(原題)』の撮影が終了したことがわかった。開設されたばかりの米公式Instagramにて報告されている。
本作は大災害に見舞われたニューヨークを舞台に、ユートピアとして街を再建しようとする建築家を主人公とする物語。コッポラによると、社会に対して昔ながらの考え方を持つ父親と、逆に先進的な発想を持つ恋人との間で引き裂かれる女性を描いた“ラブストーリー”だという。
米Deadlineに対し、コッポラは「最初はラブストーリーを作るつもりでしたが、これは愛と不誠実、人間のあらゆる側面を描く映画なのだとわかった」とも述べている。「人間にはありとあらゆる側面があります。たとえ地球が危機に瀕していたとしても、人間には目の前にあるすべての問題を癒す力がある。究極的には、そういう非常に前向きな信念を持つ映画なのです」。
出演者は『スター・ウォーズ』シリーズや『アネット』(2021)のアダム・ドライバー、『ワイルド・スピード』シリーズや「ゲーム・オブ・スローンズ」(2011-2019)のナタリー・エマニュエル、『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(2016)のフォレスト・ウィテカー、『マトリックス』『ジョン・ウィック』シリーズのローレンス・フィッシュバーン。そのほか、名優ダスティン・ホフマンやジョン・ヴォイト、オーブリー・プラザ、ジェイソン・シュワルツマン、シャイア・ラブーフ、ジャンカルロ・エスポジート、タイカ・シャイアら豪華キャストが顔を揃えた。
長年実現に向けて動いてきた本作のため、コッポラは自身のワイナリーを一部売却し、製作費の1億2000万ドルを自ら捻出。2022年11月から撮影に入っていた。
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もっとも、過去にも数々の逸話や製作トラブルで知られてきたコッポラのこと、本作の撮影にも紆余曲折があった。ちょうどスケジュールの折り返しを迎えた2023年1月9日、製作費が膨れ上がり撮影継続が困難な可能性がある、美術監督を含むVFXチームが解雇された、現場は『地獄の黙示録』を思わせる混沌状態だと報じられたのだ。
ただし翌10日、この報道はコッポラ自身によって否定されている。美術部とVFXチームが製作を離れたことは認められたものの、これはあくまでもコスト管理のためであり、スケジュールや予算は事前の予定通りで、『地獄の黙示録』当時の状況には程遠いと強調されたのだ。予算のためにバーチャル・プロダクション技術(巨大LEDスクリーンと思われる)の導入を断念し、視覚効果のほとんどを後から合成する方法に変更したためにVFXチームは解雇され、美術部は創造性の相違のため離脱したのだと説明されている。
なお、当初は美術監督を『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』(2023)のベス・ミックルが担当する予定だったが、1月の離脱を受けて、コッポラは「マンダロリアン」「ウエストワールド」などのブラッドリー・ルービンを新たに迎えた。
コッポラと主演のアダム・ドライバーは、この時に報道の内容が事実ではないことを明言し、製作が順調に進んでいること、撮影されている映像の出来栄えにも大いに満足していることを明かしていた。アダムは「もっと混沌とした現場を知っている。今回はそのようなものではない」「これまで経験した中でも最高の撮影現場です」とのコメントを発表。2023年3月上旬、アダムは自らの撮影を終えた後にも「人生最高の撮影だった」と述べ、コッポラの創造性とスキルを絶賛。「参加できて本当にうれしい」と興奮を語った。
一連の報道の真偽は、コッポラが「2023年の春に撮影を終えます。完全に予定通りです」との声明を発表し、実際に撮影が3月末に終了したことからも明らかだろう。
本作の公開日は現時点で未定だが、コッポラはあくまでも劇場公開にこだわる姿勢。「映画史上はじめて、全世界すべての場所で同日にこの映画を公開できるかもしれません。それが私の目標なのです」とも語られている。
Sources: The Hollywood Reporter, Deadline, Collider